
新潟県妙高市と長野県長野市に跨る戸隠連峰の最高峰。標高は2,353m。百名山の一座に数えられるが、通年

長野県上水内郡信濃町にある標高2,053 mの二百名山。美しい円錐形の山容から信濃富士とも呼ばれる。コースタイムは往復7時間ほどで手ごろな日帰りコースとして地元ハイカーに親しまれている山だ。斑尾山、妙高山、戸隠山、飯縄山とともに北信五岳のひとつに数えられ、『新・花の百名山』に認定される。山頂までいかなくとも麓の湿地を彩る高山植物を目当てに訪れるハイカーも多い。山頂は開け、八ヶ岳や浅間山、南アルプス、富士山までも見わたせる。
参考コースタイム
【高妻山/歩行時間:約8時間】
戸隠キャンプ場(2時間40分)五地蔵山(2時間)高妻山山頂(1時間20分)五地蔵山(2時間)戸隠キャンプ場
【黒姫山/歩行時間:約7時間35分】
戸隠キャンプ場(20分)大橋登山口(20分)古池(1時間10分)新道分岐(2時間20分)峰ノ大池分岐(15分)黒姫山山頂(10分)峰ノ大池分岐(1時間20分)新道分岐(1時間)古池(20分)大橋登山口(20分)戸隠キャンプ場
【高妻山】
雪深い山々に囲まれた百名山だけあって雪解けが遅い。雪がない登山適期は6月中旬〜11月上旬。それ以前の残雪期はピッケル、アイゼンが必携だ。今回の取材日は5月21日。軽アイゼンとピッケルの軽装備で挑んだが、山頂直下の雪渓は思いのほか固く、急で、10本ないしは12本のアイゼンが欲しかった。五地蔵山までは尾根コースと、谷コースのどちらかを選べる。尾根コースは山頂まで水場がないので、夏場は多めに汲んで出発しよう。
【黒姫山】
麓から山頂へのルートは計4つある。おすすめは山容を映す古池や、高山植物を抱える湿原を通る大橋登山口コースだ。新道分岐からしらたま平までは急な登り。しらたま平まで登れば、視界が開け山頂へ続く緩やかな稜線が目に入る。山頂を踏み、時間があったら噴火口の七ツ池へ下ることをおすすめしたい。草原に池塘が広がり、黒姫山の牧歌的な一面を垣間みることができる。
【公共交通機関】
高妻山と黒姫山の登山基地となる戸隠キャンプ場までは、JR長野駅からバスで約1時間15分。戸隠高原行きのバスに乗り、終点が戸隠キャンプ場だ(戸隠キャンプ場のオープンサイトは予約不要、当日の受付可)。
アルピコ交通 https://www.alpico.co.jp/access/nagano/togakushi/
【マイカー】
上信越自動車道信濃町ICから戸隠キャンプ場までは、県道36号線経由で約30分。長野市内からは戸隠バードライン経由で約50分。ちなみに、戸隠キャンプ場はキャンプサイトまで車の乗り入れが自由にできる。




今回は、戸隠連峰の登山基地である戸隠キャンプ場にテントを張って、1日目は高妻山をピストンし、2日目は黒姫山をめざす「TOP from CAMP」スタイルだ。
戸隠キャンプ場には前日入りして、1日目は4時半に起床。眠い。高妻山往復はコースタイムで約8時間なので日の出とともに出発する必要がある。
朝靄が漂う戸隠牧場を横切り、新緑のブナ林へ分け入る。汗ばんだ体に初夏の風。思わず深呼吸。ああ、早起きしてよかった、気持ちがいい。
左手の谷に目をやると黒い点が少しずつ動いているではないか。
「うわー、クマだ!」
なっちゃんもあややも山中でクマを見たのは、はじめて。幸先いい出だしじゃないかと思ったのはつかの間、山頂へ続く標高差1,200mの急登が胸を突く。
はーはー、ぜーぜー、いいながら五地蔵山に立つと、山頂が見えた。
「ええー?! 真っ白じゃん」
山頂直下の急斜面にはまだまだ雪がたっぷり残っていた。しかも、太陽は雲に隠れたままで気温が上がらず、一向に雪面が緩む気配はない。
われわれの雪山装備は、ピッケルと軽アイゼンのみ。12本爪を持ってくるべきだったと悔やんでも後の祭り。
果たして、ふたりはあの頂に立つことができたのか?! ……続きは『GUDDEI 2016 SPRING』にて!




昨日の荒々しい残雪の高妻山とは一転、今日は新緑の森を楽しむハイキング気分。
古池に群生する高山植物ミツガシワを木道に座って眺めていると、ポカポカ陽気が「山頂」ではなく「昼寝」へと誘っていく。いかん、いかん。
冷たい湧き水で顔を洗い、気合いを入れ直し、登山道をゆく。
昨日はひとりも見かけなかったのに、すでに何人かの登山者とすれ違った。急登を抜けると、視界が開けた。そこが、しらたま平だった。
「あっ! 富士山だ!」
飯縄山のずーっと奥に富士山がうっすら浮かび上がっていた。視界を右手に移せば、昨日チャレンジした高妻山が堂々と雪を抱え鎮座している。
「わーー、太陽の周りに虹ができてる!」
昨日のクマに続き、なっちゃんとあややは、暈(かさ)を見るのが人生ではじめて。「人生ではじめて」が1日1回やってくる山って、やっぱりおもしろい。
山頂へ続く稜線のササヤブで小さなアップダウンを繰り返すと、まさかの雪が現れた。しかし、雪面はだいぶ緩んでいたので、ツボ足でザクザク登る。昨日の高妻を思えば、ちょろいちょろい。
登山口から4時間後、ようやく山頂に立った。絶景が眼下に広がる。戸隠連峰、志賀高原、斑尾山、野尻湖が大地の凹凸を作り出している。
あややがバックパックからニュージーランド産のリンゴを取り出し、ザクッと男前にかぶりついた。信州産じゃないのね。
「山頂でずっとコレをやりたかったの」
ふたりにとって、北信の春山は「はじめてづくし」の山旅となった。