屋久島 SEA TO SUMMIT
- 投稿者
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るんちゃん(おとな女子登山部)
浦和パルコ店
- 日程
- 2024年04月02日 (火)~2024年04月04日 (木)
- メンバー
- 山仲間
- 天候
- 1日目 晴,曇/2日目 強風,雨/3日目/曇
- コースタイム
- 【1日目】楠川バス停(10分)楠川天満宮(20分)楠川歩道入口(150分)白谷雲水峡(60分)苔むす森(30分)辻峠(20分)太鼓岩(15分)辻峠(60分)楠川分れ(90分)ウィルソン株(90分)縄文杉(10分)高塚小屋
【2日目】高塚小屋(60分)新高塚小屋(160分)宮之浦岳(130分)花之江河(70分)淀川小屋
【3日目】淀川小屋(50分)淀川登山口(10分)紀元杉バス停
- コース状況
- ・主要拠点にはトイレ、携帯トイレブースがあります。ハイシーズンはトイレの混雑が予想されますので携帯トイレを持参するのがベストです。
・ガス缶は空港や観光案内所、登山用品店などで購入できます。帰りは空港で没収されます。ライターは手荷物1人1個まで。
・登山口で環境保全協力金を支払います。基本1000円,泊まりの場合は1晩2000円。
・水場は豊富。シーズン中は枯れることはないと思います。
・歩道によってはヤマビルが出るそうです。スプレー持参しましたが今回の歩道では出ませんでした。
・高塚小屋は2階建 ロフトあり。10人は入れます。新高塚小屋・淀川小屋は広めで30人は入ると思います。外にはテン場として使えるデッキやスペースもあります。各小屋に外トイレ・携帯トイレブースあります。避難小屋なのでランタン、外へ行く時のサンダル、傘があると便利です。
・宮之浦岳周辺の稜線は悪天候時には強風注意。雨が降っていなくても笹に付いた露で濡れるのでレインパンツやゲイターを装着して歩くのがおすすめ。段差のある箇所にはロープ設置されてます。
・登山道周辺は車の乗入れが出来ないのでバスか保全チケットを払ってタクシーで入ります。本数と時間が決まっているので下山の時間に注意してください。
- 難易度
感想コメント
いつか行ってみたいと思っていた屋久島。ひょんなことから屋久島通の友人に誘われ、忙しいお店を何とか抜け出して4日間のバカンスに出かけてきました。初日は移動と観光、2泊3日で山に入り縄文杉と白谷雲水峡、最高峰宮之浦岳を登頂する計画。沢登りも候補に上がりましたが、屋久島初心者なので欲張らずに王道コースを巡ることにしました。
雨の羽田を飛び立ちまずは鹿児島へ。そこからフェリーや高速船で屋久島まで向かう方法もありますが、今回は手っ取り早く飛行機で屋久島空港へ向かいました。1時間もかからずお手軽なので、島に着いてからゆっくりできます。しかしのんびりする気は当然無く、できるだけたくさんの場所を回るためレンタカーを借りたらすぐに出発しました。
初日は屋久島では珍しい快晴。湿った生暖かい風が心地良く、いつの間にか上着を脱いで半袖で行動していました。先ずは腹ごしらえに空港から程近いイタリアンレストラン・イルマーレさんへ。海を見ながらヤクシカのお肉入りのピザを頂きました。ヤクシカに会うのを楽しみにしていましたが、口にしてしまったせいか残念ながら山では会えず。次に屋久島観光センターへ向かい、ガス缶とお土産を購入。荷物は全て山へ持ち込むので宅急便を使い身軽に。山で泊まる場合は、お土産はまとめて宅急便を使うのが便利です。
この後は行ってみたかった千尋(せんびろ)の滝へ。島南部のモッチョム岳の入口から覗くことができます。屋久島にはこの他にも大きく美しい滝がたくさんありますが、巨岩のモッチョム岳と広大なスラブを流れ落ちるこの滝が見てみたかったので迷わずリクエスト。晴れていたので絶景が拝めました。
ついでに尾之間温泉へ立ち寄りましたが、残念ながら定休日。それならばと干潮時にだけ入浴できる平内海中温泉にも向かいましたが、こちらは混み合っていたので断念。時間に余裕のある登山であれば、下山後にひとっ風呂なんてのも良さそうです。
