北岳バットレス 第4尾根
- 投稿者
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るんちゃん(おとな女子登山部)
浦和パルコ店
- 日程
- 2024年10月21日 (月)~2024年10月23日 (水)
- メンバー
- 山の先輩
- 天候
- 3日目のみ小雨
- コースタイム
- 【1日目】広河原(150分)白根御池小屋
【2日目】白根御池小屋(30分)大樺沢二俣(60分)ケルン(30分)5尾根取付(120分)4尾根取付(120分)マッチ箱(45分)枯れ木テラス(45分)城塞ハング(90分)北岳(30分)肩の小屋(120分)白根御池小屋
【3日目】白根御池小屋(90分)広河原
- コース状況
- ・芦安駐車場~広河原までバス1450円、スイカ使えます。
・最短の日帰り温泉は芦安駐車場向かいの白峰会館750円。小さいですが露天もあります。2階の売店では山グッズやお土産あり。温井画伯の絵も売ってます。
・広河原山荘がリニューアルし宿泊の他、テント泊やシャワーも利用できます。軽食やお土産も充実、登山しなくても楽しめそうでした。
・白根御池小屋テント2000円、南ぷすリザーブから事前予約します。売店は20時まで、ペイペイが使えます。
* * *
・下部岩壁は第5尾根支稜から。取付へはバットレス沢を過ぎたC沢とD沢の間にあるケルンが目印。
・第5尾根支稜は4ピッチほど。シューズは履きませんでした。1P目スラブを左上、2P目は階段状、カムを使うのもあり。その後の横断バンドはコンテで。ロープを速く引き過ぎると落石起こすので注意。急なガレ場を第4尾根取付のヒドゥンスラブまで登ります。
・第4尾根取付にはガレ沢の左壁に赤ペンキで「4」と書いてあります。ヒドゥンスラブは取付まで行かないと見えません。少し苔の生えたスラブです。
・出だしのクラックは、右カンテ奥のガバを効かせてフットジャムで立ち込みます。そのまま右には行かずクラック沿いに上がります。
・三角垂壁はボルトが右と左にありますが、右を登ってフレークを掴むと抜けられます。
・マッチ箱の懸垂下降は真っ直ぐ下のテラス目がけて降りるのがベスト。右に足場になりそうな溝ありますが足を置いてしまうと振られます。
・懸垂下降後、枯木テラスへは1Pで登りました。
・ナイフリッジの後、左のスラブ下方に見落としがちなボルトありピッチ切れます。
・城塞ハングはクラックに残置カム、左にお助け紐があります。
・終了点から30分ほど歩いて北岳山頂です。
- 難易度
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感想コメント
日本を代表するマルチのクラシックルートといえば北岳バットレス。北岳を初めて訪ねた頃は一生登ることのことのないルートだと思っていました。クライミング技術はまだまだの私ですが、登るチャンスが運良く巡ってきたので思い切って挑戦してみました。
日帰りで行っている外岩とは大きく違い、3000m級の高所な上に時間のかかるルートで、初心者にとっては十分すぎる内容の濃い山行となりました。
北岳の玄関口・白根御池小屋を拠点にして、初日はアプローチのみ、2日目にアタックして3日目に下山するというプランだったので余裕をもって臨むことができました。ベースキャンプがあるのも人気の理由の一つだと思います。
お天気には恵まれましたが紅葉最盛期で日が短いため、アタック当日は夜明け前に出発。それにも拘わらず、白根御池へ降りた頃にはすっかり日が暮れていました。難易度はⅢ~Ⅳ級程度ですが、初級者の私がリードした最初のクラックや三角垂壁、城塞ハングはⅣ級でもクリアするのにかなり時間を要しました。特に城塞ハングは終盤の疲れもあり、残置カムやお助け紐がなければ越えられなかったと思います。体力、ロープワーク、クライミング技術などの総合力が問われるのは勿論、パートナー同士の連携も必要です。ちょっとやそっとの経験で気軽に行ける場所ではありません。食欲の秋で体重が落とせず体作りもできていなければ、クライミング力もイマイチなまま、準備不足で課題の残る山となってしまいました。無事に山頂を踏めたのは奇跡だったかもしれません。
