アラスカ・デナリ~ウエストバットレス

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投稿者
小山田 隆博
日程
2018年05月21日 (月)~2018年06月12日 (火)
メンバー
小山田 他3名
天候
コースタイム
5月20日 アンカレッジ→タルキートナ
5月21日 タルキートナ→LP(ランディングポイント)
5月22日 LP→C1:スキーヒルキャンプ(2400m)
5月23日 C1→C2(2960m)→C1
5月24日 停滞
5月25日 C1→C2→C3:モーターサイクルヒル(3550m)
5月26日 C3→C2→C3
5月27日 C3→ウィンディコーナー先→C3
5月28日 C3→C4:メディカルキャンプ(4,300m)→C3
5月29日 C3→C4
5月30日 C4→ヘッドウォール(HW)→C4
5月31日 レスト
6月1日  C4→HW先→C4
6月2日 C4→ハイキャンプ:HC(5250m)
6月3日 HC→デナリパス先(悪天候で引き返し)→HC
6月4日 HC→頂上→HC
6月5日 HC→C4
6月6日 C4→ウエストリブ上→C4
6月7~9日 レスト&停滞
6月10日 C3→C1
6月11日 C1→LP→タルキート
コース状況
○LP-C1
LPから少し下ると広大なカヒルトナ氷河。傾斜は緩いが、距離は長い。
○C1-C2
スキーヒルという急斜面を登り、さらに進むと視界が開けてくる。3,000m手前がC2風が強いことが多く、泊まらずにデポ地とし使うことが多い。
○C2-C3
しばらくは緩い傾斜が続き展望が広がる。カヒルトナパスを越えると傾斜が増す。LPからC3までは悪天候時はルートを見失いやすいので注意。
○C3-C4
モーターヒル、スクエアヒル、そしてウィンディーコーナーと急斜面が断続的に出てくる。クレバスも目立つ。C3にスノーシューはデポ。アイゼンでの歩行とした。
○C4-HC
HWまでは急傾斜。上部はフィックスロープがあるのでユマール必須。渋滞にいかに巻き込まれないかがカギ。ウエストバットレス上は細いリッジだが技術的な困難さはなし。
○HC-山頂
デナリパスまでは急斜面のトラバース。その後は広い尾根状となり視界悪い時は注意が必要。最後に急斜面を越えて頂上。
難易度
Google Map
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  • おとな女子登山部

感想コメント

 僕にとってデナリは学生時代からずっと憧れで目標としていた山でした。今回、40歳を目前に目標を夢のまま終わらせてはいけないと、仲間に声をかけようやく実現することができした。計画はまず高度順応を兼ねてノーマルルートであるウエストバットレスから頂上に立ち、一旦BCへ下った後に主目的のアルパインルートであるカシンリッジから再度頂上を目指すというもの。カシンリッジはデナリに行くならこのルートで以前から決めていたルートでした。

【アラスカ・アンカレッジ~タルキートナ~LP】
 出発前は準備や何やらでかつてないほどバタバタ。千歳空港からの飛行機に乗りこれから遠征が始まるんだとようやく実感が湧く。アラスカ・アンカレッジの宿でメンバー全員が集合。アンカレッジは思っていたよりも大きな街で装備品や食料を買い足しを行う。二日ほど滞在し、貸切のシャトルバスでデナリの玄関口となるタルキートナへ移動。
 タルキートナはアンカレッジと違いデナリの登山シーズンとなる5,6月に賑わう小さな街。レンジャーステーションにて登山についての諸注意などのオリエンテーションを受けると、予定より一日早くセスナでLPへ!40分ほどのフライトだがセスナからの景色は絶景の一言。初めて見る氷河、巨大な険しい山々がいくつも連なっている。降り立ったLPにて目の前に聳えるアラスカ第2の高峰・ハンターの威容に圧倒される。

【LP→C1→C2→C3】
 ポーターを雇うことができないデナリではほとんどの登山隊がザックだけでは収まらない荷物をソリに乗せ、さらにクレバス対策でロープにメンバーが繋がりながら歩く。このソリを如何にうまく操るかが大きなポイントともなる。C1までは傾斜の緩いカヒルトナ氷河を黙々と歩く。日差しが強く雪面からの照り返しも強烈でアンダーシャツだけでも汗だく。当然ながらサングラスは重要な装備品の一つ。
 C2は風が強いことが多いので荷物をポするだけで泊まることはない。カシンリッジ用のクライミングギアが重く荷揚げに時間を要する。
 C1から上部は傾斜が徐々に増し、特にカヒルトナパスを過ぎると急斜面が続きC3となる。高度はどんどん上がり、周囲の景色は刻々と変わり、それは美しくあまりに素晴らしい。
 多くのパーティが入山しているので、トレースがしっかり付き所々にはデポ旗も打ってあるので迷うことはない。荷物が重いので、行動ペースはゆっくり。焦らず時間をかけて進むことを心がける。

【C3→メディカルキャンプ】
 C3にスノーシューはデポ。ここからはアイゼンとなる。C3の目の前にはモーターサイクルヒルという急登、さらにスクイアヒル、ウィンディコーナーと急な登りが続き重荷がキツイ。この行程が一番きつく、荷揚げを二日、計3日を要してメディカルキャンプ入りした。メディカルキャンプは大きなキャンプ地でよくこんな高度にこれだけの広さの平坦地があるな、と思うほど。レンジャー、医師が常駐しており、多くのパーティーがここからハイキャンプ、さらに頂上へのアタック体制を整える。
 高度は既に4000mあり、二日くらいは軽く頭痛を感じた。また太陽が沈むと、一気に気温が下がり朝はマイナス20‐30度になる。ただし、日中はジャケットを着てられない位暑くなり、デナリ登山のポイントのもう一つはこの寒暖差をうまく乗り切ることかもしれない。
 日本人の登山者もチラホラと見かけることがあった。特に神戸から一人で登りにきていたKさんとはハイキャンプからのアタックでも一緒になった。

