四国山地横断トレイル 4日目~7日目

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投稿者
戸田 竜也
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日程
2023年10月19日 (木)~2023年10月22日 (日)
メンバー
高知大丸店 戸田
天候
晴れ・雨
コースタイム
【コースタイム】
4日目
22.6km 上り:2330m 下り:1901m
竜神平避難小屋→(55分)陣ヶ森→(60分)うなめご→(110分)梅ヶ谷山→(55分)樽谷山→(30分)根無山→(30分)白猪山→(100分)割石東山→(100分)青滝山→(140分)堂ヶ森→(15分)堂ヶ森避難小屋

5日目
堂ヶ森避難小屋で停滞

6日目
20.4km 上り:1344m 下り:1207m 
堂ヶ森避難小屋→(190分)弥山→(90分)土小屋→(180分)瓶ヶ森避難小屋

7日目
24.2km 上り:1497m 下り:2062m
瓶ヶ森避難小屋→(180分)伊予富士→(120分)寒風山→(80分)笹ヶ峰→(30分)ちち山→(80分)冠山→(35分)平家平→(110分)高藪登山口
コース状況
【ルート概況】
4日目
概ね歩きやすく、一番藪が鬱陶しいという情報のあった割石東山→青滝山区間も全体からすると一部だけ背丈を越える藪がありました。
最も藪の繁茂が激しかったのは、メイントレイルを外れてうめなごのピークへ向かう部分。足元が全く見えず難儀でしたが、短いので押し切れます。
地形的に厳しいのは、まずは法師山への登り。地図に載っていない巻き道がつけられているので私は避けました。
次に出てくる石墨山方面への分岐から割石峠までの下りがかなりの急で、消耗しました。
枯れていることの多い堂ヶ森避難小屋の水場は利用せず、それとは別の堂ヶ森頂上近くの登山道上でわずかな水流が見つかり、そこから取水することができました。

5日目
11:00ごろから18:00までずっと雨。疲れもたまっていたので小屋で停滞を決め込みました。

6日目
五代の別れから藪が濃くなり、脛~腿丈の足元の見えない笹藪が続きました。
弥山に近づくにつれ歩きやすくなり、弥山から土小屋までは今回のトレイル中屈指の歩きやすさ。ただし、明け方は冷え込みが厳しかったようで、弥山直下の登山道上は凍結が酷くかなり滑りやすい状態でした。
もう少し季節が進むとチェーンアイゼンが必要になりそうです。
土小屋から瓶ヶ森の登山口は足の温存のためUFOラインを歩きました。

7日目
瓶ヶ森避難小屋からUFOラインに戻り、やはり足の温存のため伊予富士の登山口までロード。
伊予富士の登山口から稜線に出るまでは短いながらも悪路。
寒風山も頂上に近づくにつれて険しくなり、ハシゴがかけられている箇所がいくつもあります。
笹ヶ峰を過ぎると細いながらも歩きやすい道が平家平まで続きます。
高藪登山口までの下りも悪場なし。歩きこまれていて快適です。

【気象】
4日目
竜神平避難小屋(1157m) 6:00時点 0℃ 微風
割石東山(1073m) 12:30時点 21℃ 微風
堂ヶ森避難小屋(1576m) 17:30時点 13℃ 微風

5日目
堂ヶ森避難小屋(1576m) 2:30時点 0℃ 8~10m/s

6日目
堂ヶ森避難小屋(1576m) 3:40時点 0℃ 8~10m/s
弥山(1972m) 6:30時点 -2℃ 5~6m/s
瓶ヶ森避難小屋(1725m) 13:40時点 12℃ 3~4m/s

7日目
瓶ヶ森避難小屋(1725m) 4:00時点 0℃ 3~4m/s
ちち山(1855m) 12:00時点 13℃ 微風

【服装】
トップ
・レインジャケット
・薄手ダウンジャケット
・ウィンドシェル
・薄手フリース
・150メリノ長袖Tシャツ
ボトム
・レインパンツ
・薄手ダウンパンツ
・薄手化繊パンツ
・薄手フリースタイツ

寝る時は全てを着こんでちょうど良かったです。
行動中は、朝方だけTシャツ・パンツの上にレイン上下だけを着て少し寒いくらいでしたが、発汗を抑えるには最適なレイヤリングでした。
昼間はレインを脱いでTシャツ・パンツのみでも天気が良かったため汗をかきました。
6日目の朝方は風がかなり強かったためその時だけ薄手の防水グローブを着用。
Google Map
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  • おとな女子登山部

