北米最高峰 Mt.Denali (McKinley)

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投稿者
好日山荘スタッフ
日程
2013年06月01日 (土)~2013年06月17日 (月)
メンバー
天候
コースタイム
6/1 タルキートナ-(セスナで入山)-ランディングポイント(LP)
6/2 LP-(420分)-スキーヒル手前 (C1)
6/3 C1-(210分)-カヒルトナパス(C2)手前にデポ-(60分)-C1
6/4 C1-(450分)-C2
6/5 C2-(180分)-モーターサイクルヒル(C3)
6/6 C3-(310分)-ウィンディコーナー先にデポ-(70分)-C3
6/7 C3-(530分)-ベイスンキャンプ(BC)
6/8 BC レスト
6/9 BC-(240分)-ヘッドウォール(HW)上にデポ-(120分)-BC
6/10 BC レスト
6/11 BC-(540分)-ハイキャンプ(HC)
6/12 HC-(240分)-BC
6/13 BC レスト
6/14 BC-(435分)-HC
6/15 HC-(600分)-山頂-(270分)-HC
6/16 HC-(300分)-BC-(420分)-C1
6/17 C1-(195分)-LP-(セスナにて)-タルキートナ
コース状況
LP-C1: カヒルトナ氷河は広いのでガスに注意。傾斜は緩いが距離が長い。
C1-C2; ルート上にクレバス1カ所あり。ガスに注意。
C2-C3; ガスに注意。旗竿は多めにあった。
C3-BC; 傾斜増す。左からの落石、雪崩に注意。ウィンディコーナー先にクレバスあり。
BC-HC; BC-HW上は急傾斜。上部はフィックスロープあり。HW-HCは細い部分あり。要クリップ。
HC-山頂; HC-デナリパスはトラバース。要クリップ。山頂手前も細いので要クリップ。他良好。
*下山時は落石、雪崩、クレバスが増加していました。要注意!
難易度
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  • おとな女子登山部

感想コメント

見下ろせば、どこまでも続く広い大地。
真昼でもない、夕暮れでもない、柔らかな夜の陽光。
輝く白い世界に、いるのは我々3人だけ。
これ以上高い場所は見当たらない。
あるのは1本のピン。
そうかここか。。。

(この記録は長文になります。ご容赦下さい。)

登山を始めて数年。
「30歳でモンブラン登頂!」を密かな目標として取り組んでまいりました。
決行の年、ひょんなことから行き先変更。
ここだけは行くまいと思っていたアラスカのデナリ(マッキンリー)に、
山岳会の先輩方から行く機会を頂きました。

半年前から準備でバタバタ。
色んな申請や予約を手探りで行い、トレーニングも思うようには出来ず、あっという間に出発の日が!
果たして登れるのか。。富士山でさえ高山病になるんです、わたくし。。。
山のような不安と期待を抱えながら、いざ出発!

乗り換えのシアトルで食料の7割を捨てられ、愕然としながらもなんとかアラスカ州アンカレッジへ到着。買い出しをして、翌朝乗り合いバスでタルキートナへ。
セスナ会社の事務所で手続きをして、街を少しだけ歩き、無料の宿に1泊。

【6/1 入山】
昼過ぎに飛び立つ。
始めてのセスナ、そして雄大なアラスカの景色に興奮。山がどこまでも続いている。広い。
途中バリエーションルートに行っていた2人組をひろうため謎の地に着陸。
すぐ離陸するが目の前は岩壁。ぶつかるー!と思ったら大丈夫だった。
セスナには助走はあまりいらないよう。

いよいよ入山。
LPにて、常駐しているリサに燃料を3ガロンもらう。今回の登山の重要な品だ。
氷河の上でリサはタンクトップで過ごしており、緊張している自分との差に驚いた。
まわりにテントはそう多くはないが、何組かはいるようだ。我々もテントを設営した。
レンタルのソリは、辺りに沢山放り投げてあった。好きなのを選んで自分用に調整する。