【メディカルキャンプ→ハイキャンプ→頂上→ハイキャンプ】
ウエストバットレスへは上部がフィックスロープが張ってある急斜面を登り取り付く。このあたりから頂上アタックやその準備に入るパーティーが登り、下りとも多数あり場所によっては渋滞となる。また、見るからにアイゼン歩行に慣れてない登山者もおり、ペースが遅いパーティの後ろにつくとイライラが募る。
 最終キャンプ地のハイキャンプ入りしたのは予定より二日かかった。荷揚げに時間を要しゆっくりと下ペースになったがその分、高度順応は良好でパーティ全員食欲旺盛でコンディションはぱっちり。

 ハイキャンプは5200m。さすがに寒く、アタック時はオーバーパンツの下にダウンパンツ、ジャケットの下にファイントラックのポリゴン3フーディ、さらにダウンジャケットを着込んでのアタックとなった。はじめのアタックは長い左上トラバースを経てデナリパスに出ると猛烈な強風で中止。翌日再アタックとなる。
 翌日は、他のパーティも一斉にアタックに出たため大渋滞。単独のKさんも渋滞に巻き込まれている。とくにデナリパスまでのトラバース斜面は地形的になかなか追い越しができないので少し進んではしばらく止まるといった感じで非常に時間がかかり、寒くて辛かった。
 デナリパスからは斜面は広がり歩きやすくなる。寒さで手足が冷たく、高度のせいかすぐに息があがり、ペースはやはりゆっくり。
途中までよかった天気も次第に風が強くなり、ガスが立ち込め視界は悪化。メンバーもかなり辛そうで、時間も押してきた。一度それぞれの体調そして意思を確認するが、皆、頂上を目指したいと言う。メンバーの力量を信じて再び行動再開。まわりのパーティもみな辛そう。再びKさんと一緒になりともに頂上を目指す。広大なプラトーから急斜面そして最後の頂上稜線を登りきると、銀色のピンが刺さった頂上にようやく辿り着いた!残念ながらガスで周りの景色は見えず。メンバーのN、そしてKさんと握手を交わす。
 もっと感動に浸っていたかったが天候は悪化、気温も一層下がってきており、下山にかかる。頂上を出てから10分くらいで他のメンバー二人とすれ違う。頂上が近かったこと、他のパーティもいた事から先に戻ることを伝えてN、Kさんとともに下山を急ぐ。次第に風も強まり、デナリパスまではかなり視界が悪い上に地形的にも迷いやすいことからかなり神経を使った。
 ハイキャンプにたどり着いたのはアタック開始から12時間後であった。さらに後続二人は視界不良もあって日付の変わった午前2時近くに戻ってきた。

【ハイキャンプ→メディカルキャンプ→下山】
メディカルキャンプに戻ってカシンリッジへの準備に取り掛かる。カシンリッジへのアプローチとなるウエストリブに荷物をデポし、一旦レストした後に出発する計画となった。しかし、この頃から天気が不安定になりはじめる。ここまでは時おり雪が降ることはあったが一時的なもので本格的な降雪や悪天候が何日も続くことはなかった。しかし、手元に届く天気予報は今まで見たことの無いような悪天候が断続的に続くことをを告げていた。日程、装備、自分たちの技量、色々な事を含めてメンバーで話し合いをした結果、カシンリッジは諦めて下山することとなった。
 下山はソリに大いに苦労した。C3からは早くも悪天候に捕まり、C1からはブリザードの中の行動でカヒルトナ氷河ではルートを見失いかけクレバスに落ちかけるなど危ない場面もあった。やっとの思いでたどり着いたLPは、そこだけ風もなく穏やかで帰路のセスナからの景色もこれまた絶景であった。
 3週間ぶりに戻ったタルキートナで久しぶりのシャワーを浴び、久しぶりのビールを思いっきりのみ遠征を締めくくった。

 今回メインと考えていたカシンリッジ登攀に取付きもできなかったことはとても残念で、不完全燃焼との思いもありますが、はじめてのデナリはとても素晴らしく魅力的でした。ずっと憧れてきたデナリの頂上、そしてデナリから見る景色、感じた想いは全て僕の想像以上でした。この遠征を実現するにあたり、職場のみなさん、家族、山の仲間、多くの方から助け、支えがありました。感謝の言葉しかありません。本当にありがとうございました。
 

フォトギャラリー

LP。バックはハンター峰。いつか登ってみたいと思いました。

タルキートナで出発準備。荷物が多い!

セスナでいよいよ出発!

初日は入山祝いでステーキ!

北東フォーク。日陰は少し寒いです

ソリを引きながらひたすら歩く

これはなんだか分かりますか?山行中は必須装備でどのパーティも持っています

C3。ここも景色が良いです。奥はフォーレイカー。

C3を出てモーターサイクルヒルを登る。きつい登りです

風の強いウィンディコーナーは今回穏やかでした

広いメディカルキャンプ

HWへフィックスロープをユマーリング。

HWから。広大な景色が広がってきます。

しばらく細いリッジを進むと

いよいよハイキャンプです。

アタック前。まだ元気です

アタック開始から4時間。まだ先が長いです

視界がだんだんと悪化

ついに頂上!寒くて真っ白でした~

さあ!街にもどるぞ!!

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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