感想コメント

1~3日目の続き。

【4日目】
案の定、1睡もできずに2:30起床。
寒さはしのげていても神経のことはどうにもコントロールできません。
しかし不思議と眠気は感じず、すっきりとした気持ちで歩き出すことができました。
ここからは山の装備で身を固めることができるからでしょうか。
朝露をしのぐためにレインの上下にレッグゲイターをつけ、さらに防水グローブをはめると、自分の身体が外界から守られている安心感から活力が沸いてきます。バッテリー節約のために最小照度の6lmまで下げたヘッデンは足元しか照らせず、狭まった視界がさらに没入感を誘います。

濡れた藪をかき分けて無心で歩き、うなめごの手前で夜明けを迎えました。
日が出てからもガスに巻かれて劇的に明るくはなりませんでしたが、想像していたよりは歩きやすいトレイル。
9時ごろになるときれいに晴れ始め、木漏れ日が差しこんで紅葉の道をさらに輝かせます。
見晴しのいい稜線もいいですが、樹林帯の中のトレイルでも気持ちのいい瞬間はあるものです。

白猪峠を過ぎると、急な登降が連続する白猪山と法師山が控えています。
登って降りてをひたすらこなさなければならない縦走の辛さを象徴するような2座に、出発前から嫌気が差していたのが正直な気持ちです。
しかし、地図上では記載がありませんでしたが、最も勾配がきつい法師山は巻き道がつけられており、それほど歩きやすい道ではなかったものの少し省力できたのは嬉しかった。
というのも、この日の体力的な核心はこの後に出てくるからです。
割石東山から青滝山の区間が。

背丈ほどの笹藪がルートの7割ほどを埋め尽くしているという恐ろしい事前情報を得ていた割石東山⇔青滝山。
時間の制限が厳しい中、藪が濃いからといってペースはそこまで落とせません。
割石東山のピークで気合を入れ直し、ひるまず、ためらわず、今までより速度を上げて進むことを心に決めます。
と、気負って藪に突っ込んでいったのですが・・・
思ったより藪が鬱陶しくない。
確かに背丈を越える笹藪はあったものの、ごく一部だけで、むしろ歩きやすいところが多かったのです。
おかげでペースは上がりましたが、その代りに滝のように汗をかき、上半身だけでなく下半身もびしょびしょに濡れました。
水をがぶ飲みしたいところですが、泊地である堂ヶ森避難小屋で水が補給できる可能性は低く、節約せざるを得ません。
この喉の渇きがなにより厳しく、たまに少しだけ口に水を含み、いまこの世で最もおいしい飲み物だなと独り言をつぶやく。

予定より早く青滝山まで着き、時間に少し余裕がでてきました。
そのために気が緩んでいたのか、相名峠へ向かう下り斜面で、痛めている左足で着地した際に踏ん張れずに大きくスリップ。
その拍子にトレッキングポールが地面にめり込み、グリップにはそのまま滑落の力が加わったため、乾いた音と共に中段からポールは真っ二つに折れてしまいました。
崩れた体勢をなおすこともなくポールを凝視。
折った瞬間から10秒ほどは思考が止まっていたと思います。
今までどれだけポールに助けられてきたか・・・。
足の弱い私にとっては、まだ行程が続くことを考えるとなかなかの絶望感です。
しかし冷静になって見てみると、幸いにも歪に折れたわけではなかったので、藪から適当な枝を拾ってテーピングでぐるぐる巻きにして固定したらなんとか突けるように修復できました。
骨折時の添え木の要領ですね。
時間のロスは10分ほど。
先を急ぎます。

