アルパインクライミング登竜門!谷川岳 一ノ倉烏帽子岩南稜ルート

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投稿者
好日山荘スタッフ
日程
2012年10月10日 (水)~2012年10月10日 (水)
メンバー
天候
曇り時々晴れ時々雨
コースタイム
ロープウェー駐車場-一ノ倉沢出合(60分)
一ノ倉沢出合-南稜テラス(120分)
南稜テラス-登攀終了点(270分)
登攀終了点-一ノ倉岳山頂(180分)
一ノ倉岳山頂-西黒尾根-ロープウェー駐車場(240分)
コース状況
南稜までの取り付き、テールリッジはつるつるとした滑りやすい岩質なので、やさしめに見えても慎重に歩く必要があります。
南稜ルートは岩も乾いており、滑るようなところはありません。
ただし、ルート全般に岩がもろい箇所が多数ありますので、それを見極めながらの登攀となります。
また、終了点から一ノ倉岳山頂までのツメはしみ出し多数の岩と生い茂った草で非常に滑りやすくなっています。特に5ルンゼの頭は岩が極端にもろく、確保も難しいため登攀以上に神経を使います。
できれば終了点から5ルンゼの頭を越えるまで、クライミングシューズで登ることをお勧めします。なお、5ルンゼの頭山頂までは落ち着いて靴を履き替えるような場所はありませんのでご注意。
難易度
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感想コメント

「近くてよい山、谷川岳」
都心からのアプローチもよく、岩と雪渓で織りなすその山容はアルプスにも引けを取らない谷川岳のお隣「一ノ倉岳」
劔岳や穂高岳と並ぶ日本三大岩場に数えられる、まさにクライミングのメッカとなっています。

そんな一ノ倉岳を目の前にし、はじめてのアルパインクライミングに挑戦してきました!!!
今回登ったのはアルパインクライミング登竜門、「南稜ルート」です。

●アプローチ
谷川岳ロープウェー駐車場を出発し、一ノ倉沢出合までは林道歩き。
出合からは沢をつめます。岸の巻き道などの踏み後は明瞭。
ヒョングリの滝を過ぎた辺りで懸垂下降で本谷に降り、対岸に渡ります。(50m×2本でめいっぱい)
ここからはやや簡単なテールリッジの岩登り(鎖のない鎖場程度)が始まります。慎重に慎重に…
テールリッジをつめ、南稜の基部「南稜テラス」に出る直前のトラバース箇所は、滑りやすく、手がかりも貧弱なためよりいっそうの慎重さが求められます!滑ると転がって100mしたの本谷まで真っ逆さまです…
早速アルパインクライミングの洗礼を受け、冷や汗をかかされながら南稜テラスに到着です。
6畳ほどの広さがあり、今日の登攀準備をすべてここで整えます。(この先落ち着いてザックを下ろせる場所はありません)

憧れていた一ノ倉の岩を目の前にし、岩に触れ、そこから上を見上げ、感無量。
それと同時に亡くなっていったかつてのクライミング黎明期を渡り歩いてきた先人たちへの敬意がこみ上げてきました。
「どうか無事に登らせてください」
天候は曇り。山頂付近には来るものを阻むように厚いガスが立ちこめています。
時折、出合から吹き上げてくる強風にあおられその全貌があらわになると、大迫力で我々を圧倒してきます。
すさまじい岩の存在感がそこにはありました。

●1ピッチ目(Ⅳ)深沢さんリード
右上方のチムニーを目指し「く」のように登る。
●2ピッチ目(Ⅲ)田村リード
ホールド豊富なフェイス。ただし登りやすいホールドだけを求めていくと違う方向に行ってしまうので注意が必要。
●3ピッチ目(Ⅰ〜Ⅱ)草付き
なんてことはない歩き
●4ピッチ目(Ⅲ)田村リード
上方に見えるハングを左に巻く。ホールドもしっかりしているので安心。
●5ピッチ目(Ⅳ-)深沢さんリード「馬の背」
左がすっぱりと切れ落ちた高度感のあるピッチ。ただしホールドは豊富なので爽快感大!
●6ピッチ目(Ⅳ+)深沢さんリード「核心」
垂壁に近い傾斜の強いフェイス。実際に角度がきついのは最後の3m部分。フリークライミングのように体を思い切って横に振るなどのムーブが必要。
●7ピッチ目(Ⅰ〜Ⅱ)草付き
草と岩が混じった歩き。どちらもかなり滑りやすいので注意が必要。クライミングシューズで歩く方がよい。

●終了点から一ノ倉岳山頂
南稜終了点である烏帽子岩を過ぎ、5ルンゼの頭を越えて一ノ倉岳山頂を目指します。
が、この最後のツメが今回の最大の難所でした。
かなりきつい草付き、濡れ岩の斜面(30度〜45度?)を延々と登っていきます。一度転ぶとそのまま本谷まで約800m、真っ逆さまに滑落します。
途中で一息入れるような箇所はなく、ただただ斜面を詰めていかなければならないこのツメは、アプローチとクライミングで疲れた体にはかなり辛いものがあります。
足の置き場を慎重に選ばないと濡れた岩や茂った草ですぐに滑ります。そして絶対に転んではいけないというプレッシャーが重くのしかかってきます。
そして精神的にもぎりぎりに追い込まれた挙げ句に到達するのが「5ルンゼの頭」です。
20m程の岩峰ですが、岩がとんでもなくもろいのです。ロープで確保しながら登りたいのですが支点もないためフリーでコンテで登ります。岩がもろいので手で岩をたたいて確かめながら慎重に慎重に登ります。当然足の置き場にも最新の注意が必要になってきます。
もちろんつかんだ手がかりがぼろっとはがれようものなら地面に墜落、そして急斜面を転がり谷底に真っ逆さまです。
生きた心地がしないとはまさにこの時でした。死ぬ気で岩にしがみつき、少しずつ攀じります。
5ルンゼの頭を抜けると今度は強烈なヤブ漕ぎ。背の丈程あるクマザサを分け入っていくと谷川岳から一ノ倉に縦走する登山道に出ます。
この時の安堵感は計り知れませんでした…
目指した一ノ倉岳山頂で記念写真を撮り、時間もないので余韻に浸る間もなく即座に下山開始しました。
駐車場に着いたのはとっぷり日も暮れた頃でした…

クライミング等の技術はもとより、体力、観察力、判断力、精神力、最後まであきらめない強い意志、自分の総合力を試されているかのような山行になりました。
このような冒険的要素の強いアルパインクライミング、もっともっと突き進んでいきたいと思います!

フォトギャラリー

まさに魔の山

時折見せる全貌。かっこいい!

紅葉も少し楽しめました

ヒョングリの滝を過ぎ本谷まで懸垂下降します

テールリッジにはいりました

この辺は滑りやすい

南稜テラス!支点が…

馬の背ピッチから終了点をあおぐ

最後の核心部分!ロープが交差してしまいました…

この山頂からの景色、忘れないぜ!

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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