湯俣ブルーの伊藤新道
- 投稿者
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るんちゃん(おとな女子登山部)
浦和パルコ店
- 日程
- 2024年09月24日 (火)~2024年09月25日 (水)
- メンバー
- 浦和パルコ店 西山
- 天候
- 1日目→晴/曇 2日目→晴
- コースタイム
- 【1日目】高瀬ダム(100分)名無避難小屋(50分)湯俣山荘(150分)ガンダム岩(80分)二ノ沢出合
【2日目】二ノ沢出合(60分)ガンダム岩(90分)湯俣山荘(50分)名無避難小屋(90分)高瀬ダム
- コース状況
- ・駐車場から高瀬ダムまでタクシー利用。途中崩落箇所あり、その間はヘルメット着用の上徒歩で通行します。1.4kmを数分歩いた後、再びタクシーでダム上部まで行けます。ヘルメット貸出あり。タクシーは朝6時から16時まで運行。帰りは高瀬ダムの公衆電話(10円)で迎えを呼べます。16時過ぎると断られるようです。歩くと約1時間。湯俣付近は電波悪く繋がりにくいです。1区間目は1台1000円、2区間目は1300円、同乗者いれば割り勘できます。
・伊藤新道を渡るには湯俣山荘で通行証を記入しなければなりません。タブレット端末で代表者のみが入力します。入力後に山荘の方にレクチャーを受けると出発できます。受けた証にシールを貰えるのでヘルメットなどに貼りましょう。
・湯俣山荘のパンナコッタは事前予約が必要。山荘で直接オーダーできます。
・渡渉回数は10回ほど、股上がほとんどでしたがたまに腰まで浸かりました。スクラムしなくても何とか渡れました。
・ガンダム岩は下の川床を歩けました。その先の左岸の桟道は壊れて通行不可なので右岸へ渡渉する必要あり。
・壊れた第5吊橋は自然に近い形を残すため敢えて復旧しないそうです。
・水は本流ではなく支流のものを濾過して使いました。ガンダム岩を越えた先の左岸に小さな沢がいくつか流れているのでその辺りで汲みました。
・ビバーク箇所は落石の心配の無い草付きのある二ノ沢のちょうど手前、右岸側の平らな場所にて。
- 難易度
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感想コメント
ラストフロンティア・伊藤新道を歩いてきました。湯俣山荘もオープンし、秘境といわれる割には多くの人が行き交っていました。伊藤新道を歩いて三俣に抜け北アルプスを縦走したり、北鎌尾根に挑戦する人もいれば、川を挟んで向かいの晴嵐荘で温泉を楽しむこともできます。ハードな隣の竹村新道から下ってくる人もいました。我々は初心者なので上には抜けず途中まで行ってビバーク。渡渉を何度も繰り返し、核心のガンダム岩を無事通過、野営も楽しんだので、距離は歩いていませんが満足のいく山行となりました。
高瀬ダムからは裏銀座へ向かう人が多く、出発時に左の湯俣方面へ行くのは私達だけでした。暗く長いトンネルを2本抜けて、ダム沿いの林道を延々と歩きます。トンネルは大型トラックも通過するので、大きな音を立てながら迫り来るのはなかなかの恐怖を感じました。始めのうちはバックに大きな針ノ木岳を見ながら、湯俣に近付けばラスボス感漂う槍ヶ岳の北鎌尾根が見えてきます。距離は長いですが、そんな景色を見ながら飽きることなく歩けました。
湯俣山荘に着いたらまずは通行証を入力し情報を入手します。川の深さや吊り橋の復旧状態、水場などを確認し、ついでに下山後のパンナコッタも予約しました。ちょうど帰ってきたパーティがいたので聞いてみると、渡渉は股下くらいとのこと。沢登りでも渡渉はそれほど経験はないので、股下の深さだとしても覚悟はしていました。不安はあるけどとりあえず行ってみるしかない。楽しみ半分、緊張半分で出発しました。
吊り橋を渡って湯俣川に入り、始めに右岸の断崖を進みました。ただ途中で道は無くなったので一旦戻って振り出し、そしてこの日最初の渡渉。思っていたより足元は安定していたので対岸を見据えたまま渡り切りました。足元を見ると不安になるので、行く先を真っ直ぐに見つめて進むのがおすすめです。
その後も右岸、左岸と渡渉を繰り返して渡渉にはだいぶ慣れました。流れがきつい場所では仲良く手を繋いで無事に通過。単独の方もいましたがやはりパーティだと心強いです。絆も深まります。
渡渉以外は沢歩き、ウォーターウォーキングの要素が強く、ロープを出すことはありませんでした。狭い断崖を歩く場合も、持ち手となる岩はしっかりあり、高さのある箇所には残置スリングやボルトがあり安心して通過できます。
