おとな女子登山部 登山レポート 八ヶ岳

八ヶ岳

登ったところはこんな山

八ヶ岳

 八ヶ岳という名前の山はありません。本州の中央、長野県と山梨県にまたがるところに位置し、南北約30km、東西約5kmにおよぶ連峰を総称して八ヶ岳と呼んでいます。八ヶ岳は、夏沢峠を境に北側を「北八ヶ岳」、南側を「南八ヶ岳」といって、それぞれに異なった表情を見せています。北は標高2,500m近くでも樹林が茂り、どことなくゆったりとした瑞々しい雰囲気。一方、南はというと最高峰の赤岳(2,899m)を中心に猛々しい岩肌が天を突きます。ひとつに連なる山々でありながら、日本の山をこぢんまりと凝縮したようなじつに多様性に満ちた山域なのです。特長は山容だけにとどまらず、多彩な動植物の宝庫でもあります。そして、列島中央に位置する独立連峰であることからも、北西方向には北アルプス、南方に南アルプス、富士山や上州方面、つまり日本の屋根のほとんどを見わたすことができる絶景がいちばんの魅力といえます。四季を通して人々を魅了する人気の山岳エリア。通年営業の小屋も多く、冬山の入門としても最適です。
 さて、今回は真冬の八ヶ岳。天狗岳~根石岳~硫黄岳、八ヶ岳の北と南のちょうど境目を縦走しました。これまでのおとな女子登山部とは、ひと味……いや、ふた味くらいはちがった山行になったようです。

コースマップ

八ヶ岳コースマップ

参考コースタイム


【1日目/歩行時間:約2時間30分】渋ノ湯(2時間30分)黒百合ヒュッテ
【2日目/歩行時間:約3時間50分】黒百合ヒュッテ(5分)中山峠(1時間10分)東天狗(1時間45分)夏沢峠(50分)本沢温泉
【3日目/歩行時間:約3時間50分】本沢温泉(2時間30分)硫黄岳(20分)赤岩ノ頭(1時間)赤岳鉱泉
【4日目/歩行時間:約2時間30分】赤岳鉱泉(2時間30分)美濃戸口

山行アドバイス

八ヶ岳は、雪山登山の足がかりにはほどよい条件を備えている山域です。通年営業の小屋も多く、小屋と小屋のあいだの距離も比較的近いです。今回の行程で訪れた小屋はとりつきからのアクセスもよく、足まわりはスノーシューなどでも到着できる位置にあります。しかし中山峠を越え、夏沢峠を経た赤岩ノ頭までの稜線一帯はアイゼン(爪10本以上)、ピッケルなどが必須。このコースは完全な雪山装備でのぞまなければなりません。冬に限ったことではありませんが、天候の悪化も視野にいれた余裕のある行程を組みましょう。

アクセス

【公共交通機関】
入山(渋ノ湯):最寄りは、JR茅野駅。茅野駅からは奥蓼科渋ノ湯線バス(アルピコ交通)で約60分、終点「渋の湯」下車。バス停から渋ノ湯の登山口はすぐ。バスは、1日2~3本運行で運賃1,150円。人数によってはタクシー利用も便利です。
下山(美濃戸口):最寄りも同じく茅野駅。美濃戸口線バスで「茅野駅」へ。運行は1日6本、最終便は美濃戸口16時30発。いずれにしても本数は少なく運行日も限られているので、必ず事前に確認しましょう。
【マイカー】
最寄りのインターチェンジは、中央道諏訪ICあるいは諏訪南IC。縦走のため、あらかじめ車両を下山口に回送しておくのが便利です。入山口の渋ノ湯と下山口の美濃戸口は、車で約1時間30分。両登山口とも駐車スペースがあります。車両はスタッドレス装着のうえ、四駆を推奨します。諏訪南ICから美濃戸口:県道425号線、484号線(八ヶ岳鉢巻道路)を経て所要時間約1時間10分。美濃戸口から渋ノ湯:八ヶ岳エコーライン、県道191号を経る。

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八ヶ岳の縦走レポート

DAY1

 八ヶ岳縦走には、なっちゃんとるんちゃん、そして特別なゲストが登場しました。好日山荘登山学校校長の加藤智二ガイドです。今回は3人で真冬の八ヶ岳に挑戦します。まずは渋ノ湯に集合。空は真っ青で、気温もまずまず、幸先のいいスタートです。渋の湯御殿を後に、数十メートル川沿いを進むと、登山口があらわれました。橋をわたると、さっそくつづらの登りが始まります。踏み固められた雪の道を一歩一歩進んでいきます。
 登りはじめから急登がしばらく続きましたが、風もなくシンと澄んだ空気のなかを心地よく進んでいきました。
 なっちゃんとるんちゃんにしてみれば、加藤ガイドは上司でもあり山の大先輩。でも、山の雰囲気がそうさせるのか、なんだか3人はまるで同じ学校のクラスメイトのよう。息を弾ませながら、会話を楽しみ写真を撮りあったり、終始なごやかです。
 しかし、3人は知っていました。この穏やかな青空が長くは続かないことを……。南岸低気圧の通過にともない都心の平野部でも降雪があるかもしれないとの予報がされ、気象予報士が繰り返し注意をうながしていたのでした。
「きょうだけか……」
 ときおり空を見上げながら、誰もがそう思っていました。1日目は黒百合ヒュッテに宿泊。明日も晴れるのでは? そんなことを思わせるほど星空が瞬いていました。
 
