おとな女子登山部レポート仲間に会いに裏銀座・野口五郎岳へ

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投稿者
るんちゃん(おとな女子登山部)
日程
2025年09月16日 (火)~2025年09月17日 (水)
メンバー
【1日目】単独
【2日目】山小屋仲間5人
天候
【1日目】 晴【2日目】 曇
コースタイム
【1日目】高瀬ダム(40分)ブナ立尾根登山口(210分)烏帽子小屋(80分)三ッ岳(100分)野口五郎小屋(20分)野口五郎岳(15分)野口五郎小屋
【2日目】野口五郎小屋(100分)南真砂岳(80分)湯俣岳(120分)晴嵐荘(15分)湯俣山荘(150分)高瀬ダム
コース状況
・裏銀座登山バスが信濃大町駅から七倉ダムまで9月末まで毎日往復4便運行してます。
・七倉ダムから高瀬ダムまでは乗合タクシーが使えます。6~8人で500円から600円ほど。帰りは高瀬ダムの公衆電話で呼び出しできますが、運転手さんによると回線が不安定なようです。晴嵐荘か湯俣山荘、もしくは烏帽子小屋から電話してもらった方が確実だそうです。
・ブナ立尾根手前の濁沢丸太橋は15日頃大雨で流され18日には復旧しましたが、またすぐに流されました。流されても水深が踝程度なら濡れずに渡渉可能です。通過する際は都度情報の確認を。
・野口五郎小屋1泊2食で14000円。水は1L200円。
・竹村新道は森林限界上部で切れ落ちた崖を通過します。湯俣川が近い下部も岩壁が露出した箇所があるので、慎重に下る必要があります。
・晴嵐荘から対岸へはジップラインで通行します。通行料500円。
難易度
Google Map

感想コメント

 お世話になっている山の先輩が、今夏は野口五郎小屋のお手伝いをしているので、歩荷も兼ねて裏銀座ルートで会いに行きました。
 今回は車が無いので信濃大町に前日入りして、裏銀座登山バスを使いました。夏山シーズン終わりまで運行している七倉山荘行きの乗合バスです。表銀座ほど人気が無いので1日4便しかありません。それでも登山口まで乗せてくれるので、朝5時の出発に合わせてありがたく使わせてもらいました。次の便は7時なので、野口五郎を目指すとなると始発が理想的。ということで仮眠だけして寝不足のまま出発しました。

 数日前の大雨で、登山口手前の濁沢に掛けられていた丸太橋が流され、今回は渡渉しなければなりませんでした。現在は復旧していますが、大雨が降る度に流されているそうです。山崩れが年々激しさを増し、数年前に訪れた時よりも緑が減少し地形が変わっているように感じました。ブナ立尾根も崖崩れが起こり、船窪や不動岳の斜面は一層崩壊が進み、白い斜面が剥き出しになっていました。野口五郎小屋の小屋番さんの話では、数年後ブナ立尾根は歩けなくなっているかもしれないとのことです。そんなに深刻だとはつゆ知らず、眠気によるだるさと戦いながら三大急登のブナ立尾根を登っていきました。

 ハイクアップが終わって稜線歩きになると、先はまだ長いですが景色が開けるので気分もいくらか楽になります。この日は北アルプスの全山が見渡せるほどの素晴らしいお天気でした。まずは裏銀座最初のピークの烏帽子岳、そして烏帽子小屋の対岸には遥かに遠い赤牛岳が目の前に見えました。
 烏帽子小屋を後にするとスタート地点の高瀬ダムが見えてきました。エメラルドグリーンのダム湖から聳え立つのは唐沢岳、去年雨の中歩いた餓鬼岳、一度下って燕岳、大天井岳と東鎌尾根が続いています。いずれ見えてくる槍ヶ岳に思いを馳せながら振り返ると、先程までなだらかに見えていた烏帽子岳が、距離を置くことでくっきり烏帽子の形に出来上がっていました。その後ろには立山と真っ白な地獄谷を隔てて大日岳、剱の八ツ峰も見えました。氷河が残る地形のせいでしょうか、他の北アルプスとは明らかに異質で、サシのようないくつもの白い筋がたくさん山肌に描かれています。この位置から眺める立山連峰はなかなか圧巻でした。
 野口五郎へ行く前に三ッ岳を越えるのですが、特に特徴のある山でもないのに長い間立ちはだかり、ピークを乗越したと思ったら西側にトラバースして道が続いており南部の山が一向に見えません。ようやく鞍部に着いて黒々とした水晶岳が見えました。そして槍ヶ岳も。ちょうど穂先の左後ろにギザギザの前穂北尾根が聳え、ラスボスの居城のような雰囲気を醸し出していました。見る場所が違うとこうも印象が違うものかと、希にみるピーカンに感謝しながら飽きるまで眺めていました。
 調子が良ければ昼過ぎには小屋に着く予定でしたが、思った以上に時間がかかってしまいました。こりゃあ先輩に呆れられてしまう。寝不足でエンジンがかからなかった、とか景色に見とれてしまって、とか到着が遅れた理由をあれこれ考えていると、眼下に青い屋根が見えてきました。ようやく野口五郎小屋に到着です。

