福智山系縦走 《 2日目 福智山直下 荒宿荘~牛斬山~香春岳~採銅所駅 》

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投稿者
好日山荘スタッフ
日程
2017年06月16日 (金)~2017年06月16日 (金)
メンバー
天候
コースタイム
荒宿荘(15分)福智山(35分)頂吉分岐(60分)焼立山(15分)赤牟田ノ辻(40分)山犬の峠(40分)五徳越峠分岐(10分)牛斬山(90分)五徳越峠(60分)香春岳(35分)五徳越峠(45分)採銅所駅
コース状況
特に問題無し
ルート詳細は添付のグーグルマップの右上、最大化ボタンをクリックしてご覧くださいませ
難易度
Google Map
  • スタートナビ
  • おとな女子登山部

感想コメント

福智山系縦走 2日目は荒宿荘からのスタートです!

標高距離図で大雑把に言ってしまえば、1日目は緩やかに福智山方面へ向けての登り。
2日目は五徳峠へ向けての下りとなります。
1日目と比べて大きく変わるのが、縦走路は防火帯を兼ねた開けた所が多くて直射日光を浴びる場所が多い所…。やはり十分な水分の準備が肝要です。
そして、1日目は想像よりトラバース道が多く楽をさせてもらった感がありましたが、2日目は今度こそ避けられない地形図通りの稜線のUP&DOWNと、九州自然歩道外(福智山以南)は一部登山道のクオリティの低下を覚悟しつつ歩こうという算段です。一旦、リスクマネジメントの一環として覚悟してしまえば後は存分に楽しむだけだー!!
携行する水分は1日目の余剰分とたぬき水での補給で2日目も準備万端。ちなみに余剰分から2Lをハイドレーションへ移し合計3L、たぬき水から2Lを予備のプラティパスへ保存しました。


《 荒宿荘 ~ 福智山 ~ 念仏坂 ~ 焼立山 》
荒宿荘から福智山山頂へは登山道上にゴロゴロとした石が多いものの、「よいしょ!」っと登って10〜15分くらいですぐに到着です。
優しい印象の淡いピンクのヤマツツジから元気を貰った気分になりながら、見渡す朝の山頂からの風景は福智山系南北の全容だけではなく、福岡の主要山塊が一通り見える相変わらずの絶景です。
時期的に視程が悪く三郡山系、英彦山系は薄っすらとしていますが、それでも現地で見る景色は見ごたえのある景観!!南側のこれから歩く縦走路も丸見えなので地形図と照らし合わせながら山座同定、念仏坂の様子も確認して先へ進みます。
道標の作りを見ると既に九州自然歩道から外れた事は一目瞭然で、頂吉(カグメヨシ)分岐では東方向の道幅が広くつい曲がってしまいそうな様相ですが、ここはしっかりと進行方向に直進です。
そして、DOWN⇒林道工事現場①⇒UP⇒P746⇒DOWN⇒林道工事現場②と歩を進める内に徐々にその全貌を明らかにする念仏坂。福智山頂からは見下ろす形なのでその様相はまだ正確に把握出来ませんでしたが、近づくにつれその冗談のような見た目の斜度が段々と明らかになっていきます。
念仏坂直前のコルは木漏れ日と緑が綺麗な広葉樹林に囲まれた天然の回廊、まるで嵐の前の静けさ的な印象を受けつつ念仏坂に突入。九州自然歩道と比べると足元は少し悪くなりますが、足の置き場を吟味しつつ出来るだけ小股で九十九折を自分のペースで登っていきます。コルからの標高差は150m程と少ないものの、やはり問題の斜度は平均して40°~45°くらいで続く模様。
ここで話ついでに斜度うんちくを追記すると、一般道路上で15°(道路勾配26.8%=歩道橋に付属する自転車専用スロープくらい)の斜度があれば登山をしない人が見ると「結構な坂」に見えます。それが登山になると快適と言われる範囲のハイキング道がやはりこの15°くらいまで。ゲレンデであれば上級コースは30°~40°の斜度で設定され、それ以上になると稀にしか見られない最上級者コースに匹敵する斜度です。ちなみに60°以上になると地形図ではガケ表記になります。
よく見かける九十九折の登山道や木段は斜度が30°を越えていると敷設されている場合が多く、つまり斜度30°以上から直登は厳しくなってくるという訳ですね~。参考までに殺生ヒュッテ〜槍ヶ岳山荘の平均斜度は25.4°らしいですが、カール地形などは局所的に40度以上の傾斜も珍しくはないですね。
念仏坂の様にたまに見かける極端な斜面は、登りは遙か上を見上げる・下りは遙か下を見下ろす様な体感・状況になり、登り下り共に運動負荷が上がるので長い縦走の中で無駄に体力・筋力を消耗したくない場面です。特に下りの場合は転落しないように注意したいですね。こういう箇所は山行前から地形図で把握しておいてペース配分のイメージをつけておくと良いかと思います。
しかし、1日目はトラバースが多かっただけに、なぜ道を開拓した人は念仏坂にこそトラバース道を敷設しなかったのか……西側から巻けば一気に赤牟田ノ辻なのに……今回最大の謎です(笑)
そんなこんなで焼立山山頂に到着です。山頂は少し広め。念仏坂から上がってきた向きのまま山頂奥側に行くと、いかにもな迷い跡があって明後日の方向(恐らく北東尾根方面)に向かっていますが、その手には乗りませんよ〜!
虫やハチ達に纏わりつかれつつも、強い心でもって一服を楽しみながら、進行方向の赤牟田ノ辻を確認。
焼立山と赤牟田ノ辻、『山と高原地図 56 福岡の山々』と『分県登山ガイド39 福岡県の山』でそれぞれ位置がテレコになっていますが、分県~は国土地理院の基準点名を引用しています。実際の山頂の道標も此れに合わせて修正されているようです。