日本で十分にトレーニングできなかったので、引き上げの練習をさせていただく。
やってみて始めてわかる注意点多数。
今回は私は真ん中を歩かせて頂くので、誰かが落ちたらすぐに止める!というのが主な役目。
練習後は美味しいステーキを食べて、準備をして眠る。
ガイドの長岡氏に出会う。

【6/2 LP-C1】
いよいよ登山開始。
ソリをしっかり工夫して、緊張の中いざ出発。天気良し。
初日は標高差も少なく楽な行程だ。
はじめは下り。ソリにブレーキ付けておいたので安定している。
空の青、雪の白、岩の茶だけの世界。
夢中で22キロのザックを担ぎ、22キロのソリを引く。
重い。。。
驚くほど広いカヒルトナ氷河本流に出ると、目的地のスキーヒルが見られた。
あそこまで頑張ろう。と思うのだが荷物の重さに苦戦。
見えてはいるがC1に辿り着く気がしない。
途中ガスが出て来て緊張。ここはホワイトアウトすると危ない。
やっとのことでC1到着。
雪壁を作りテントを設営するが、疲れ過ぎていて目眩がした。
荷物を減らそう。そう決意した一日だった。

【6/3-5 C1-C3】
C2手前に荷揚げ。
スキーヒルは辛かったが、思ったより近かった。
天候は曇り時々雪。
まわりの皆はストームがくると言っている。

翌日はデポ品を回収してC3へ。
C2は風が強いので泊まるには適していないそうだ。
が、しかし。
予報通り雪が降り出した。
周りの景色は全く見えずどこを歩いているのか分からない。
トレースは消え、道を外すとラッセル。旗竿(ワンド)も見え難い。
仕方なくC2でテント設営。急げ。

翌朝はすごい積雪。60cmは積もったか。無理せず泊まって良かった。
降雪は少なくなっていたので行動。
ワンドを慎重に刺しながらC3へ。
なんとか到着。
今まで人は疎らだったが、ここは賑やか。
一安心。CMC(トイレBOX)の中身を指定されたクレバスに捨てた。
夜中久々に晴れた。
フォーレイカーが美しい。

【6/6-8 C3-BC】
ウィンディコーナーまで荷揚げ。
風は穏やかだが傾斜はきつい。はじめての4000m越え。ゆっくり登る。

翌日BCへ。
山側の落石に注意して進む。
デポ品を回収してからキャンプまでは大した距離ではなかったが、
高度のせいか大変きつかった。
BCでは日本国旗を見たり、レンジャーのテントがあったりで、
いよいよ来たな。という気分になった。
1日休んで高度に身体を慣らす。

【6/9-13 ヘッドウォール(HW)を登りハイキャンプ(HC)へ】
今回の行程で一番の急斜面であるHWを登る。
見た目は大したことないのだが、高所ということもあり、登ってみると急である。
上部3分の1にはフィックスロープあり。アッセンダーを使い登る。クレバス1カ所あり。
HWのすぐ上に荷物をデポしBCへ戻る。
思いのほか疲れたと思っていたら、夜に激しい頭痛に襲われた。
アスピリンとダイアモックスを服用し就寝。
なんとか治って欲しい。翌日はレスト。

ついにHCに上がる。
ウエストバットレスは歩き易いが、HWを登った後だと疲れて足が前に出ない。
次第に天候悪化。とにかく寒い。しかし風をよけてゆっくり防寒着を着られるところもない。
寒い、寒い、早く!と独り言を大声で言いながらやっとHCに到着。
HCは廃墟のように人がおらず、レンジャーともう二組くらいであった。明日は荒れるようだ。
レンジャーが全てのテントをまわり、食料と燃料そして体調の確認を行っている。心強い。

翌日は強風でテントが揺れる。
アタックは無理なのでレストにする。
午後2時頃のんびり寝ていると、明日はもっと荒れるという情報が入る。
レストが長引くと燃料がギリギリである。
しかし強風の中の下山も心配だし、昼寝途中だったため動きたくない。
皆で話し合う。
下山を決意。
17時、下山開始。21時BCへ戻る。