核心のガンダム岩は増水時は上部のホチキス足場を使って登下降しなければいけないのですが、今回は下側の川底を歩いて通過できました。通過後も渡渉を数回こなせば緊張の場面がようやく終わります。辺りはいつの間にか赤茶けた岩に変わっており、ミニグランドキャニオンを彷彿させる世界が広がっていました。
そろそろビバーク場所を探す時間ですが、平らな場所はあってもすぐ上は岩盤が押し寄せていて落石が心配です。二ノ沢付近が草付きもあり比較的安定していたのでこの辺りに張りました。伊藤新道は焚き火は禁止ですが至る所に痕跡がありました。ごみもたくさん捨てられていました。拾えるものは回収しましたが人が多く入っている証拠です。ラストフロンティアは時間の問題かもしれません。
この日の夜は星は見えませんでしたが寒さはなく、ツエルトから入る隙間風も心地よく感じました。沢ビバークは濡れたままは厳禁、乾いたウエアに着替えさえすれば快適に過ごせます。下半身は全て替えてフリースを着込めば、寒がりの私もへっちゃらでした。
翌朝は快晴、最高のお天気の中目覚めました。早立ちする必要もなかったので、ゆっくり支度をして贅沢な朝を過ごしました。下る準備に取りかかっていると、上から下から人がやって来て一時賑やかになりました。昨日より一層青い湯俣ブルーの中、滅多に見れない貴重な光景をじっくりと目に収めながらゆるゆると下ります。昨日ちらっとしか見れなかった噴湯丘の傍まで近付き、熱く黒々としたお湯に触れながら様々な角度から観察しました。足湯も楽しむとお腹が空いてきたので、湯俣山荘目指して伊藤新道の旅を終えました。
湯俣山荘に到着したら早速ランチをいただきました。チリコンカンとスープ、もちもちのおやきをあっという間に平らげ、デザートには噴湯丘を模した真っ白パンナコッタ。崩れないようガラスのケースに入って登場したので期待値は上がりまくり。一口食べてそのクリーミーさに驚きました。下山後のお楽しみとしておすすめです。
お腹が膨れた後は最後の長い林道歩き。満腹で遅くなりタクシーの最終時間ギリギリとなってしまいました。乗れなければ1時間ばかりプラスで歩くだけですが、登山口にある七倉山荘のお風呂に入りたかったのでタクシーに乗って正解でした。七倉のお湯は17時まで。湯俣川の天然温泉と同じく、軟らかい硫黄のお湯でした。
初めての伊藤新道にしては贅沢すぎる旅を満喫しました。来年はさらに奥の秘湯まで足を延ばし、槍ヶ岳や北アルプスの展望も眺めてみたいです。縦走はきつそうなのでご勘弁、そしてまたパンナコッタを食べに沢を下りたいです。
【使用ウエア】
(上)ファイントラック/ドライレイヤークール+ミレー/ヘザーメッシュクルー+レインジャケット
(下)ファイントラック/フラッドラッシュタイツ+ノースフェイス/マグマショーツ+ネオプレンソックス
○下半身の着替えは絶対に必要です。寝巻きはメリノウールタイツにミレー/ティフォン50000ストレッチトレックパンツを重ねました。替えのメリノウールソックスも大事です。
【使用ギア】
○渡渉用シューズはキーン/ニューポートに沢用ネオプレンソックスを使用。かかとストラップとバンジーコードのあるサンダルなので強い流れにも耐えますが、砂が入るのが面倒でした。アッパーはオープンになっていない水抜けの良いシューズが適しています。三俣に上がり縦走する場合は、沢パートは荷物にならないウォーターシューズが良いですが、沢の往復であれば終始ラバーの沢靴が歩きやすいです。慣れない方は沢靴が安心して歩けます。
湯俣まではスポルティバ/TX5ローを履きました。
○硫黄臭が付くと聞いていたので、寝床はテントではなくツエルト(ファイントラック/ツエルト2ロング)を立て、インフレーターマット(サーマレスト/プロライト)を敷いて3シーズンダウンシュラフ(イスカ/エア450)で寝ました。
○浄水器(ソーヤー/マイクロスクィーズフィルターSP2129)
○ザック(ミレー/プロライター30+10)
○軽量化のため登攀具は最小限にしました。懸垂やビレイする場合はムンターヒッチすることにしてデバイスは持ちませんでした。支点用の安環ビナ+120スリング、ロープ25m。
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・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。