谷川連峰の名渓 万太郎谷本谷 ~ 王道の美渓を辿る珠玉の沢旅 (谷川岳北面 魚野川源流)
- 投稿者
-
伊藤 岳彦
横浜西口店
- 日程
- 2021年08月03日 (火)~2021年08月04日 (水)
- メンバー
- 単独行
- 天候
- 曇/晴
- コースタイム
- 土樽駅(70分)入渓点(75分)オキドウキョ(35分)井戸小屋沢出合(130分)一ノ滝上(30分)ニノ滝(110分)三ノ滝上(30分)幕営地(160分)肩ノ小屋
- コース状況
- ※ 本文をご参照ください
- 難易度
感想コメント
万太郎谷本谷
万太郎谷本谷は谷川連峰屈指の名渓にして、沢の王道。
優雅な3つの大滝と変化に富んだナメ・瀞・淵が織りなす雄大なスケール感は秀逸です。
これまで機会を逸していましたが、ようやく念願の遡行に挑戦。
猛暑の続く8月初、沢登りの醍醐味を十二分に味わってきました。
2021/8/3(火) 曇
土合駅[8:37]…土樽駅[8:45]…吾策新道入口[9:34]…堰堤にて入渓[9:55]…魚止メ滝[10:41]…オキドウキョ[11:09]…井戸小屋沢出合[11:47]…一ノ滝下[13:14] …一ノ滝上[13:57]…ニノ滝[14:25]…三ノ滝下[15:12] …三ノ滝上[16:16]…幕営地[16:50]
2021/8/4(水) 晴
幕営地[9:45]…二俣?[10:25]…肩ノ小屋[12:23]…土合駅[15:46]
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以上で、見ることができるはずです。
本文の画像は通常のフォトギャラリーと同じところに保管されているので、安全面での問題はないと思うのですが・・・。
差し支えなければ、お試し頂けると助かります。
■ プロローグ ~ ビバーク地
横になって目を閉じると、すぐ近くから瀬音が聞こえてきます。
沢床からテントを張っている場所まで高さ30cmくらいしかないかもしれません。
万太郎谷本谷ではよい幕営地は期待できないとは聞いていたが、まさかこれほどとは…。
↑ ビバーク地
三ノ滝を越え、ビバーク地を探しているうちにだいぶ上まで登ってきてしまいました。
やっと見つけた平地はかなり沢に近いですが、時間的にもうここに泊まるしかない。
源頭部とはいえ増水したら一発アウトのところですが、天気予報通りであれば大丈夫でしょう。
夜になってテントの入口を開けて空を見上げると、見事な天の川が広がっていました。
2000m近い標高でも寒くなく、薄い夏用シュラフに包まって丁度よいくらい。
それにしても結構ハードな一日だったように思います。
間近で響く瀬音に包まれながら、反省も含め今日の長かった遡行を振り返ってみることにしました。
■ 入渓
土合駅に車を停め、8:37発の上越線で土樽駅へ。
吾策新道入口の駐車場に停めて周回してくることもできますが、首都圏在住者は下山や帰りの手間を考えると、土合を起点にした方が、やはり便利でしょう。
土樽駅から吾策新道登山口までは舗装路を50分ほど歩きます。
↑ 登山口手前にある駐車場
↑ 吾策新道入口
吾策新道入口を過ぎると、すぐに舗装路は2つに分かれますが、右へ進み林道終点へ。
↑ 林道終点へ
林道終点は広場になっており、ここで入渓準備。
以前は護岸工事が行われていたそうですが、現在工事は終わったのか、特に工事関係のものは見当たりません。
空はどんよりと曇り、すぐにも泣き出しそうですが、これから回復していくことを祈って、予定通り出発。
入渓点となるのは堰堤です。
↑ 立派な堰堤
↑ 平水なら通過できます
ここを越えるといよいよ万太郎谷本谷遡行のスタート。
青空ではないのであまりテンションは上がりませんが、未知の世界へ足を踏み入れるワクワク感が湧き上がってくるのが分かります。
↑ 実質的な入渓点
万太郎谷は、信濃川の一大支流である魚野川の最上流部に位置する大渓流。
谷川岳西面に水源を抱き、茂倉岳から谷川岳、オジカ沢ノ頭、大障子ノ頭を経て万太郎山に至る上越国境稜線と、矢場尾根、万太郎尾根に囲まれた広大な流域の水を集めて北上する河川で、土樽駅上流で蓬沢と、土樽駅下流で仙ノ倉谷と合流し、魚野川と名前を変えて越後平野に流れていきます。
魚野川の源流部は、東から蓬沢・檜又谷・茂倉谷・万太郎谷・仙ノ倉谷に分かれますが、本流としての風格を堂々と漂わせているのが、万太郎谷。
谷川岳北面最長となる渓は多彩な貌をもち、沢登りの面白さを存分に味わうことができます。
序盤は美しいナメや瀞を数多く秘め、中盤は堂々とした優雅な大滝が3つ続き、源流部の低い笹薮漕ぎで名峰谷川岳に詰め上がることができます。
また長大な渓の両岸には遡行価値の高い支流が数多くあり、興味が尽きることはありません。
さて、本日も遡行開始!