BCでは多くの方が見守ってくださっていた。
夜にぐったりして下山したからか、コーヒー入れるよ!と誘って下さった日本チーム。
これ飲みな!とスポーツドリンクをくれたスペインチーム。
お湯を沸かしてポットに入れて、色々な飲み物とともにテントまで持ってきてくださったアメリカチーム。
優しさに感動。皆、お互いの登頂を祈ってくれているんだなぁ。
翌日はレスト。天候回復を待つ。稜線を見上げると雪煙が上がっている。下山して正解だった。

【6/14-15 BC-HC-山頂-HC】
いよいよ山頂アタックが迫る。
予備日はもうない。天候良し。
皆、このチャンスをものにすべく、行列を作ってHCへ上がる。
HWは渋滞し、下降用ロープで登り始める人もいた。
我々はゆっくり登る。HCに荷物を少しだけ置いておけたので3度目が一番楽だった。
順応が上手くいっているのかな。
HCは前回の荒涼とした雰囲気はなく、多くのテントで賑わっている。
いよいよ明日アタック。
レンジャーや周りのチームと情報を交換し、デナリパスに陽が当たる朝9時の出発にした。

アタック当日。
荷物を本当に必要なものだけにして、いざ出発。
デナリパスへ向かう斜面には先行者たちが既に行列をなしている。
陽は少しだけ差しており、それほど寒くはない。
やや斜度のある斜面のトラバースとあって、レンジャーが設置してくれている支点にロープをかけながら進む。途中、やや急な場所で私のアイゼンがはずれた。オーバーシューズを履くと本当にはずれ易い。この遠征で皆一度ははずれている。アイゼンとの相性は要チェックだ。
リーダーに確保してもらい落ち着いて着け直す。渋滞させて申し訳ない。

デナリパスからの斜面はそこまで急ではない。
一歩一歩ただ前に進む。ガスで辺りは見えない。
地形図を確認しつつ、休憩しつつ、ゆっくり。ゆっくり。
次第にガスが晴れてきた。
ようやく楽しく登れる。そう思って歩みを進めていると、暖かくなってきた。
極厚の防寒着を背負っているのがバカらしく思えるほど暑い。
日差しと雪からの照り返しでクラクラする。

いつもはペースの速いリーダーの鈴木さんも今日は歩みが遅い。
この暑さのせいか。それとも高度障害か。
気にしながらも声はかけず、一歩一歩前に進む。

フットボールフィールドに着くころにはリーダーの不調は明らかだった。
数歩あるいては止まり、呼吸を整え、また歩き出す。その繰り返しだ。
(私は遅いので丁度良いペースだったが、、、)
気付けば最後尾になってしまった。
でもいいんだ。白夜だから時間はある。
ゆっくり。ゆっくり。一歩ずつ。
本人が言い出すまでは私も小林さんも何も言わなかった。
鈴木さんは苦しくても諦めない人だからだ。
普段の山行を共にすることで信頼関係が出来ていたように思う。
このままでいい。辿り着けるはずだ。
あとひと登りで山頂稜線だ。

そんな時、仲良くさせて頂いていたスペインチームが登頂して降りてきた。
彼らはとても陽気で、いつも「ぼちぼち」(スペイン語で「ピアーノピアーノ」)と声をかけてくれていた。今日も勿論そうだ。「ゆっくり行け、必ず登頂できる、もうすぐだ。」そう言いながら彼らのリーダーは鈴木さんの肩をポンと叩いた。そして鈴木さんも相手の腰をポンと叩いた。
言葉は通じなくても、リーダー同士分かり合えることがあるのだろう。
苦しい時この励ましは嬉しいだろうなあと思うと、何だか感動してしまった。

その後、少しペースが上がり山頂稜線に立つ。
思いの他細い。気を抜かず、慎重に進む。
ここまでくると、すれ違う登頂後の人々とお祝いの言葉が飛び交う。
「おめでとう!」「ありがとう。君たちももうそこだ。おめでとう。」

次の旗竿が山頂か?そう思い、皆で肩を組んで歩く。
1、2、3、4、5歩、、、違った。
もうしばらく進むと少し広い場所の先に何か見える。
もしかして、もしかして、、、、あったー!銀色のピンだ。
もう一度肩を組み三人で進む。
1、2、3、4、、、、、、40歩!到着ーーーーー!ピンにタッチ。
山頂にはだれもいない。私たちだけだ。
風もなく、この2週間常に見上げてきたMt.フォーレイカーがはるか下に見られる。
ひゅぅ〜最高だ!
荷物をおろし、暫し周りを眺め、記念写真を数枚撮った。
みんなのメッセージが書かれた富士山手ぬぐいと頂いたお守りは、どんなに軽量化しようとしても置いてこれなかった。ほんとに登頂できたのは行かせてくれた皆様のおかげです!