一通り観光を終えたら、忘れずに朝ご飯と行動食を調達。島内にコンビニはないので、前日に用意しておく必要があります。コンビニ的な食料品店やお弁当を買えるお店もいくつかあるので、車さえあれば容易に準備できます。ドラッグストアを使うのもありです。今回はガイドブックに載っていたしいばさんでパンを買いました。ケーキやアイス、お酒、その他食料品が置いてありトレッキングに便利です。但し焼きたてやいろんな種類を買うなら、夕方ではなく早めの時間がおすすめです。
素泊まりの民宿で山の準備を終えたら、お楽しみの夕食。屋久島の超有名店・潮騒さんで新鮮な魚介類を頂きました。屋久島グルメといえば、首折れ鯖と飛び魚です。全く臭みのない鯖のお刺身と飛び魚の唐揚げはもう絶品。銘焼酎の三岳と味わうのが最高らしいですが、私はジンジャーエールで。他にも鯖の白子や珍味の亀の手など、珍しくて美味しい海の幸を堪能しました。
まだ時間が早かったのでもう一軒はしご。同じく有名店の若大将さんで、ヤクシカのタタキと飛び魚の白子の天婦羅などを頂きました。またしてもシカを食べてしまいました。臭みが全く無く新鮮そのものでした。正直島のグルメはあまり期待していなかったのですが、ここまで美味しいとは目から鱗です。屋久島を訪ねるのであれば、山だけでなく、何とか時間を作って美味しいグルメを楽しむべきだと思います。
登山初日はまあまあのお天気。雨が降る心配が無かったので、縄文杉などの観光スポット見学にはちょうど良かったです。今回は北東側の楠川から入山し宮之浦岳を登頂するコース。シートゥサミットが目的だったので、楠川バス停から少し歩いて海にタッチしてから歩き出しました。近くには楠川天満宮があり、登山の安全をここで祈願してからスタートしました。
しばらく道路を歩くと『楠川歩道』と刻まれた標石がありました。屋久島では登山道のことを歩道と呼ぶそうです。シダが多勢を占める林道は、いつもの登山道とは明らかに違う雰囲気です。たまに白いヤマツツジやアセビを見かけましたが、本州では今が咲き始め。一足早い屋久島の植生は、やはり亜熱帯の温暖な気候が影響しているのでしょうか。序盤はシダ系が多いものの、屋久杉のような大木はまだ出てきません。屋久島にある杉は全て屋久杉と呼ぶのかと勘違いしていましたが、樹齢1000年を越えるものだけを屋久杉といい、満たないものは小杉と呼ばれるそうです。花粉が少し心配でしたが全く体に影響はありませんでした。
急な箇所が終わり道が緩やかになると、最初の見処の白谷雲水峡は間も無く。駐車場に出ると、観光客に混じって登山客もちらほら見かけるようになりました。すれ違うハイカーはソロ女性が多く、屋久島の根強い人気が伺えます。離島に単独でやって来るなんてとても逞しいです。
白谷雲水峡はゴルジュのような岩稜や吊り橋が出てきて、始めのうちは沢の地形が楽しめます。奥に行けばもののけ姫の舞台のような苔むす森となり、大きな屋久杉と共に原生の景色が広がります。運が良ければヤクシカやヤクザルに出会えることも。今回はお猿さんにたくさん会いました。
しばらく歩き辻峠まで来たら荷物をデポして太鼓岩へ。宮之浦岳始め内陸の山々は麓からは見えないので、地元の方々に「奥岳」と呼ばれているそうです。花崗岩から成る山々も長い間雨で削られたのか、角が取れた丸みのあるシルエットでなんたかほっこり。よく見るとところどころ桜が色づき、緑深い森がほのかに桜色に染まっていました。屋久島で桜が見れるなんて、思いがけないご褒美でした。明日は雨予報なので素晴らしい景色が見納めできました。
トロッコ軌道と合流したら、いよいよウィルソン株、縄文杉を目指します。トロッコはかつて切り出した屋久杉を運んでいたようですが、今ではトイレのゴミなどを運ぶのに使っているそうです。
縄文杉トレッキングに行く方は、トロッコ軌道から始まる荒川登山口を起点にすることが多いようです。それにしても登山口から縄文杉までは約20kmの道のり、延々とトロッコ道を歩いた後に、今度は縄文杉まで約700mの登りを詰め上がらなければならないとは。今まで屋久島に行く数多のお客様の接客をしてきましたが、山を始めて間もない、もしくは山を登ったことのない方には酷な山行だとつくづく感じました。今年も縄文杉トレッキングに行く方は多いと思うので、しっかりとフィットした靴と雨対策装備を進めなければと気持ちが引き締まりました。