《 焼立山 ~ 赤牟田ノ辻 ~ 山犬の峠 ~ 牛斬山 》
焼立山山頂からは北西側に福智山からの縦走路が、そして南南西方向には進行方向の縦走路が見えています。ここから先の進路はもう日差しからは逃れられそうにありませんが、その分先の見通しは良く稜線と景色が丸見えで視覚的には気持ちいい!
赤牟田ノ辻は稜線からほんの数m離れた所に山頂の道標があり、南西側が開けて眺望も良しです。某サイトの登山記事で稜線への復帰に戸惑った人がいましたが、こんな分かりやすい所で一体なぜ!?
ここまで来ると牛斬山も香春岳も頭が見えていて射程範囲です。赤牟田ノ辻からしばらくの下りはザレて滑りやすい箇所もありますが、引き続き見た目は爽快な縦走路を進みます。途中、鮎返新道分岐に差し掛かりますが、盛夏になりつつある気候で茂っている脇の分岐路は道標ごとヤブの中。薮屋さんでない限り、しばらく誰も利用しないでしょう。
山犬の峠625mでアツい日差しに晒されつつも、先の見通しを見据えながら一旦体制を整え直します。ピークの名称で「~の辻」という呼称は九州地方独特と言われていますが(ちょっとカッコイイ)、ピークなのに「~の峠」と聞いた日にゃもう訳が分かりません。登山で言う「峠」はコルとほぼ同義です。余談ですが、コルについても九州は「越(こし)」より「越(ごえ・こえ)」と呼ぶ割合が多い気がします。
そして、五徳越峠分岐、採銅所分岐を過ぎるとついに牛斬山山頂。なんでこんな物騒な名前がついたのやら…。目の前は牛ではなく山をぶった斬ったような様相の香春岳・一ノ岳。この日現地で初めて教えていただきましたが、一ノ岳は石灰岩の採掘で30年ほどかけて現在の元の半分の姿に、そして今度はお隣の二の岳がぶった斬られてしまう様です。言わずもがな自然の力は凄いですが人間の力もすごい…。香春岳が舞台の小説『青春の門』、一度読んでみたいものです。この日、国見岩は割愛しました。

《 牛斬山 ~ 五徳越峠分岐 ~ 五徳越峠 ~ 香春岳・三ノ岳(往路:岩登りコース 復路:ファミリーコース)~ 採銅所駅 》
クライマックスは香春岳・三ノ岳へ向かいます。今回の縦走は皿倉~牛斬が一般的の様ですが、せっかくなのでこの際に香春岳も存分に味わう前提での計画でした。
牛斬山山頂の休憩でカロリーと水分を補給してから薮漕ぎ覚悟で五徳越峠分岐から下山を開始します。
期待を裏切られる形で五徳越峠分岐~ロマンスが丘分岐までは想像より薮が深くなっており、身長を越える茂みで足元の踏み跡が見えづらい中、時折いばらの洗礼を受けつつも進みます。薮の中なので視界がかなり奪われている状態ですが、事前に上から視認していた尾根の様子や地形図で読み取っていた支尾根の方向を把握しておけば、垣間見える周りの様子をヒントに進むべき進路から逸脱せず進み易いです。途中薮の中にも関わらず進路と逸れる方向の踏み跡が見え隠れしていましたが、またまたその手には乗りませんよ~!
ロマンスが丘までの薮漕ぎを終えれば五徳越峠までは普通の尾根道です。途中で真正面に見える香春岳・三の岳の尖った山容に標高が低いながらもラスボス感を感じつつ、五徳越峠まで下山したら一旦インターバル。
三ノ岳は手早く済ませたかったので直登の岩登りコースを選択しました。途中1か所のみ必要かどうか定かではないロープを張った所がありましたが、「ロープ張るならこっちでしょ!」と言わんばかりの手足を滑らせると大怪我では済まなそうな岩場もありつつ、コンパクトながら岩場登りを楽しめるコースです。
この縦走お約束の虫が群がる山頂からは平尾台・貫山方面がすぐ目の前に見えます。朝方に福智山山頂から見た平尾台・貫山とは見る角度がまったく異なるので本日の縦走の達成度を実感出来ます。
下山に利用したファミリーコースは一部林道(鉱山巡回道路)を通過しつつ歩きやすい登山道でした。
五徳越峠から採銅所駅までは約3kmの道程が残されています。今回は車道や小屋周りで使うサンダルを省略しましたので(外付けはしませんでした)、アスファルト道を靴底の硬い登山靴で歩くこの区間は個人的にある意味最大の核心部です。道中にはローソンがあり下山後の補給はバッチリ!登山と全く関係ないけど「からあげクン焼きそば味」の焼きそば感がスゴかった…
こじんまりとしつつもノスタルジックでよく見るとちょっとお洒落な採銅所駅。もう一度訪れたくなるとても味わいのある駅でした。無事登山を終えられて今回も感謝です。