樹林帯から這い出て堂ヶ森の開けた稜線に出ると、日は傾き始めていましたが、明るい内に小屋に着ける安心感に包まれます。
堂ヶ森頂上の直前で補修したトレッキングポールが再び折れたことはもはや気にしないことにしました。
喉の渇きさえなければいい1日の終わりだなと思いながら避難小屋へと下っていると、登山道上にわずかに水が流れている箇所が。
浸み出し、と言った方がいいようなか細そさ。
確かに流れています。
しかし普通なら汲めるようなものではありません。
ためしに使えるかどうかわからないまま持ってきたランニング用ソフトカップを流れに無理やり差し込んでみると、なんと1回に50mlほどの水がすくえました。
縁のプラスティックを軽量化のために取り払っていたのが奏功したようです。
それを浄水用の3Lボトルに繰り返し移し入れ、15分で2L程度の水を確保。
あれだけ悩ましかった今日・明日の水問題が全て解決してしまいました。
かつてないほどの僥倖です。
加えて、すっかり冷えてきた堂ヶ森避難小屋周辺でしたが、1日ずっと晴天だったため日光で温められた小屋内の気温は20℃を超えており、快適そのもの。
夜になれば冷え込むのはわかっていても、しばらくの間は幸せにひたりました。

翌日は雨予報。
疲労もたまってきていたので、この快適な小屋で翌日を休養日として過ごすことに決めるのに時間はかかりませんでした。
起きる時間を決めずに寝れることもまた幸せ。

【5日目】
小屋は朝から濃いガスに包まれていました。
窓からそれを気楽に眺めている自分は恵まれているなと何とはなしに思います。
行程に遅れが出ることはいいことではありませんが、休養日のありがたみには代えがたい。
11時ごろから雨が降り始め、風も強くなってきました。
その前に水汲みを済ませていたので、やることもなく安心しきった気持ちでは、小屋をたたく風雨の音はむしろ眠気を誘います。
小屋に置いてあった池井戸潤『7つの会議』をうとうとしながら時間をかけて全て読み終わるころには夕方に。
明日以降のために早めに寝る準備を整えてマットに横たわりました。

【6日目】
例によってほぼ寝れず、起床時間の2:30を迎えてしまいました。
しかしこの日は石鎚山の登山口である土小屋で高知大丸のサポートスタッフと合流することになっていたので、気にすることもなくいつもより早く準備を整えて3:40には小屋を出発。
4日目に折ってしまったトレッキングポールの交換と、修理に使ってしまったテーピングの補給をスタッフにお願いしていたのです。
大きな妥協ではありますが、この2つはないとトレイルを継続することは難しいとの判断でした。

いつものように明け方の山は濃いガスに包まれており、昨日の風の強さがまだ残っているなか二ノ森へ歩みを進めます。
薄着で行動しているからかやけに寒いなと思っていると、暗いヘッデンの光に照らされて木の枝に霧氷が付いているのがわかりました。
平地では暑さに喘いでいたのに、山はもうそんな季節になったのか・・・。
山は偉大だなと思いました。
やや奇妙な感情ですが。

弥山が近くなってくると紅葉と霧氷が目立つようになってきます。
石鎚では今年の初霧氷が観測された日となったようで、いわゆる三段紅葉を写真に収めようと弥山の頂上には三脚を構えた登山者が溢れていました。
さすがに全国区の山、今まで歩いてきた山域とはけた違いの混雑です。
気温は-2℃ほど。
長袖Tシャツにレインジャケットだけの私には長居するには辛く、ガスが晴れる気配もなかったので、看板で写真を撮ってすぐに土小屋に向けて下り始めました。
登山道も薄い氷でおおわれていて非常に滑りやすく、歩くのに難儀しましたが、標高を下げるにつれて凍結箇所はなくなり、紅葉の最盛期のトレイルを満喫。
最高です。

土小屋に着いて物資の補給を受け、久しぶりに会うスタッフと久しぶりに人との会話。
スタッフとは山荘しらさまで一緒に歩くことになり、身体のことはともかく心は充実しました。
山荘でコーヒーを1杯いただき、別れて瓶ヶ森へ向かいます。
足を温存するために桑瀬峠までは行かず、この日は瓶ヶ森の避難小屋で泊まることにしました。テント場もあるのでテントでも泊まれましたが、回復を優先です。
土曜日ということもあってすこし混みあっている小屋内になんとか寝るスペースを確保。
早めに到着し、5℃を下回る気温ではありましたが潤沢な沢水を使ってようやく洗濯ができ、行程は遅れ気味なものの充実した1日となりました。
加えて、同宿の芦屋労山のパーティーから生卵を一ついただき、夕食の袋ラーメンに入れさせてもらい大幅にクオリティアップ。
決して大げさな表現ではなく、卵一つで別の食べ物のようなおいしさです。
この場を借りてお礼を申し上げます。
ありがとうございます。
最後までいい1日。