 
 
 

DAY2

 明けて2日目。昨日までの青空は嘘のよう、景色は皆無であたりは真っ白です。当初は硫黄岳を経て赤岳鉱泉までの予定でしたが、降雪、風もあり天気もあまりよくないので、途中の本沢温泉をめざすことに。しばらく天気図をにらみ、行程の変更を決めました。天候を考慮して、こうした急な変更を考えるのも山登りの楽しさでもあります。
 稜線ではときおり強い風が吹き、なっちゃんとるんちゃんには少し緊張する道のりとなりました。黒百合ヒュッテを出て約2時間、雪が吹き付けるなか、夏沢峠に到着。ここから本沢温泉へ下ります。ひとたび樹林帯に入ると、風もさえぎられ木々に守られているようです。途中、程よい斜面で加藤ガイドが2人にラッセルを伝授。おとな女子登山部の雪訓です。
 1時間たらずで本沢温泉に無事到着。標高2,110m、日本の秘湯。看板に偽りなしです。湯に体をほどき、あたたかいストーブにあたります。なっちゃんとるんちゃんは、黒百合ヒュッテから山の本に夢中。続きを本沢温泉で読み始めました。山小屋をつなぐとこんな楽しみがあるのかもしれません。
 
 
 
 
 
 
 
 

DAY3

 3日目もしんしんと大粒の雪が降っていました。まずは硫黄岳をめざします。2日目と同様にあたりは白く展望はまったくのぞめません。それでも雪が吹き付けるなかを一歩一歩、着実に進んでいくと、全身で山を感じることができます。加藤ガイドに導かれながら、なっちゃんとるんちゃんも着実に歩を進めていきました。登りは苦しい九十九折りが続きます。景色が見えないだけに、「この登りは永遠に続くのではないか」そんなことも思ってしまいます。そして登頂。ようやく笑顔がこぼれます。
 さあ、ここからは赤岳鉱泉へ向けて下るのみ。赤岩ノ頭からの下りは夏道よりも積雪期のほうが足どりも軽やかです。小屋に着いたら、なにをしよう、あれを食べよう、あれを飲もう、今日の夕飯はなにかな~。今回の行程も終盤になり、気持ちにも余裕が出てきました。
 平日にも関わらず、赤岳鉱泉はとても賑わっていました。賑やかさと小屋の雰囲気が、2,000mを超える高地であることを忘れそうです。この日の夕食は、なんとカツ煮。自分で卵を割って仕上げます。ボリュームたっぷりの食事に、一同、舌鼓をうちました。
 
 

DAY4

 最終日、一転青空が広がりました。本来は美濃戸口までの下りのみでしたが、ワンプッシュ! 稜線まで上がってみようということになりました。真っ青な空が高く、気持ちも引き上げてくれます。赤岩ノ頭までくると、昨日はガスで見えなかった赤岳、阿弥陀岳が神々しく天を突いています。そして、久しぶりにお目見えした周囲のアルプスたちにもため息が出ました。
「はぁ~!」青空の下、なっちゃんとるんちゃんは新雪に大の字。降ったばかりの雪はふかふかです。4日間にわたる行程も終盤を迎えて、2人とも達成感がこみ上げてきているよう。あたりの景色を堪能しているのも束の間、あっという間に雲が上がってきてしまいました。山の天気は本当に変わりやすいものです。天気ひとつでこんなにも状況が変わる、山の奥深さをまたひとつ感じたのでした。

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メンバー3人の感想

  • 加藤智二ガイド
    「八ヶ岳連峰、人気のピークを北から南へ繋ぐルートを快晴の展望と冬らしい風雪、稜線をアイゼンで必死に下り、新雪にトレースをつけることができた"おとな女子登山部メンバー"に相応しい山行きとなりました。一日違うだけで全く違う表情を見せる冬の山では、必要と予測する装備をタイミングよく、正しく使うことが必要です。なによりも待つ辛抱強さと荷を背負い、歩くことができる体力に余力を持つことが大切だと実感できたと思います」

  • なっちゃん
    「冬の八ヶ岳縦走チャレンジ&3泊4日の山行も実は初めてでドキドキわくわくの山登り。今回のようにガイドさんに指導してもらいながらの登りするのも初でしたが、4日間一緒に歩いて加藤ガイドの登山スタイルを学ぶことができました! 歩き方やアイゼン・ピッケルの使い方はもちろん、危険個所の通過、景色の楽しみ方など教えてもらい、山への知識と想いがググッと深くなりました♪ 知識が少し加わるだけで今まで見ていた景色もまたひとつ変わって見える。山登りは奥が深いな~と感じた冬の4日間でした」

  • るんちゃん
    「加藤ガイドと御一緒して一番感動したのは、天気の読みの鋭さです。2日目、3日目は雪がチラついていたので、稜線はきっと吹雪くんだろうなと個人で行く場合は躊躇するような天気でした。しかし加藤ガイドの荒天にはならないという読みのもといざ行ってみたら、気になっていた硫黄の頂上は景色こそ見えませんでしたが、風も無く今までにない静かさでびっくりしました。山での心配事のひとつは天気です。私自身も天気をもっと学んで自分の山行に活かしたいです」