おとな女子登山部 登山レポート 富士山

富士山

登ったところはこんな山

富士山

富士山頂上の火口。ここを一周するお鉢巡りは1時間30分ほどもかかります

いつも登山者でにぎわっている吉田口頂上。おみやげを売る山小屋が建ち並んでいます

 言わずと知れた日本最高峰。さすがにこの山のことを知らない日本人はいないのではないでしょうか。世界文化遺産でもあり、日本という国の象徴的存在にもなっています。近年は外国人登山者も急増中で、登山口となる五合目などは、日によっては外国人のほうが多いこともあるほど。
 
 標高は3776m。標高2位の北岳が3193mなので、国内では圧倒的に高い山といえます。しかし標高のわりに登山の難易度は高くなく、同じ3000m峰の北アルプスや南アルプスと比べると、はるかに簡単に登ることができます。そのため、7、8月の登山シーズン中は、頂上からのご来光を求めて多くの登山者が訪れ、天気のよい休日は登山道も山小屋も大混雑します。
 
 登山ルートは大きく分けて4箇所あります。いちばん人気が高い山梨県側の吉田ルート。次に人気の静岡県側の富士宮ルート。そして、富士山東面にあたる須走ルートと御殿場ルートです。富士山には年間30万人近い人が登りますが、その3分の2近くが吉田ルート経由となっています。
 
 

コースマップ

富士山コースマップ

参考コースタイム


【1日目 歩行計/3時間25分】富士宮口五合目(25分)富士宮口六合目(2時間)御殿場ルート六合目(1時間)砂走館[泊]
【2日目 歩行計/7時間40分】砂走館(2時間40分)御殿場口頂上(20分)剣ヶ峰(1時間10分)御殿場口頂上(1時間30分)砂走館(2時間)御殿場口新五合目

山行アドバイス

 登山の技術的にはそれほど難しくない富士山ですが、注意点がふたつあります。ひとつは高度障害(高山病)。もうひとつが天候が悪化したときです。
 高度障害は、標高が高くなると空気が薄くなること(=酸素が少ない)が理由で起こります。3000mを超すと、たいていの人に影響が出始め、ふだんよりもぐっと疲れやすくなります。これが理由で登頂を断念する人も珍しくありません。高度障害を防ぐ方法としては、①意図的にゆっくり歩く、②水をこまめに飲む、③腹式で深く大きく呼吸をすることを心がける、などがあります。なかでも、ゆっくり登ることがもっとも効果が大きく、重要です。
 次に天候について。「登山は難しくない」とはいえ、それは天気がよい場合の話。天気が悪くなれば、その過酷さは平地の比ではありません。3000m超の場所では、雨に濡れて強風に叩かれれば、真夏でも凍死の危険があります。とくに富士山は風が強いことが特徴。天気が悪いときは無理に登らないことをすすめます。
 富士山では、頂上で日の出を見る「ご来光登山」が人気ですが、そのためには真夜中に歩き出す必要があります。通常の登山ではあり得ない行程です。ただでさえ体に負担の大きい3000m超の場所での夜中の行動は、体力的にはかなり無理のあるプランということも覚えておきましょう。

アクセス

今回のコースは、起点が富士宮口五合目、下山は御殿場口新五合目。入山口と下山口が異なるので、マイカー利用の際は注意が必要。
【公共交通機関】
東海道新幹線新富士駅から富士宮口五合目まで富士急行バス約2時間30分。帰りは、御殿場口新五合目からJR御殿場駅まで富士急行バスで約40分。
【マイカー】
水ヶ塚公園駐車場に停めて、バスで富士宮口五合目に向かう(約40分)。帰りは、御殿場口新五合目から水ヶ塚公園駐車場までバス約15分で戻ることができる。
詳しくは富士急行バス

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富士山登山レポート

DAY1

広大な宝永第一火口。登山道はこの中をまっすぐ登っていきます

宝永第一火口を登るなっちゃん。余裕の表情ですが、このあと苦戦することに

馬ノ背に着いたら、急に風が強くなってきた! 強風に耐えながらゆっくりと

 今回の山行のコンセプトは、「マイペースで静かな富士山を楽しむ」こと。8月の富士山は、登山者で大混雑。山小屋ではひとつのふとんで2人が寝なくてはならなかったり、頂上のご来光では足の踏み場もないほどに混雑したり、ということが普通にあります。それをいかに避けて、ゆったりした登山を楽しむことができるか。
 
 その解決法のひとつが今回のルート「プリンスルート」。標高の高い富士宮口から登りだして、途中から、いちばん空いている御殿場ルートに移るというこのルート。以前、皇太子さまが登山に利用したことからこう呼ばれるようになったというものです。途中、宝永第一火口の絶景を眺めながら登れるなど、変化に富んだ地形も魅力のひとつ。近年人気上昇中ですが、まだまだ知られておらず、比較的空いていることが、このルートを選んだ理由です。
 
 もうひとつは、頂上でのご来光をあきらめたこと。真夜中に登り出すのは体力的にもきついし、大混雑のなか寒さに震えながら日の出を待つのもつらい。多くの人が目指す頂上ご来光をあきらめれば、”時差登山”が可能になり、空いている登山道をゆっくり登れるのではという目論見です。そのかわり、ご来光は山小屋で見ることにしました。山小屋のある御殿場ルートは東に向いているので、そこからでもご来光は十分拝むことができるというわけです。
 
