おとな女子登山部レポート美渓と焚き火と旨い飯~釜ノ沢東俣

このエントリーをはてなブックマークに追加
投稿者
るんちゃん(おとな女子登山部)
日程
2022年07月26日 (火)~2022年07月27日 (水)
メンバー
山仲間1名
天候
1日目/晴→曇  2日目/小雨
コースタイム
【1日目】西沢渓谷駐車場(50分)入渓点(50分)ホラ貝のゴルジュ(90分)東のナメ沢(100分)魚止ノ滝(80分)両門ノ滝(50分)幕営地

【2日目】幕営地(100分)階段状ナメ滝(90分)木賊沢分岐(50分)甲武信小屋(15分)甲武信ヶ岳(10分)甲武信小屋(100分)徳ちゃん新道分岐(120分)駐車場
コース状況
・ナメ床や苔が多いのでフェルトソールがおすすめ。
・序盤のホラ貝のゴルジュまではほぼ高巻きです。
・魚止ノ滝は左壁のスラブを登ります。僅かなスタンスやフレークを掴んでの登攀となりますが、私は届かなかったのでロープ出してもらいました。
・テン場は両門ノ滝の先、焚き火跡がたくさんあります。始めの方は燃料となる木がほぼ取り尽くされていたので奥の方まで進みました。
・木賊沢分岐はやや傾斜強いナメで落ちると厄介。左岸端から慎重に取付き、途中の草付をたどって右岸へ移動しました。
・甲武信小屋は営業中。トイレ100円で利用しました。
難易度
Google Map

感想コメント

 ほぼ初めての泊まり沢は、美しいナメが魅力の名渓・釜ノ沢東俣へ。翌日は百名山の甲武信ヶ岳を詰めて徳ちゃん新道で下山する充実プランに。泊まりの醍醐味は何と言っても焚き火。普段の登山では味わえない野趣溢れる山を楽しんできました。

 入渓は鶏冠山の渡渉と同じポイント。あれだけ嫌だった渡渉も沢装備ならなんのその。夏の日差しを浴びながら冷たい流れに足を踏み入れました。
 鶏冠山に続く尾根を右手にやり過ごしたら、沢から上がってしばらく高巻きます。チェーンスパイクを装着したくなるような急登を、登っては下りをしばらく繰り返すと、やがてエメラルドグリーンの美しい入江・ホラ貝のゴルジュが出現。上級者はゴルジュ内を楽々突破するらしいですが、そんな芸当は到底ムリ。引き続き高巻きしながらゴーロ帯に突入しました。
 この先は見所がたくさん。地球の鼓動を感じる荒々しい岩壁や、長大な東、西のナメ沢を物見遊山気分で歩きます。こんなスラブ誰が登るんだか。他人事だと思って進んでいると、足元がいつの間にか斜めに。左手には深い沢、濡れたくないし運が悪けりゃ流されそう。次第にへっぴり腰になる下半身を奮い立たせ、シューズを信じて慎重に、時に思い切り良く突破しました。

 沢はやがて二俣に別れ、右手に進むと魚止ノ滝にぶつかります。ここもナメですが、傾斜がきつめなので左の灌木に向かって登りました。スラブの得意な相方くんは兎のように一飛び。負けじと取り付くも、あと数センチフレークに届かず。何度かトライするも失敗して大根おろしになるのが怖くて離陸できずにいると、上から蜘蛛の糸のようにロープがぶらーん。悔し泣きしそうでしたが、天候も怪しかったのでやむを得ずお世話になりました。
 落ち込んでる私を癒してくれたのは釜ノ沢名物、千畳のナメ。50mも続くなだらかなナメ滝で、ナメ恐怖症の私でも安心して歩けます。深呼吸しながら緑の回廊を進んでいると次第に落ち着きを取り戻し、いつの間にか楽しんでいる自分がいました。
 その後小滝やへつりを乗り越えてゆくと、立ちはだかるは巨大な両門ノ滝。ここで東俣と西俣に別れるので、私たちは易しい東俣へ進みました。沢を左下に見ながら尾根を巻きますが、ピンクテープに惑わされ高巻きしすぎてシャクナゲ地獄に。下りるには少し危険な匂いがしたので、カウンターで確保しながらラペリング。登り過ぎた時に便利な技術です。やれやれと再び歩き始めると、やがて台地状になり今夜の泊まり場に到着しました。

 目的地に着いても安堵している暇はありません。雨が降り出す前に、まずはタープやハンモックを張り、寝床とダイニングを設営。次に薪を拾い集め火起こしの準備。飲み物の浄水をしつつ、私は火を絶やさないよう見張りながら食担の相方くんを見守ります。タイ料理が食べたいというわがままを受けて立ち、カオマンガイにトムヤムクン、生ハムユッケなどおしゃれな料理を次々に手際良くご馳走してくれました。デザートはキャンプの定番・焼きマシュマロ。火加減次第で味に差が出るのはかなりの驚き、焼きマシュマロの概念が変わるほどでした。
 
 翌朝は小雨のスタート。霧雨程度で野営道具もそれほど濡れずに済みました。昨日ほどの見所はなく、日の当たらない階段状の滝を延々と登ります。滝幅は上に行くほど狭まり、詰めが確実に近づいているのはわかりましたが一向に終わりが見えません。沢は再びナメを形成し、やがて二俣となるとようやくゴール一歩手前。木賊山に至る難しい沢を見送り左に抜けていきます。水が途切れたガレ沢を詰めてゆくと、前方の小高い場所にポンプ小屋を発見。出発してから約4時間、ようやく詰め上がりました。
 雨の甲武信小屋はとても静か。単独の登山者が2名ほどいただけでした。装備を解除し空身で山頂へ。数年前に訪ねた時と同様、残念ながらガスで何も見えませんでした。

 濡れた装備を全て背負って下山の時間。疲れのせいか、出発前よりもザックが重く感じてスピードが上がりません。木賊山の短い登りは非常に応えました。段差の多い戸渡尾根にひいこら、それに続く徳ちゃん新道の優しさに助けられましたが距離が長くげっそり。駐車場に戻ってザックを放り出すと、重さから解放された肩や腰には跡がくっきりと付いていました。 
 非常に濃かった今回の沢旅、歩ききった喜びがじわじわとこみ上げてくるのを感じました。アルプス縦走のような華やかさはありませんが、とてもやりがいのある山行でした。泊まり沢、どっぷりはまりそうな気がします。

フォトギャラリー

釜ノ沢といえばこのナメ!

あちらは23kg。重さで吊り橋がたわむ。

エメラルドグリーンの淵。ホラ貝のゴルジュ。

大きな岩をよじ登ります。まだへっぴり腰じゃない。

見応えのある壁。鮮やかな苔がペンキのよう。

東のナメ滝。とても広大。

フリクションを信じて一歩ずつ慎重に。

へつるの怖かった~。そろそろへっぴり腰に。

色が三段になってる岩肌。キレイ。

魚止ノ滝。左壁を登ります。

千畳のナメは束の間の安堵の風景。

両門ノ滝。名前の通り右と左からそれぞれ流れ落ちています。

幕営地の近くに現れた鹿。

ツエルトをタープ代わりに。

沢の醍醐味・焚き火を楽しみます。中身はトムヤムクン。

前菜はミョウガのサラダ。

メインディッシュのカオマンガイ。

翌日は小雨の中滝登りました。

木賊沢の出合。真ん中が弱点。

ゴールのポンプ小屋。長かった!

この記事を見た人は次の記事も見ています

おすすめアイテム