谷川連峰 湯檜曾川 東黒沢 白毛門沢 遡行

投稿者
田渕 幹敏
日程
2013年08月29日 (木)~2013年08月29日 (木)
メンバー
単独
天候
コースタイム
東黒沢橋 ⇒ (10) ⇒ 入渓点 ⇒ (60) ⇒ ハナゲノ滝 ⇒ (20) ⇒ 白毛門沢出合 ⇒ (55) ⇒ 6m滝 ⇒ (30) ⇒ タラタラのセン 巻道入口 ⇒ (45) ⇒ 大ナメ滝 ⇒ (40) ⇒ 大岩 ⇒ (30) ⇒ 二俣 ⇒ (170) ⇒ 白毛門 山頂 ⇒ (160) ⇒ 東黒沢橋

※ 単位は分。
※ 大休止は含まず。
※ 途中休憩及びルートミスの時間含む。
コース状況
白毛門登山口の駐車場から入渓点までは明瞭な踏み跡がある。
東黒沢橋の両岸にトレースがあり今回は奥(右岸)から入った。
手前の方が近いそうだが、確認はしていない。

東黒沢内は比較的安定したコンディション。
ハナゲノ滝は右岸を快適に登れるが、上部の小さく張出した岩をトラバース気味にパスするヶ所は少し気を遣うので注意。
右岸のブッシュ帯に巻き道もあるそうだが未確認。

白毛門沢出合から詰め前の二俣までは、多くの滝が続く気持ちの良い渓相。
沢床や岸壁は比較的安定しており、滝の登攀も難しい物は少ない。
巻き道も多くは明瞭。
タラタラのセンを含む三連瀑の手前にある6m滝は、左岸から直登出来るが上部の一手が手足共にかなり細かい。
少しでも不安がある場合は、上級者のリードでフォローする方が良い。
右岸の灌木を頼っても登れる様だが、ルートは確認していない。
タラタラのセン上段二段は右岸を高巻くが、ルンゼ通過後の踏み跡が不明瞭。
下降点を間違えると、高度を上げ過ぎてしまい沢へ戻るのが危険になる場合があるので注意。

二俣後の渓相は穏やかだが、沢が枯れ始めると傾斜が強くなる。
特に登攀困難なヶ所は無いが、ぬめった急傾斜はフリクションが悪く厭らしい。
条件次第なのだろうが詰めも存外気を遣う印象で、スリップにはよく注意したい。
詰めの最後は遡行図のルートを外れた為確認していないが、山頂からの様子では踏み跡を外さなければ藪漕ぎは軽そう。

下山に使った白毛門の登山道は整備されており、特に悪いヶ所は無い。
一部鎖場があるが容易。
フェルトソールでの下山は疲れるかもしれない。
難易度
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感想コメント

白毛門沢は美しいナメ滝を数多く擁する名渓で、広く開けたその渓相は空へ向かう様な爽快な遡行で我々を魅了してくれます。
滝の登攀難易度はそれ程高くないですが、殆どの滝が直登出来るので気持の良い登りが楽しめます。

実は今回、二年越しで計画していた槍ヶ岳 北鎌尾根 ソロを予定して連休を確保していたのですが、気圧配置は非常に悪く予報も最悪。
昨年に引続き諦めざるを得ませんでした。
ところが、全体に天気の悪い連休中に一日だけ谷川岳付近が晴天になる予報が!
急遽、以前から行ってみたかった白毛門沢に出かける事にしたのです。

前夜に横浜を発ち越後湯沢の駅でステーションビバーク、翌日の始発で土合へ向かいました。
当日は予報通り天候も良く、水もそれ程冷たくなくて気持の良いコンディション。
実に爽快な遡行が楽しめました。

白毛門沢には特筆すべき魅力が幾つかあります。
入渓点が近く殆どアプローチを必要としない事、下山に人入りの多い安定した登山道が使える事、スッキリと気持ち良くダイレクトに山頂に出られる事、小滝やナメ滝の多い美しい渓相である事、そして豪雪地帯らしい広く開けた沢を空へ向かって遡行できる事!
なるほど、人気が高いのも頷けます。