 メンバーは、おなじみのなっちゃんと、新潟亀田店から来たるんちゃん、そして白馬店の田中ガイド。みんな体力的・経験的に富士山は楽勝。しかし今回は、イギリスから来た知人もいっしょです。彼にできるだけ富士山を楽しんでもらいたいと考え出した今回のプラン。そのエスコートも大きな目的になっていました。
 
 標高2350mの富士宮口五合目から登りだしてすぐに六合目に着きました。ここから富士宮ルートを離れて宝永山のほうにトラバースしていきます。登り一辺倒の富士山のルートのなかでは珍しく、平坦な道が続きます。山腹を回り込むと、目の前に巨大な宝永第一火口が見えてきました。
 
 
「うわあー」
 
「Oh!!!」
 
 
 まるで宇宙空間。自然が作り出した巨大コロシアムというべき造形美に、思わず声が出ました。
 
 登山道はその真ん中を登っていきます。遠目にはわくわくするような登山道だったのですが、いざ登ってみるとつらい! 砂や小石が積もったような場所で、一歩登って半歩ずり下がるような繰り返し。
 
 思いのほか疲れて、ようやく宝永第一火口の上縁、「馬ノ背」と呼ばれるところにたどり着きました。しかし今度は風が強い! 休憩しているとどんどん体が冷やされていきます。ウインドシェルを着込んで、再び登っていきました。
 
 本日の宿は砂走館。どちらかというと、もうひとつ上にある赤岩八号館のほうが人気なのだけど、砂走館のほうが小屋の前が広いことと、数年前に建て替えをしたので比較的新しいこと、そしておそらくこちらのほうが空いているだろう……という読みでこちらに泊まることに。
 
 これが大当たり! 宿泊者は20人ほどで、ふとん1枚に2人どころか、3枚に1人くらいで悠々と眠れる。そしてスタッフの方がとても明るくてフレンドリー! おかわり自由のカレーも手製でおいしい。ハイシーズンの富士山であることがウソのように、ゆったりとした夜を過ごすことができました。
 

砂走館からは眼下に駿河湾の街の夜景が見えました

DAY2

頂上に向かって一歩一歩。なかなか頂上が近づかず、ここがつらいところ

富士宮口頂上にある浅間神社で安全登山を祈願

ここが富士山最高点。3776mの剣ヶ峰。日本最高点でもあります

 翌朝は、雲が多くて残念ながらご来光は拝めませんでした。しかし、登りだして歩いているうちに太陽が出てきて、背後には富士山の広大な裾野が広がるのが見えました。
 
 ここからの登りは一歩一歩。標高3000mを超えて息が切れてくるところです。15分くらいで着くように思えた頂上がなかなか近くなりません。あせらずゆっくりと歩を進めていくと、ようやく御殿場口頂上に着きました。
 
 ここからは、頂上火口をぐるっと一周する「お鉢巡り」。まずは、最高点の剣ヶ峰をめざします。さすがに登山者の数は多くなり、剣ヶ峰山頂には行列ができていました。山頂標識といっしょに記念写真を撮る人の列です。わたしたちはそれをパスして、その奥にあるいちばん高い場所で記念写真を撮りました。
 
 さらに、火口縁を時計まわりに歩いていきます。迫力ある火口壁の周囲につけられた登山道。ここもどこか宇宙空間のような不思議な風景です。幸い天気はよく、頂上トレッキングは平和そのもの。40分ほどで吉田ルート頂上となる久須志神社に着きました。
 
 さすがにメイン登山道となる吉田ルート頂上だけに、急に人の数が増えました。土産物店が立ち並び、自動販売機まであります。「まるでShopping Streetだね」とイギリスの知人もびっくり。そのうちのひとつ扇屋でお茶を飲んで休憩後、御殿場ルートから下山にかかりました。
 
 登りにかかった時間の半分くらいで砂走館に到着。ここからは最後のお楽しみ「大砂走り」です。広大な砂の斜面に登山道がつけられているので、駆け下ることができるのです。
 
 最初は控えめなスピードで下っていたみんなですが、慣れてくるとだんだんスピードが上がり、しまいには前転しそうなほどのスピードに!
 
 
「わあーーー」
 
「ひゃっほーー!!」
 
「○*▼×*□○※△○!!!」
 
 
 写真を撮ることも忘れて猛スピードで下っていきます。眼下遠くに見えた御殿場口新五合目がすごいスピードで近づいてきます。こんなに速く下りられる登山道はほかにない。これはおもしろい!
 
 砂走館から標高差約1500mをわずか2時間ほどで下ってしまいました。新五合目に着いてお互いの姿を見ると、全身砂ほこりまみれ。顔もうっすら黒くなっていました。
 
「楽しかったね!」
 
 泥遊びをした子どものようになってしまいましたが、充実感満点。イギリスの知人も先頭をきって泥遊びを楽しんでくれて、なっちゃんもるんちゃんもひと安心。少し趣向の変わった富士登山、大成功でありました。
 

帰りは大砂走りを爆走! 砂ほこり防止にマスクは必携です!

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今回のメンバー

  • なっちゃん
    すでにおなじみ、おとな女子登山部のエースとして活躍中。すらっとした体格ながら体力は抜群。

  • るんちゃん
    独特のふわっとした間が持ち味のるんちゃん。小柄な体に似合わず大食いという一面も!?

  • 田中ガイド
    お猿さんと呼んでからかってもギャグで返してくれる人柄のよさはみんなの人気者。