南アルプス早春 尾白川鞍掛沢乗越沢遡行 ~ 日向山経由周回ルート
- 投稿者
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伊藤 岳彦
横浜西口店
- 日程
- 2016年04月05日 (火)~
- メンバー
- 単独行
- 天候
- 曇後晴
- コースタイム
- 矢立石手前ゲート(60分)林道終点(10分)入渓点(30分)鞍掛沢出合(90分)乗越沢出合(90分)駒岩(90分)日向山(45分)矢立石手前ゲート
- コース状況
- 本文をご参照下さい
- 難易度
-
感想コメント
尾白川 鞍掛沢
今話題?の新刊『外道クライマー』宮城公博著(集英社インターナショナル)を読んでいるうちに、無性に沢歩きをしたくなりました。ちょっとした冒険心を満たすためにあえて4月の南アルプスへ。ナメ滝の多い初級ルートですが、白い花崗岩と残雪が描き出す世界はとても美しいものでした。
8:15矢立石手前ゲート発→9:12林道終点着→9:42入渓点発→10:09鞍掛沢出合着→11:41乗越沢出合着→13:12駒岩着→14:35日向山着→15:25矢立石手前ゲート着
目次
1 入渓点まで
黄蓮谷や尾白川本谷を遡行する場合は竹宇駒ヶ岳神社が起点となりますが、今回は乗越沢を詰めて日向山から下山する周回ルートなので、日向山登山口が起点。ただこの時期はまだ冬期封鎖されており、矢立石駐車スぺ―スの数百メートル手前の簡易ゲート前がスタート地点となります。
【↑】 簡易ゲートからスタート
しばらくは林道歩き。よいウォーミングアップになります。
途中アイスクライミングで人気のある錦滝を見物し、倒木の多い廃林道を突き進みます。
もはや沢ヤしか訪れることのない林道となっていますが、大きな崩落もなく通行に支障はありません。
途中視界が広がり、尾白川を挟んで黒戸尾根が恐竜の背のように突き上げる様を見上げることのできるスポットがあります。
【↑】 廃林道を奥へ
【↑】 2つ目の隧道入口は荒れています
年代物の隧道トンネルを3つ過ぎると林道終点です。
【↑】 林道終点の広場
ここから入渓点までは踏跡を急下降しますが、固定ロープが長く張ってあり、しっかりとしたルートが出来ています。入渓点まで10分ほどの下り。ロープを握るので、沢グローブを装着した方がよいでしょう。
【↑】 入渓点
ここで装備を整えて入渓。盛夏であれば汗だくの体で嬉々として水の中に飛び込むところですが、濃いガスと水温の低さが際立つ4月の尾白川は、何というか来てはいけないところに来てしまったような気にさせられます。
2 鞍掛沢へ
しばらくは鞍掛沢出合まで尾白川本谷を辿ります。曇っているのでテンションが上がりませんが、沢歩きの要領というか、足のさばき方は体がすぐに思い出してくれます。
【↑】 最初の4mナメ滝
まともに突っ込むと心臓麻痺を起こしそうなので、ここは迷わず右岸を巻きます。なるべく水の中に足を入れないように、岩を飛び歩いていくと次は9mナメ滝が現れます。
【↑】 9mナメ滝
この滝は女夫ノ滝と言われるところ。いわゆる夫婦滝で、規模から考えると下が雄滝、上が雌滝ということになりそうです。
この雄滝は長い滑り台が特徴。ステルス靴であれば軽快に左側を登れますが、フリクションの落ちたフェルト靴の場合は、巻いた方が賢明かもしれません。
昔はこの辺りも尾白渓谷道が通っていたので、右岸に何となく踏み跡らしきものがあり、女夫ノ滝をまとめて巻くこともできそうです。
【↑】 上部には残置支点があります
【↑】 こちらは雌滝 7mナメ滝です。
女夫の滝を越えると平凡な河原となり、まもなく鞍掛沢出合です。
【↑】 鞍掛沢出合
尾白川本谷方面にはワイヤーがかかる梯子滝が見えます。
【↑】 梯子滝 ワイヤー下を登れます 右岸巻きも容易です
ここから尾白川本谷と分かれ、鞍掛沢へ入ります。
【↑】 鞍掛沢へ入ります
【↑】 とても穏やかな渓相です
【↑】 ナメ床と淵が幾つも広がります
【↑】 この辺りまで来ると残雪が見られます
【↑】 最初の滝らしい滝
【↑】 2段7m滝
【↑】 滝上は広場になっています
【↑】 さらにナメ床が続きます
【↑】 様々な滝に出会えます
【↑】 あえて水線突破を試みます
膝が痺れるほど水が冷たいですが、この辺りは一番面白いところでした。
【↑】 再び穏やかな渓相へ
【↑】 残念ながら魚影はありません
【↑】 右岸支流に2段20m滝
写真だと分かりにくいですが、この滝は意外に立派な大滝でした。
【↑】 続く2段6m滝
この滝は登れないので、左岸を高巻きました。
【↑】 乗越沢出合に到着
【↑】 幅広10m滝が出会います
3 乗越沢へ
乗越沢は名前からしてエスケープしてくださいと言っているような沢。
乗越沢に入ると水量は激減し、傾斜が段々ときつくなっていきます。
【↑】 グングンと高度を上げていきます