この遡行の終盤で、僕はミスをしました。
詰めで沢が枯れ始めた辺り、ここ数日の悪天の為か急なスラブ帯はかなりぬめっていて少しだけ厭らしい登りが続いていました。

過ちを犯す時と言うのはそんなものなのでしょうか…、その瞬間の心理状態を僕はよく覚えていません。
いずれにしても、右手をはしる遡行図では辿らない沢筋へルートをとる選択をしたのです。
恐らく、そちらの方が状態が良いと判断したのだと思います。
気付いた時には、キツイ傾斜と非常にぬめった脆い岩肌に囲まれていました。

登攀難易度からすれば窮地と言う程では無いのですが、ソロの遡行では小さなリスクが命取りになる事が多々あります。
例えば手がかりにしている草が抜けたり足もとの岩が動いたりと言った僅かなミスでも、今の状態で起こったら滑落を止められないでしょう。
内包するリスクが高いと判断して、山頂ではなく少し先へ見える灌木帯へ向かう事を決めました。
勿論それなりに気を付けていましたから、スキル的には自分が落ちない壁である事は分かっていました。
それでも、灌木帯に着いてホッとした時にかなり疲れている事に気が付いて驚いたのを覚えています。
知らない内に、やはり緊張していたのでしょう。

そこからは滑落の心配がなくなって一安心。
地形と方角はよく分かっていましたし、下山道は安定していますから時間はそれ程気になりません。
あとは体力勝負、背丈を超える石楠花と熊笹のブッシュを一時間ほど藪漕ぎしました。

沢登りには決められたルートがある訳ではありませんから、状況をみてより良いと思われるルートを選択するのはむしろ当然の事です。
今回の僕の過ちは、その選択が間違っていた事。
そして何よりも、その選択が起こり得るリスクを事前に予測し吟味した上での判断では無かった事です。

よくあるミスと言ってしまえばそれまでですが、そこから学ぶ事は絶対に必要です。
事故とは小さなミスの積み重ねが大きなミスを生んだ結果であり、純粋にワンミスで起こる事故はそれ程多くないのではないでしょうか。
リカバリのスキルはそれはそれとして身に付けるべきものですが、やはりノーミスを目指す意識は大切であろうと僕は考えます。

そう言った意味では今回の遡行は学ぶ事の多いものでした。
ミスそれ自体は勿論、ミスをするに至った心理状態はどの様なものだったのか、リカバリは適切であったか、ミスのリカバリに自分のスキルは充分であったか、それぞれの対策はどうすべきか、その他色々な事を考えさせられました。

この様な反省点もまた、自分を成長させてくれるでしょう。
得る物の多い良い山行だったと思います。
白毛門沢、いつか是非また訪れてみたい素晴しい渓でした。

フォトギャラリー

入渓点で装備を装着。白毛門沢はアプローチが殆ど無く、入渓が非常に楽だ。

途中で出会った蛙。ホールドにしようと指を入れた窪みにいたのだが、岩と一体化していて気付かなかった。カジカガエルだろうか!?

鳥の糞に擬態していた蛾。

ハナゲノ滝。名前に似つかわしくない、美しいナメ滝。

上部は結構キツイ傾斜がある。

恐らくタテハチョウの一種とセセリチョウ。鳥の糞に集まっている。

6m滝。左岸を直登すると上部の一手が細かいので注意!

6m滝の落ち口より。足のある辺りのすぐ下が核心。

蛾だろうか蝶だろうか?時々見かけるが種類は分からない。

タラタラのセン三連瀑上段二段の巻道。ルンゼを超えると踏み跡が不明瞭になってくる。

巻道途中のルンゼ手前より、タラタラのセン。

大ナメ滝の手前。美しい風景に暫し休憩。

大ナメ滝。左岸から登り始め、中腹のバンドで右岸へ渡った。

大岩。左側から回り込むと不快な藪の流れになる。右手から遡行しよう。

山頂が見えて来た。天気は最高!

詰め上部の傾斜は結構キツく、ぬめっていると厭らしい。この辺りから遡行図通りではないルートに入った為、暫く写真が無い。

無事に灌木帯へ到着。あとはひたすら藪漕ぎ!

白毛門の山頂。ピッケルと草鞋の指道標が素敵だ!

右の尾根が白毛門の登山道。

土合駅に着くと電車は二時間待ち。居心地の良い待合室で暫しの睡眠を楽しんだ。

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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