ここ数ヶ月間、大菩薩の名渓小金沢本谷で体を作ってきたので、気力体力ともに充実。
しばらくは河原状のなか穏やかな渓相が続きます。
やがて最初の見所となる岩畳状のナメ床へ。
途中左岸から大ベタテ沢が入ってきていたはずですが、うっかり見落としてしまいました。
大ベタテ沢は万太郎谷流域中最短の渓。
この沢は核心部に50mスラブをもつ右俣と、小滝・ゴーロ・スラブ帯の三つが楽しめる左俣に分かれます。
日帰り遡行ができるルートとして貴重なので、覚えておくのもよさそうです。
本谷はやがて左に曲がり、何やら立派な滝が見えてきました。
↑ 奥に滝が見えてきました
最初の滝らしい滝が、
魚止メ滝4m
深い釜をもち、豪快に水を落とす、高さ以上に立派な滝です。
↑ 魚止メ滝4m
右岸をへつり、左壁を直上して突破。
↑ 左壁の様子
少し下の左岸にトラロープがあり、巻くこともできるそうですが確認しませんでした。
魚止メ滝を越えると、特異なナメが広がる渓相へ。
↑ 独特な渓谷美です
ここからは小滝や釜のある河原状の渓相がしばらく続きます。
↑ 関越トンネル換気口が見えます
↑ 多くの釜があります
↑ 換気口はかなりの大きさです
換気口を過ぎてしばらくすると、大釜をもつ3m滝が現れます。
↑ 大釜をもつ3m滝
↑ 右から越えます
やがて序盤のハイライト、オキドウキョが見えてきました。
↑ 序盤のハイライトへ
■ オキドウキョは高巻き
入渓から70分ほどで、いよいよ序盤のハイライト、オキドウキョへ。
左岸からはオキドウキョ沢が簾状の6m滝となって出合います。
↑ オキドウキョへ
↑ オキドウキョ沢出合
↑ 簾状の6m滝がかかります
オキドウキョ沢の先には、100mに及ぶゴルジュ帯が広がります。
これこそが、
オキドウキョ
古いガイド本にはオキドキョウノトロという記述もあり、どれが正解か分かりません。
ゴルジュ内にある20mのトロ場はかなり深そう。
そして出口には4m滝が豪快に水を落とし、強引なシャワークライムが求められます。
沢登り本来の楽しみ方とすればやはり泳いで挑戦すべきですが、実際にはズブ濡れでここを突破するとかなり消耗しそうな予感がします。
ザックを水浸しにすると相当重たくなるし、先は長いので、今回泳ぎはパス。
右岸の高巻きは容易なので、今回は高巻きを選択することにしました。
個人的には、このオキドウキョで遊ぶことだけを目的にライフジャケット持参で来ると非常に楽しめるのではないかと思いました。
さて、右岸の高巻きはササヤブのなか。
かすかな踏跡もありますが、完全な高巻き道がある訳ではありません。
あまり沢から離れないように進んでいくと、出口らしき辺りに赤テープがありました。
↑ 赤テープあります
ここを抜けると、ゴルジュ出口にある2条4m滝の上へ。
↑ ゴルジュ出口
↑ 物凄い水量です
エキスパートは下からこの滝へ突っ込むのだと思いますが、結構大変そうです。
■ 井戸小屋沢出合
高巻きでオキドウキョを越えると、再び穏やかな渓相へ。
↑ 穏やかな渓相
少し進むと釜をもつ2条の小滝があります。
↑ 釜をもつ小滝