【↑】 登れる小滝①
【↑】 登れる小滝②
【↑】 この滝は左岸を巻きます
【↑】 さらに上流へ
【↑】 二俣は右へ
二俣は本流である右俣へ。忠実に本流を辿った方がよいと思われます。
【↑】 残雪のある詰めへ
【↑】 藪はなく笹原となります
【↑】 とても静かな雰囲気です
この辺りは鹿の通り道になっているようです。
【↑】 もうすぐコルです 何気に標高が2,000mあります
【↑】 ようやくコルへ 反対側には豊富な残雪がありました
4 日向山経由で下山
鞍掛山鞍部コルからは僅かな登りで駒岩へ。途中甲斐駒の全容を望める場所があり、ガスが昇り龍のように黄蓮谷を駆け上がっていく様子が印象に残りました。
【↑】 駒岩(2,029m)
【↑】 雄大な甲斐駒を望む
【↑】 日向八丁尾根を駆け下ります
【↑】 青空の見える日向山へ
【↑】 山頂直下にて
【↑】 甲斐駒を振り返ります
【↑】 雁ヶ原は展望雄大です
【↑】 日向山山頂
日向山を訪れたのは何十年ぶりとなりますが、展望の素晴らしさはハイキング向けの山としてはまさに一級品でしょう。残雪をまとって光り輝く甲斐駒の雄姿がとても印象的でした。
【↑】 ハイキングコースを下ります
5 遡行を終えて
雪解け水の冷たさに耐える、まるで“修行”のような沢歩きになってしまいましたが、久しぶりの沢歩きはやはり大変面白いものでした。
石の上を天狗の如くポンポンポ~ンと飛び歩くスピード感や、オンサイトでルートを見極める面白さ、何が起こるか分からない不確かさ、登れる滝をグングンと登っていく爽快感、無事に登山道に出たときの高揚感など、雪山登山とはまた異なる面白さが沢歩きにはあります。
頭をフル回転させ、全身の筋肉を駆使して、ちょっとした探検気分を味わう時間は、私にとって大変濃密なものです。
水と戯れるには時期尚早でしたが、今年もまだ見たことの世界を求めて、西へ東へ、多くの流域を訪れてみたいと思います。
1 尾白川
天下の名峰・甲斐駒ヶ岳の北東に位置する景勝地・尾白川おじらがわ渓谷。
尾白川は甲斐駒ヶ岳と鋸岳の中間地点にある三ツ頭付近を水源とし、黄蓮谷おうれんだに・鞍掛沢と合流して、穏やかな流れで釜無川に注ぐ、花崗岩とスラブが広がる美しい渓谷です。
遡行対象となるのは、尾白川本谷とその支流である滑滝沢、奥ノ滑滝沢、北坊主ノ沢、西坊主ノ沢。そして黄蓮谷右俣と左俣、黒戸北沢、刃渡り沢などが知られます。
これらの中では黒戸尾根に近接する黄蓮谷があまりにも有名。無雪期は大スラブと数々の大滝を越えるダイナミックな遡行ルートであると同時に、言わずと知れた日本有数の冬期アルパインアイスのクラシックルートでもあります。
2 鞍掛沢
鞍掛沢は黄蓮谷よりも下流で尾白川に注ぐ、尾白川左岸最大の支流。
日本登山体系によると、“滝はなく、遡行価値もない...”とバッサリ切り捨てられていますが、WEBの記録を散見すると、魚影があり、ナメ床もきれいなど、意外な好印象で沢ヤに認知されています。
実際に歩いてみると、魚影はありませんでしたが、全体的に明るく雰囲気のいい渓相。
南アルプスのなかでは、平凡な溪相なのかもしれませんが、個人的には鈴鹿の神崎川流域を彷彿とさせる、とても優しく美しい渓であると思いました。
当日は生憎ガスっていましたが、晴れていればとても気分の良いところでしょう。
ナメ床が多く、難所のない、癒し系の初級ルートなので、南アルプスでの盛夏の水遊びにも最適です。
また今回のように乗越沢という支流を詰めれば、日向山西方の鞍掛山直下に出ることができ、南アルプスでは貴重な日帰り遡行が可能。
乗越沢は5mクラスの小滝が続く、勾配のキツイ支流ですが、ホールド豊富で登れる小滝も多く、それなりに楽しむことができます。
二俣を右に進むと、傾斜のある詰めとなりますが、忠実に水線を辿ると、藪漕ぎなしでドンピシャ鞍掛山のコルに出ます。
時間に余裕のある方は、鞍掛沢よりさらに上流の金山沢を詰め、大岩山へ抜ける沢中一泊遡行を楽しむこともできそうです。
3 アプローチ
アプローチは日向山登山口へ向かう尾白川林道を使います。
現在は冬期規制があり、矢立石駐車スペースの数百メートル手前に簡易ゲートがあり、12/10から4/24までその先進入禁止となっています。
路肩に駐車することになりますが、切り返しは可能です。
【↑】 こちらは正規の矢立石駐車場 停め方にルールがあるようです
以下、参考となるサイトをご紹介致します。
北杜市観光情報サイト はこちらをご覧ください
日向山の情報 はこちらをご覧ください
立ち寄り湯の情報其の一 はこちらをご覧ください
立ち寄り湯の情報其の二 はこちらをご覧ください
以下、滝の写真を中心にその他の写真をご覧頂ければ幸いです。
フォトギャラリー
・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。