 早速手を振っている人がいたので駆け寄ると、遅かったね、ご苦労様といつもの素っ気ない一声。予想通りの反応に苦笑いしつつ、急いで荷物を解きました。運んだのは豚挽き肉とトマトとオクラ、バターやら小麦粉やら。傷みやすいものを背負っていたので早めに冷蔵庫に入れてもらいました。
 荷揚げも無事完了し、ようやく落ち着いて腰を下ろすと、ウェルカムドリンクのサービスが。疲れた体に優しい甘さのココアとフルーツゼリーをいただきました。
 雲ノ平や西鎌尾根、新穂高温泉や折立方面など、様々な縦走の拠点になる小屋なので部屋は既に埋まりつつありました。荷物を下ろしてサンダルのまま野口五郎岳へ。明日は晴れるか怪しいので今日のうちに絶景を拝みに行きました。
 山頂からは槍ヶ岳の存在感が一際大きく、周りの山々も夕景色に染まりかけていました。暫く眺めていたらいつの間にか夕食まであと僅かの時間に。歩きにくい岩稜地帯を急いで下ってギリギリに小屋に到着、何とか夕飯には間に合いました。
 夕食は目玉焼きが乗ったたっぷりのカレーライス。珍しくお代わりなしで平らげると急激に眠気が襲ってきました。部屋に戻って眠る体勢に入っていると、先輩からお呼び出しが。食堂の裏のスタッフルームに案内され、ちょっとした宴会が始まりました。
 テーブルの上には私が運んだ挽き肉とトマトとオクラが入った炒め物が。シンプルに塩コショウで味付けされ、ご飯の進む料理に変身していました。たんぱく質と野菜を一緒に摂れるので、山の上のご飯としては最高です。運んだ甲斐がありました。
 それらをつまみながら、小屋の主の上條さんたちの日々の仕事や、月末の小屋締めに向けた準備の話、以前運び込まれた要救者の話など、普段なかなか聞くことのできない貴重なお話をたくさん聞かせてもらいました。シーズン中大変なのはヘリの荷下ろしだそうで、お客さんが来るまでの時間との戦いで、スピード勝負の目の回るような忙しさだそうです。
 小屋のバックルームで実際に働く人たちの話を聞けるなんて、ありがたく貴重な時間でした。山小屋は我々登山者にとって無くてはならない存在です。これからも節度を守って山を歩きたいです。

 翌日は予報通り小雨で風が少し吹いていました。それほど荒天ではなかったので、予定通り竹村新道を下って湯俣に下りることにしました。竹村新道はガレて急、そして長いと聞いていたので初めて下る身にとっては少し不安でした。そんな私を見て、湯俣を下りる人皆で行きなさいよ、と先輩が前日に竹村下山隊を結成、いつの間にか初めて同士の6人で湯俣を目指すことになっていました。
 確かに切れ落ちていて急な箇所もあり、荒れた日には使いたくない道でしたが、それよりも他の人が全員健脚でかなりの速さで下の晴嵐荘まで下りました。先頭を歩いていたのは前日に七倉から入り、船窪、不動岳を越えて一日で野口五郎までたどり着いたグループだったのでこの速さは納得でした。おかげで湯俣山荘でゆっくりとパンナコッタ休憩できました。
 ここのパンナコッタがクリーミーでコクがあるのは、実は燻製の香りを纏わせているから。提供される直前にガラスの蓋を外すのは、燻した香りを生クリームに移す為だったのです。去年ただただ旨いと味わっていたパンナコッタには、実はそんな繊細な秘密があったなんて。一年越しに美味しさの謎が解けました。
 パンナコッタのおかげで残りの長い林道も何のその...というわけには行かず、やはり長くくたびれました。湯俣川の青い流れを眺めながら二時間、真っ暗で先の見えないトンネル合計三本、歩き尽くしました。
 同じ場所に戻ってきたのに、前日の高瀬ダムとは違う場所にいるようでした。裏銀座、またいつか戻ってきたいです。

【使用ギア】
アンダー▶️ミレー/ドライナミックメッシュ
ベース▶️ミレー/ヘザーメッシュクルー
パンツ▶️ノースフェイス/バーブライトスリムパンツ
レイン▶️ミレー/ティフォン50000ジャケット&パンツ
シューズ▶️ダハシュタイン/スーパーフェラータ
ザック▶️ノースフェイス/ノーム28
保冷バッグ▶️イスカ/コンパクトクーラーバッグL

フォトギャラリー

野口五郎岳山頂から五郎小屋を見下ろします。

丸太橋が流出して間もない濁沢。なんとか飛び石伝って対岸へ。

高瀬ダムと去年登った餓鬼岳と唐沢岳。

烏帽子小屋の池から燕岳と大天井岳が見えました。

三ツ岳へ向かいます。赤牛岳と薬師岳も競り上がってきました。

振り返ると烏帽子岳の向こうに立山と大日岳が。

小屋に到着してまずはウェルカムドリンクとゼリーをご馳走になりました。

寝床は快適。即効寝落ちできます。

ご飯の時間まで散策。槍ヶ岳と乗鞍が見えました。

三俣蓮華の向こうにひょっこり笠ヶ岳。

夕食はカレーでした。目玉焼きがまん丸でお上手。

翌朝の出発時。小屋の主の上條さんと。

ガスガスたまに雨パラパラ。

まずは真砂岳目指します。晴れてきたかな?

竹村新道に突入。噂通りの切れ落ちぶりです。

途中見上げると野口五郎が見守ってくれていました。

ここも嫌らしい。落ちたらあかんとこ。

やっと湯俣川が見えました。

湯俣ブルーを眺めながらジップライン♪

湯俣山荘のパンナコッタ。2年連続で口にできるとは!

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