↑ 左から簡単に越えられます
↑ 3m滝
次の小滝も釜が深く、取り付くことはできなさそう。ここは左岸巻き。
↑ 赤テープあります
ここを越えると、井戸小屋沢出合です。
↑ 井戸小屋沢出合へ
↑ こちらは井戸小屋沢
井戸小屋沢は万太郎谷流域では最も遡行価値の高い支流で、数多くの滝が連続します。
万太郎山へ直接詰め上げる渓ですが、上流部は難易度の高い左俣と、快適な右俣に分かれ、日帰り遡行が可能。
井戸小屋沢右俣は次のステップとして訪れてみたい渓です。
また、右岸には小障子沢、さらにその支流の大障子沢があり、国境稜線へ詰め上げています。
昔は井戸小屋沢出合には半壊したケルンがあり、ここには谷川新道という登山道があったそうです。
吾策新道に入って途中から、万太郎谷左岸沿いに道があったそうですが、今は完全な廃道なのでしょう。
また谷川新道は井戸小屋沢出合で沢を横切り、大栗沢出合付近まで今度は右岸沿いにつけられていたようです。
少し調べてみると、昭和30年代の登山ブーム時、多発する遭難事故に対し、当時の遭難救助隊長であった高波吾策氏は私費を投じてエスケープルートの開拓に尽力されたそうです。
土樽駅から扇状に派生する蓬新道・茂倉新道・吾策新道・平標新道は当時拓かれたルートで、それらは現在も残っていますが、谷川新道のみ廃道化してしまいました。
今では少数の沢登り愛好者しか訪れない万太郎谷にも、そのような歴史があったことに、少なからず驚きを禁じえません。
■ 景観の良い中流部
入渓点から井戸小屋沢出合までは2時間弱。まだまだ先は長いです。
しばらくするとまたゴルジュとなり、釜の深い小滝が現れます。
↑ 再びゴルジュへ
左岸を泳いで取り付くことができそうですが、大変そうなのでパス。
登山体系やガイド本にも高巻きについて記述があります。
ここは右岸高巻き。手前の枝沢を少し登ってから、右岸の平坦地を探しながらトラバースしましたが、意外に灌木が多く、藪漕ぎに少し難儀しました。
低く巻いて3mヒョングリ滝下に出るのがベストなようですが、よく分からないまま15分ほどかかって少し先まで巻いてしまいました。
↑ 沢へ戻りました
↑ 続く小滝
↑ 左岸にロープ
↑ 釜をもつ小滝
↑ ちょっと立派な滝が見えてきました
↑ 簾状の小滝
↑ 左から越えられます
この辺りまで来ると、だいぶ景観がよくなってきました。
渓相が明るくなり、どことなく湯檜曾川本谷中流部を彷彿とさせるものがあります。
↑ 大栗沢出合へ
↑ ソエゴシソネノ沢出合
↑ ソエゴシソネノ沢にかかるナメ滝3段50m
↑ 釜をもつ2段滝
景観のよい中流部を快適に越えると、やがて大滝の続く後半部に入っていきます。
■ 一ノ滝の高巻きに苦戦
まず最初に現れるのが、
一ノ滝30m
一ノ滝の迫力はなかなかのもの。
堂々とした典型的な直瀑には、王者の貫禄さえ漂っています。
さて登路について、エキスパートは右壁を登りますが、左岸高巻きで越えるのが一般的であるようです。
ある本に「少し戻って左岸のルンゼから高巻く」とありますが、顕著なルンゼは見当たらない???