《 縦走総括 》
荒宿荘を挟んで南北で表情がはっきりと変わる福智山系の縦走。主要ピークからは景観が良く見所も随所にあって、通して歩いてみて人気の理由が実感出来ました。
多少誤差はあると思いますが、計測したログデータによると尾倉登山口〜香春岳〜採銅所駅までで水平距離約36km、累計標高差 登り2,315m 下り2,365mとの結果でした。
槍ヶ岳登山の王道、上高地〜槍沢経由〜槍ヶ岳の往復が水平距離約39km、累計標高差 登り・下り2,220m。
低山と高山では路面、植生、気象、酸素濃度などの違い、縦走とピストンの違い、積載重量、他にも確保している日程などで1日辺りの運動強度が変わるので、条件的に厳密な比較には決してなり得ませんが、宿泊を伴う縦走やアルプス遠征前の練習にはもってこいではないでしょうか?
水平距離は長めなものの、登山道全体の傾向は分かり易く歩き易い方なので、累計標高差登り下り足して4,000m越えの1泊2日縦走としてはやや優しめ〜標準的なレベル感の印象でした。
三郡縦走からのステップアップや背振山系全山縦走に向けてのトレーニングにも有効活用出来ますね!
長距離山行では、靴ズレ、ザックの不適切な荷重配分、水分または食料の不足、日差しや虫など、スタート時は僅かなストレスでも時間が経過するにつれて重なる疲労、痛み、不快感などが大きなストレスへと変貌する事があります。
道具のストレスや登山内容に併せた準備全般についての不明点は私達スタッフにご相談頂くと解決する場合が多いですが、その他では体力や脚力の維持・向上に努めたり、コースに関しても事前に主要なピーク、分岐、水場の位置だけを単純に調べるのではなく、区間ごとに標高差、距離、細かい地形の変化を含めて把握しておくとペース管理や道迷い防止などにも役立ちます。初めての方は入念に準備をされて存分に楽しまれて下さい〜♪

フォトギャラリー

翌朝福智山山頂から 一番奥が皿倉山です

福智山周辺には素敵な出会いがありました~♪

山頂の道標は存在感バッチリ

八丁峠は見ていて気持ちいい 奥に三郡山系の稜線

お隣の貫山・平尾台方面 福智山からだと平尾台の西側が見えます

そして本日の進路方向 英彦山や犬ケ岳も見えてる!

左奥が念仏坂 なんか道の付き方おかしくない!?

しばし木漏れ日の回廊を進みます

見上げて納めた念仏坂 出来るだけ止まらずゆっくり登ります

赤牟田ノ辻 手前の道標は最近ついたのかな?

ついに捉えた牛斬山と香春岳・三ノ岳! 縦走路が爽やかで心躍ります♪ 暑いですけどね…

牛斬山と香春岳を見下ろせるのは山犬の峠までです

牛斬山山頂 どうしても一ノ岳に目がいってしまう…

五徳越峠分岐からしばらくはこんな感じになります タイツのまま突っ込んでしまったので雨具を着ればよかったと後悔後に立たず

おむすびの様な香春岳・三ノ岳が目前 現地では岩登りコースの岩が見え隠れしてます

岩登りコースにて

三ノ岳山頂 こちらからだと平尾台を南南西方向から見ています

林道(鉱山巡回道路)を下るとファミリーコースへの道標がありますよ

「ファミリー」なだけにこの2日間で最も歩き易かったファミリーコース

採銅所駅内の交流スペース「第二待合室」が洒落オツでした

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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