高所は身体に悪いので、早々に下山開始。
夜の太陽のせいか、雪面が何色にも輝いていて、
うわぁ〜きれい〜と歩きながらその世界に浸ってしまった。
デナリパスだけは疲れているが集中しろと自分に言い聞かせて通過した。
無事テントに戻ったのは夜中の1時頃だった。
まず暖かいものを飲んで、落ち着いたのち就寝。

【6/16-17 HC-BC-C1-LP】
翌日から下山開始。
ウエストバットレスの下りから見える景色が一番好きだったので、名残り惜しみながらBCへ。
休憩して、荷物を回収して、とりあえず今日はC3まで下ろうと計画していたら、
お世話になったレンジャーのサティスさんがC1まで下った方が良いという。
遠いなぁと思いつつも下ってみたら行けそうだったので、頑張ってC1まで下った。
(途中落石や雪崩の音が何度か聞こえた。)
登りは天気が悪くて何も見えなかったC2付近も、今日は快晴。
カヒルトナ氷河はお世話になっているロストアローさまのカタログの景色にそっくりでした。

2時間ほど仮眠を取って翌日LPへ。
雪が溶けてクレバスは増えていたが、ルートが明瞭だったため問題なく通過。
途中、赤いセスナが見えたときには、いよいよ帰るんだという気分になり嬉しかった。
日本でもそうだが、山に行くと街の良さも見えてくる。
LPで埋めていたビールを回収し、乗り場(これが遠い。騙される方多数。)まで登り、乾杯〜!
ここまでくれば安心だー!ビールが最高だ!
スペインチームの皆さんも「やったね!おめでとう!」とお互いを讃えていた。
予定より早めに来たセスナに乗り込み、タルキートナへ。
セスナから見たアラスカの大地は忘れません。

タルキートナは予想外の32度。暑い。町中の花が咲いていた。
日本人の方々と飛行場でお別れをし、まずお風呂へ!
街で名産品を食べ、翌日はレンジャーステーションに下山報告をして、
乗り合いバスでアンカレッジへ移動した。
街を散策して日本へ。
成田空港で、期間中に誕生日を迎えていた鈴木さんにささやかなプレゼントを渡す。
体力があれば山中でケーキでもと思っていたが、余裕はなかった。喜んでくれて良かった。

いつもお世話になっている大好きな先輩方と行けて本当に良い旅となりました。
決して難しくはないルートですが、こんなに山に浸ったことは初めてだったので、
人生において重要な経験になったことは間違いありません。
会社の皆様、家族、友人、応援して下さった皆様に感謝しております。
本当にありがとうございました。
大成功ー!


*行かれる方がいらしたら、乾燥がひどくて指先が割れるので、ハンドクリームとのど飴は必須です。
これがないと死活問題でした。ご参考までに。

フォトギャラリー

ランディングポイント

お天気ボード

Mt.ハンターに見送られながらキャンプ1へ出発

C2付近はストーム。何も見えない。

キャンプ3とMt.フォーレイカー

ウィンディコーナーを過ぎた辺り。流れる氷河とクレバス。

レスト日は乾燥日和♪

世界の果てという名所

ベイズンキャンプとMt.ハンター

HWへの急登とフィックスロープ

ハイキャンプへ

デナリパスへ

不思議な地層

フットボールフィールドから山頂を見上げる

山頂稜線

登頂!会社の皆様ありがとうございました!

山頂のピン

一番好きな場所

白夜の下山

セスナだ!帰れるぞー!

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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