昔谷川新道という登山道があったくらいだから明瞭な踏み跡があるんだろう、くらいの楽観的な気持ちでいましたが、そうは問屋が卸しませんでした。
経験的に30m大滝を巻くときはこんな感じだろうという自分のイメージを信じることにして、ルンゼっぽい沢型を直上して、途中からトラバースすることにしました。
↑ この沢型を登ってみました
ここからしばらくは悪戦苦闘の連続。
登るのも大変ですが、トラバースはもっと大変。
低灌木が邪魔をして思うように進めず、おそらく断崖絶壁のうえで、無駄に登ったり、強引に幹を掴んで体を横に進めたり……。
きっと高く上がりすぎていたのでしょう。
汗だく土まみれになりながら、何とか降りられそうなところの上まで進み、最後は強引な滑り台下降でやっと沢へ戻ることができました。
↑ ここを滑るように下りました
この間所要時間40分。結構苦しい時間帯でした。
ここはルートファインディングに失敗??かなり消耗しました。
もっときっと効率的な巻き方があったのだとは思います。
まだまだ自分の甘さを思い知らされた高巻き。
ある意味いい経験ができたように思います。
■ ニノ滝は快適に登れます
気を取り直して、遡行リスタート!やはり水の中を歩くのは気持ちよいものです。
やがてまた立派な滝が見えてきました。
これが、
ニノ滝10m
登路は右。階段状になっているので、快適に登ることができます。
↑ 右を登ります
↑ 上部は5mのナメ状
↑ また渓が開きます
この辺りからゴーロとなり、ビバーク適地を探し始めます。
あるガイド本には「二ノ滝から三ノ滝の間で探すことになる」と記述がありますが、なかなかよいところは見当たりません。
↑ イシクラ沢出合?
イシクラ沢付近にもビバーク適地があるらしいのですが、これも見当たらず。
焚火の後や、人が泊まった痕跡さえ見つけることができません。
結局三ノ滝上部で探すことにして、再びゴーロを進むことにしました。
やがて3mチムニー滝を過ぎると、いよいよ核心の三ノ滝が姿を現します。
↑ 3mチムニー滝
■ 三ノ滝を越える
いきなり眼前に迫力ある光景が広がりました。
これこそが、
三ノ滝2段40m
三ノ滝は沢が左へ屈曲したところに屹立しています。
さて下段の登路について、エキスパートは右壁を登るようで「直上⇒左の水流方向へ斜上⇒その後直上」とあります。
私には無理なので、右に隣接する支流の三ノ滝沢40m大滝の手前の岩壁を直上し、草付きに抜けるルートを選択。最初の関門です。
↑ こちらは三ノ滝沢40m大滝
↑ ここを直上しました
出だしが垂直のため、水浸しの重たいザックを背負ってのフリー登攀はちょっと無理。
こうなると空身で登ってロープでザックを引っ張り上げる方法がありますが、途中で引っかかってしまうので、これも無理。
結局空身で登って、ロープを固定、懸垂で降りて、ザックを背負ってロープを頼りに登り返すことにしました。
今回は軽量化を意識し、20mロープしか持ってきませんでしたが、ギリギリセーフ。
なんだかんだ30分くらいを費やしてしまいました。
因みに登山体系には、「高巻く場合は滝の手前より谷川新道の踏み跡を利用できる」とあり、最悪の場合右岸の大高巻きができるのかもしれません。
続いて2段目。最後の関門です。
さて上段の登路について、エキスパートは①滝下を対岸に渡り水流の左側を登るようですが、②右岸を高巻くこともできるそうです。
ただ下部は傾斜もきつくミスが許されないので、最も確実性の高い③右のスラブ状の細い沢筋を登って灌木帯に入る、を選択。
↑ 登路は右の細い沢筋
水はかなり冷たく、ちょっとしたシャワーでも身が引き締まる思いがします。
本流を渡って、岩溝をビミョーなバランスで斜上。
岩はヌメっており、ホールドも小さいものばかりでしたが、重いザックを背負ったまま、何とかフリーで登ることができました。
↑ 途中下を振り返る
↑ 安全圏へ
ここまで来れば、もう安心。
後は灌木帯のトラバースのみ。
太い幹を頼りに草付きを横切り、本流の上部を目指します。
↑ 三ノ滝最上部へ
大滝を越えると緊張感から解放され、沢は源頭の雰囲気になっていきます。
そろそろ泊まり場を探さなければならなくなりました。
三ノ滝上部にビバーク地があるということですが、「どこですか?」という感じ。
こっちでもない、あっちでもない、と右往左往しながら随分と登ってきてしまいました。
やっと見つけた平坦地がここ。
↑ 今宵の泊まり場
冒頭で述べたように、沢床からかなり近いですが、天気はもちそうなのでここに決定!
