南アルプス 三伏峠へ ~ 雪深き森を訪れる

このエントリーをはてなブックマークに追加
投稿者
伊藤 岳彦
横浜西口店 店舗詳細をみる
日程
2013年12月11日 (水)~2013年12月12日 (木)
メンバー
単独行
天候
コースタイム
▼ 12月11日(水) 曇時々雪
鳥倉林道駐車場(270分)三伏峠

▼ 12月12日(木) 雪
三伏峠(240分)鳥倉林道駐車場
コース状況
■ 登山口から峠まで〇/10の標識があり、目安になります。
■ 標高2,300mを越えると、積雪量は膝下くらいでした。
難易度
Google Map

より大きな地図で 烏帽子岳 を表示
  • スタートナビ
  • おとな女子登山部

感想コメント

日本三大峠の一つ、南アルプス・三伏峠(2,580m)。
塩見岳登山のベースとして夏はひとときの賑わいをみせるこの峠も、昨今の積雪期は訪れる人も稀なとても静かな峠へと姿を変えます。
深田久弥曰く「この峠からの塩見岳は天下一品である」と評しているように、塩見岳との絶妙な距離感は確かに素晴らしいものですが、塩見岳の展望台としては、三伏峠の東に位置する烏帽子岳(2,726m)の方が、谷を隔てて高度感が増す分、より迫力を感じられるように思えます。
日程と体力に余裕のある方はやはり塩見岳を目指すべきですが、烏帽子岳のみを目指す登山も、個人的には積雪期1泊2日の南アルプス入門として大変貴重であり、手頃なラッセルを経験できるルートとして密かにオススメしたいところです。
今回も烏帽子岳まで行くつもりでしたが、厳しい寒さと視界不良でモチベーションが上がらず、結局三伏峠周辺の散策に終始してしまいました。
昔ながらの三伏峠冬期小屋も例年通り利用可能なので、テント泊に不安のある方は利用させていただくのもよいと思います。
但し鳥倉林道の通行は12月25日までなので、時期が限られてしまいます。12日現在、林道の大部分(標高1,400m以上)で降雪がありました。
今後凍結個所が多くなると思われるので、車で行かれる方は充分ご注意下さい。

三伏峠といえば、やはり塩川ルートについて触れておかなければなりません。
今では鳥倉林道から登るのが当たり前となってしまっていますが、そもそも鳥倉林道がなかった頃、三伏峠へは塩川から登るのが当たり前で、その道は本来、伊那と甲州新倉をつなぐ峠越えの街道の一部でした(明治19年開通)。
大鹿村鹿塩-塩川-三伏峠-大井川西俣-二軒小屋-伝付峠-新倉。
国鉄中央線の開通と共にこの道は、存在意義を失って次第に廃道と化し、登山道の処々に面影を残すのみとなってしまいましたが、現代人の感覚では今ここを歩いたら大変な山旅になってしまいます。
ところが残念なことに、この前半部であるクラシックな塩川ルートもここ数年鹿塩から塩川へ至る村道沢井線の崩落により通行不能の憂き目に遭い、厳冬期の塩見岳登山を大変困難なものにしています。
3年ほど前は通年樺沢ゲートまで車で進入可能でしたが、現在大鹿村のHPでは村道沢井線の復旧の目処は立っておらず、塩川へ徒歩で通行することもできないことになっています。
このまま人知れず朽ち果てていくのは仕方がないにしても、また一つ歴史あるルートが人々の記憶にも残らず消失していくことに一抹の寂しさを感じてしまうのは私だけでしょうか。
善悪は別として、経済効果と利便性をひたすら追求し、自然破壊と表裏一体のアプローチが造られていくことが当然のこととなり、そこに我々は疑問を抱くことさえせず、「楽に登れる山」を愉しむことがスタンダードになってしまっているとしても、その山の歴史を知るとともに、古人の足跡を振り返り、その息遣いを想像することを忘れないでいたいと思います。


冬の南アルプスでは、深雪に白く彩られた豊潤な森と、身を切り裂くような一級の寒気、そして完璧なまでの静寂が醸し出す「冬山の冴え」を深く感じることがあります。
どこまでも白く深い霧のなかでそれを感じると、死神の影に怯え慄然としてしまいますが、色のない白黒の世界にたった独り取り残される感覚は、あまりにも非日常的であるが故に魅惑的です。
そんな幻想的な体験ができるところにこそ、冬山の魅力はあるのかもしれません。

フォトギャラリー

雪山の朝は幻想的です

駐車場から林道を歩きます

鳥倉登山口

段々と雪が深くなっていきます

塩川ルートは全面通行止めです

豊口山分岐を過ぎるとジグザグ道になります

9/10の標識

この標識が見えたら三伏峠はもうすぐです

幕営地から三伏峠小屋別館

朝の冷え込みはかなりのものでした

ワカンをつけて森の中へ

三伏沢源頭付近で

終始雪雲のなかにいました

白黒写真みたいですね

分岐点にて

雪の重みで木が軋む音が時折聞こえます

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

この記事を見た人は次の記事も見ています

アクセスランキング

横浜西口店 - 登山レポート

同難易度の登山レポート

  • スタートナビ
  • おとな女子登山部