忍びの道を歩く 千草越~雨乞岳 / 鈴鹿

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投稿者
上田 哲也
京都河原町店 店舗詳細をみる
日程
2018年05月22日 (火)~2018年05月22日 (火)
メンバー
グランフロント大阪店 上田
天候
晴れ
コースタイム
千草越・駐車場~30分~善住坊のかくれ岩~30分~ツルベ谷出合~75分~杉峠~25分~雨乞岳(1238.0m)~10分~東雨乞岳(1225m)~10分~雨乞岳(1238.0m)~20分~杉峠~100分~善住坊のかくれ岩~20分~千草越・駐車場
コース状況
杉峠から雨乞岳への直登斜面は足場が非常に不安定ですのでご注意下さい。
雨乞岳の山頂周辺は背丈ぐらいの熊笹に覆われており、足元が見えにくくなっています。
熊出没注意の標識有り

水場:杉峠の手前に少しだけ水が湧いていました
WC:なし
難易度
Google Map
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感想コメント

滋賀県日野町にある千草越から雨乞岳と東雨乞岳を縦走してみました。

雨乞岳は鈴鹿山脈で最高峰の御池岳に次ぐ高さの山として知られていますが、戦国時代には雨乞岳の中腹を近江国から伊勢国に抜ける「千草越」にて、天下統一を目指した織田信長が人生で最大の連続危機を乗り切った場所としても知られています。

元亀元年(1570)越前に侵攻した信長は朝倉義景の軍勢と交戦中に、北近江の浅井長政に背後から攻撃され挟撃の危機に瀕します。これに対し信長は「金ヶ崎の退き口」と呼ばれた奇跡的な撤退戦を行い、木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)や明智光秀らが金ヶ崎城で追っ手を食い止めている間に、朽木を経由して無事に京の都へ退却。続いて長政は東近江の鯰江城に軍勢を入れ、市原では住民に蜂起を起こさせて、近江路から岐阜城に戻ろうとする信長の退路を絶ちます。

一方、長政と長年敵対していた近江の六角氏もこの機会を利用して東海道を封鎖。主要路を遮断された信長は日野の蒲生賢秀らの協力により「千草越」と呼ばれる雨乞岳の中腹にある山道を利用して、伊勢方面から岐阜城への脱出を図ります。忍びを数多く抱えていた六角承禎はこの動きを察知すると、信長を打倒する為に杉谷善住坊という鉄砲の名手を雇い狙撃を依頼。

杉谷善住坊は甲賀五十三家(甲賀忍者の名家)に数えられる杉谷家出身の忍者であったと言われていますが、伊勢・杉谷城の城主、伊勢・杉谷圓通寺の僧など異説もあるようです。依頼を受けて「千草越」に潜伏した善住坊は山中の大岩に身を隠して一行を待ち伏せし、信長の姿を視界に捉えると火縄銃で狙撃します。

「信長公記」には「鉄砲ニ玉をこみ十二三間隔て…」と記されており、有効射程が百メートルほどだったという火縄銃を二十数メートルの距離で使用した事が分かります。また甲賀忍者の末裔の家に残る「求中集第一」という砲術の伝書には「わり玉之事」というのがあり、鉄砲の玉を作る時に二つに割って特別な加工を施したものを紙に包み、銃身から籠めて発射すると飛んだ玉が左右へ分かれると書かれており、これが「鉄砲ニ玉」の事だと思われます。

特殊な散弾仕様の鉄砲の玉を用いて、確実を期した二十数メートルの距離から狙撃した善住坊でしたが、「天道昭覧にて信長の御身に少宛打かすり…」と「信長公記」が記しているように、天運があった信長の身を二発の玉は少しかすめただけで狙撃は失敗。信長は徹底捜索を命じたとされ、善住坊は数年後に近江高島で捕まり、岐阜城にて鋸引きの刑に処されたといいます…。 

まずは車で日野にある甲津畑の集落へ。速水勘六左衛門の子孫が暮らす家の庭に「信長馬つなぎの松」という大きな松あり。信長の協力者であったという勘六左衛門は、ここから杉峠まで警護役を務めていたそうです。再び車を走らせると、登山口近くの道路脇に駐車。登山口となる岩ヶ谷林道起点から出発。林道を約30分ほど歩くと、川の屈曲部の突端にある「善住坊のかくれ岩」といわれる大岩に到着。

「千草越」の旧道は対岸にあった様子なので飛び石伝いに川を渡ってみると、大岩から二十数メートル程の所で道を補強した石積み跡を発見。そこから先の旧道はかなり急な登り坂になっていました。大岩より少し下流には旧道の渡渉地点があったようで、警戒が厳重になる渡渉地点を避け、急な登り坂に差し掛かって必ず馬の速度が落ちる所を、善住坊は狙撃したと考えられます…。

林道に戻ってしばらく行くと「桜地蔵尊」あり。この辺りは高低差もほとんどなく非常に歩きやすい道が続きます。対岸に渡ると少しずつ道幅が狭くなり、ようやく登山道っぽい雰囲気になってきたところで、石積み跡が残る「古屋敷跡」に到着。ここがツルベ谷出合で、綿向山や清水頭方面への分岐点になります。

「蓮如上人御旧跡」を過ぎ、手作り感のある吊り橋を越えた所から、登山道の傾斜が少しずつ出てきます。「シデの並木」や「一反ぼうそう」の周辺は巨木が次々と現れ、非常に神秘的な雰囲気が漂っていました。出発から2時間少しで杉峠に到着。雨乞岳への登りは最初の10分が、かなり急勾配の斜面になっていますので、上り下りとも注意が必要です。登り切ると気持ちの良い稜線歩きとなって雨乞岳の山頂に到着。三角点あり、展望あり。気温23度で風が抜けて心地よい。

さらに背丈ぐらいの熊笹をかき分けながら10分ほど歩くと、隣の東雨乞岳に到着。ここは360度のパノラマ展望があり、雨乞岳と違って広々とした山頂なので休憩するには絶好の場所です。帰路は往路を引き返して、千草越の駐車地点に下山しました。

フォトギャラリー

東雨乞岳からの眺め

信長馬つなぎの松

岩ヶ谷林道起点

千種街道(千草越)案内図

甲賀忍者の善住坊が右の大岩から信長を狙撃

「杉谷善住坊のかくれ岩」の解説

非常に歩きやすい道

蓮如上人御旧跡

巨木が残ります

手作り感のある吊り橋

シデの並木

神秘的な雰囲気

杉峠

気持ちの良い稜線歩き

気持ちの良い稜線歩き

雨乞岳の山頂

雨乞岳からの眺め

東雨乞岳へ

東雨乞岳の山頂

東雨乞岳から雨乞岳へ

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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