何はともあれ、怪我なく核心部を越えることができ一安心。
夕照のなか、まったりと音楽を聴きながら飲む紅茶の味は格別でした。
■ 詰めも大変でした
翌日は詰めと下山だけなので、のんびり10時前の出発。
レイヤリングも上はウール長袖1枚だけにして、暑さに備えます。
↑ グングンと高度を上げます
途中何気にシャワークライミングを求められるところもあり、ズブ濡れになるシーンもありました。
源頭部の小滝は様々なものがあり、油断はできません。
途中枝沢がいくつか入り、正しい二俣がどこかは分かりませんでした。
↑ ここが二俣?
どこが二俣かわからないまま、本流らしき沢を辿り、懸命に高度を上げていきます。
↑ まだまだ先は長い
途中稜線が遠望できますが、絶望的な距離を感じてしまいます。
↑ オジカ沢ノ頭避難小屋か?
この辺りから肩ノ小屋まであと2時間半ほど。
結構長い時間、藪をこぎながら忠実に沢型を辿って必死に山頂を目指します。
笹だけならいいのですが、低い灌木もあり、思うように上へ行くことができないところもあります。
さらに最後はシャクナゲも混じり、一筋縄ではいきません。
低い笹だけならば匍匐前進で進む方が早いことを知りました。
最後になると踏跡が登山道に導いてくれると書かれたガイド本は多々ありますが、そんな便利なものは見つからず、気が付くとトマノ耳直下まで来てしまいました。
因みに登山体系には、
赤茶色のナメを越すと大岩があり、右手前方の岩に白ペンキで書かれた矢印に導かれて踏跡に入り、小さな岩場を二つ三つ越すとエーデルワイスの咲くお花畑となり、やがて肩ノ小屋直下の縦走路にとび出す。
とロマンチックに書かれていますが、現実にはそんなことはなく、ただただ目の前の藪をどう越えていくかで必死でした。
やっと山頂に人の姿が視認できるようになると、「パパ、なんであの人はあんなところにいるの?」という子供の声が聞こえてきそう。
悪戦苦闘の末、ようやく肩ノ小屋直下の小広場に出て、遡行終了。
肩で息をしながら西に目を転じると、国境稜線に浮かぶ雲が印象的でした。
↑ 無事稜線へ到着
万太郎谷本谷は名渓の名に恥じない、変化に富んだ素晴らしい渓でした。
さすが王道!歩き・泳ぎ・登りが総合的に楽しめる渓として第一級のもの。
開豁さでは湯檜曾川本谷に劣りますが、厳しさでは万太郎谷本谷に軍配が上がります。
初級としている文献もありますが、上越ではという意味で、初級者が安易に訪れるところではないように思いました。
またビバーク適地が少ないのが難点であり、天気を見極めることが求められそうです。
一般的には沢中泊で遡行するルートですが、健脚に自信があるならば、徹底的に軽量化を図った日帰り遡行、言わば沢のアルパインスタイルで臨む方が、もしかしたら効率的であるかもしれないとも感じました。
一つ大きな課題を達成した後は、また次の課題に挑戦したくなるもの。
今回の遡行で得た経験を生かし、しっかりと準備をして、次なる高みを目指したいと思います。
最後までご一読いただき、有難うございました。
※ 画像サイズはスマートフォンで見やすい大きさに設定してあります。
※ 滝表記については、『沢登り銘渓62選』(山と渓谷社/初版2016年)を参照させて頂きました。
フォトギャラリー
・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。