【7日目】
今までまったく寝れていなかったので、試しにスリーピングマット無しで寝てみたらなんと1時間ほど寝れました。
よくわからないものです。
ちょっとでも寝れた喜びもつかの間、いつものように2:30に起床し、同宿の方々に迷惑にならないよう小屋の外で準備を整えて4:00出発。
この先2日分の水5Lが追加されたザックは肩にこたえます。

左足首の痛みは回復することはなくずっと続いていたので、この日も温存のために伊予富士の登山口まではロードのUFOラインを歩くことに。
本来ならトレイルを歩きたいところですが、瓶ヶ森から笹ヶ峰までの稜線は昨年歩いたこともあり、アップダウンがとりわけ激しいことがわかっていました。
登りはともかく下りになると足首の痛みが強く、踏ん張れずにスリップしてしまうというのを4日目も繰り返していたので、ここも妥協。
日が上がったころに伊予富士の登山口に到着。
再びトレイルに戻ります。

稜線に出ると前日と変わって風が弱いことに気づきました。
暑くなりそうな予感しかありません。
伊予富士頂上で出発前に水で作っておいたアルファ米をかきこんでいると、早い時間にも関わらず登山者が上がってきます。
さすがに日曜日の快晴の石鎚山脈主稜線。
寒風山への途上でもたくさんの登山者を見かけました。
笹ヶ峰に着くころにはさらに増えており、頂上には10人以上はいたでしょうか。
賑わっている山もいいものです。
ちち山で人と会う約束があったので休憩もそこそこに先を急ぎます。

今回のトレイルに出発する前にお店で知り合いになった登山者の方と、どこかの山で会えるといいねと話していて、ちょうどちち山あたりで合流できそうだったので、正午くらいに頂上で待ち合わせをすることに。
ちち山には早めに着いたので休憩をしていると、狭い頂上にも関わらず続々と人が立ち止まり休憩していきます。
それもそのはず、陽気は最高潮で、Tシャツ1枚でも寒さを感じません。
いい天気です。
ずっと休憩していたい気分。
なごんでいると、約束していたKさんが汗だくで上がってきました。
差し入れは、私の希望もあってタバコ。
1箱かと思ったら5箱もいただいてしまいました。
ありがとうございます。
タバコを吸いながらひとしきり談話を楽しみましたが、実はこの時点で左足首の痛みが限界に近く、歩行は可能でもスリップする頻度が上がっていたので、せっかく差し入れをいただいたのですが平家平を最後に下山しようと思っていますと伝えると、残念ではあるけど仕方ないねと身を案じていただきました。
ちち山から平家平の登山口である高藪まではあと7kmほど。
Kさんと別れ、水を必要な分だけ残して捨てて稜線を冠山に向かって歩き出します。
下山することを誰かに伝えると少し気が楽になりました。

平家平に向かう起伏の少ないきれいな稜線を歩いていると、ふと寂しさを感じました。
もう終わってしまうのか・・・。
うまく表現できませんが、単に計画が途中で終わってしまうことが残念なのではなかったと思います。
平家平の頂上で何をするでもなくしばらく佇み、おもむろに高藪に下山。
スタッフに迎えられ、今回の旅は終わりとなりました。

続きは、細切れでもいいから時間をかけて歩いてみることにします。

フォトギャラリー

井内峠に向かうトレイル中に祀られていた地蔵。雰囲気があります。

4日目の最初のピークは暗闇の中。

木漏れ日のトレイル。これはいい。

急な下りで消耗したので割石峠で大休止。

恐れていた区間の始まり。拍子抜けでしたが。

ストック折れる。

ストック修理する。

堂ヶ森が見えてきました。

奇跡の水場。カップを持っていて良かった・・・。

2泊した快適な堂ヶ森避難小屋。

小説が置いてありました。藤沢周平も捨てがたい。

6日の朝。霧氷がついています。

紅葉も併せて楽しめる。

ガスの中の石鎚。寒い。

ここも快適な瓶ヶ森避難小屋。

ご厚意が沁みる生卵。山では貴重です。

7日目の明け方。いい天気になりそう。

伊予富士で冷たいアルファ米を食べる。

平家平に向かう最後の稜線。

ひとまず終了です。

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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