核心ピッチのリードは私が担当、バットレス3回目の先輩のフォローがあるとはいえ突破はやはり時間がかかりました。何度かフォールしかけてようやくたどり着いたマッチ箱。白根御池小屋からも見えたので、探してみたら遥か下に池の形を確認できました。
マッチ箱の標高は2700m程度。経験した中では最も標高の高い場所からの懸垂下降です。20mほどの下降ですが周囲は全て奈落の底。下を見れば見るほど足が竦み、真っ直ぐ降りるのに躊躇してしまい振られながら降りました。初日、白根御池小屋へ向かう途中で、フリーソロでバットレスを登ったという強者とすれ違いました。マッチ箱からのクライムダウンが一番怖かったと言っていましたが、こんな所を確保なしで下りるなんて信じられません。
無事に着地したら、次は枯れ木テラスまで緩やかなスラブを登り返します。手足が細かいので油断はできないピッチでした。
枯れ木からはまた私のターン。ナイフリッジをトラバースするだけですが、噂通りの切れ落ち具合でリッジの先端を掴みながら恐る恐る進みました。絶対に下を見ないように。そう自分に言い聞かせて何とか歩き切りました。私にはわかりませんが先輩はこのナイフリッジが開放的で好きなパートだとか。楽しそうな先輩を引き上げたら、後は最後の核心・城塞ハングです。
高さのある壁だったので念のためプリクリップしてもらい、出だしはトップロープ状態でスタート。スマートなクライミングではないですが、頭上の#0.5らしき残置カム、左壁のお助けスリング、使えるものは全部使って突破しました。終了点に着くと、雲が上がってきていて午前中の青空はどこへやら。太陽と富士山に迎えられ華やかな最後を想像していましたが、寒々しい光景に迎えてもらいました。
風が出てきたのでロープやギアラックだけしまって山頂へ。ご飯も食べずにヘロヘロだったので足取りが重いです。何とか到達して北岳の看板にタッチすると涙が溢れてきました。しばらくして落ち着いて辺りを見渡すと、目の前には甲斐駒や仙丈、塩見岳など南アルプスの代表的な山々が顔を出していました。ご褒美に素晴らしい景色を眺めることができて大満足、下山する力も湧いてきて、時間はかかりましたが白根御池まで無事に下りることができました。
翌日テントから出てみると早くも雨。テント場には初めてバットレスに挑むというご夫婦がいたので、エールを送った後に撤収に取りかかりました。
雨で濡れて質量が増したザックを抱えながらえっちらおっちら下山。首や腕が筋肉痛で、指先はヒリヒリ。上半身だけ痛むのはまだまだ下半身を上手く使えていない証拠です。いつかまたバットレスにチャレンジすることがあれば、足の力も鍛えて余裕のあるクライミングができるようにしておきたいです。
【使用ギア】
テント(アライテント/SLソロ)、ザック(オスプレー/ミュータント52)、マット(サーマレスト/プロライト)、シュラフ(イスカ/エア450X)、サブザック(ノースフェイス/ノーム28 ウエストベルト外しました)、シューズ(スポルティバ/TX5ロー)
【使用ウエア】
レイン(ミレー/ティフォン50000ストレッチジャケット&パンツ)、フリース(ミレー/アルファライトスウェット)、アンダー(ミレー/ドライナミックメッシュ)
【登攀ギア】
50mダブルロープ(マムート)×2、カム(ブラックダイヤモンド/キャメロットUL)#1,2,3、アルヌン60×4、120×4、クイックドロー×4、ハーネス(ブルーアイス/コーカスプロ)、ヘルメット(ブラックダイヤモンド/ハーフドーム)
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・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。