長いトロッコ軌道が終わるといよいよ登りの大株歩道の始まり。午後を回っていましたが、ウィルソン株付近にはまだたくさんのハイカーがいました。ハートに見える位置を探して切り株内をうろうろ。見当違いの場所でカメラを構えていると、後から来たガイドさんに正しい位置を教えてもらい無事ハートを収めることができました。この後写真撮影で渋滞し始めたので、落ち着いて見学できてラッキーでした。
今回はガイドさんを多く見かけました。観光地とはいえ、往復8時間の道のりは登山経験がないとかなりハードです。帰りのバスの時間もあるので、不安であればガイドさんと一緒に歩けば安心だと思います。屋久杉や珍しい植物の話などを聞きながら歩けるのも楽しい時間になるでしょう。私もガイドさんを見つけると、興味深い話にはつい聞き耳を立てていました。
縄文杉へ行くまでには標高差があります。これでもかと木段を登った先に、ようやく縄文杉を見上げるテラスが現れ間近で観察できるようになっています。時刻は午後14時、既に誰もいなくなっていたので、静かにじっくりと見学しました。どの屋久杉よりも高齢で貫禄があり、仙人のような出で立ち。一見の価値ありです。
この日は縄文杉からすぐの高塚小屋に宿泊。二階建ての小綺麗な建物で、一階には清掃で山に入っていた観光協会の方がいたので、二階をまるまる使わせてもらいました。
生物は持って入れなかったので、それに変わるご馳走・昨日購入した飛び魚の燻製お茶漬けでとびきり美味しいアルファ米をいただきました。夕食を済ませ燻製をあてにお茶していると、予報通り雨と風が強まり、時々小屋が揺れるほどの強風が吹き荒れました。明日は宮之浦登頂ももしかしたら怪しいかも...。不安な夜が過ぎていきました。
翌朝目を覚ますとザァザァ降りの雨。登頂は諦め下る準備にかかりました。残念な気持ちで小屋を後にし、昨日ぶりの縄文杉に再会。ここで電波が入ったので天気予報を見ると、雨より風が強い模様。晴れ間も僅かにあるかもしれないと分かり、引き返すことに決めました。
とりあえずは次の拠点・新高塚小屋へ。こちらは平屋でスペースが広く大人数を収容できます。ハイシーズンはこちらの小屋が安心でしょう。いっぱいの場合に備え外にテントスペースもありました。
歩道にはピンクテープや標識があるので迷うことはありません。ただし、あと○kmの看板にはご注意を。あと○kmかと思って安心して進んでもその数kmが長く感じました。恐らく直線距離の数字なのか、期待して進んでもなかなか到着しません。屋久島の標識は辛めとの意見も多いようです。
小屋で少し休憩をしてから山頂アタック。稜線に出るといよいよ風が強くなってきました。切通しのような岩の切れ目は、風の通り道になっていて強風注意の看板も。風が収まるのを見計らって注意しながら進みました。それでも突風に煽られ、テントが入った私より重いザックの相方くんがいつの間にかひっくり返っていました。急な場所ではロープを頼りにするも、着地に失敗し水溜まりに片足をぼちゃん。ゲイターをしていても靴が呆気なく浸水してしまいました。
そんなこんなでたどり着いた山頂は当然強風の吹き溜まり。何とか写真だけ撮って早々下ると、逆方向から外国人ハイカーが。こんな嵐の日に登る物好きが他にもいました。お互いに「Be Careful,Enjoy!」と笑いながら挨拶を交わし樹林帯へ一目散。ようやく一息付いても風が落ち着くことはありませんでした。
楽しみにしていた稜線歩きは真っ白、宮之浦岳の次に高い永田岳や黒見岳もピストンするのを諦めて次の小屋へ。増水が気がかりだったので、ビャクシン沢を渡渉してヤクスギランドへ下る予定を変更して、淀川小屋まで行くことにしました。小屋に付く前に花之江河(はなのえごう)というミニ尾瀬のような高層湿原を通過。晴れていたらどんな景色が見れたのでしょう。雨のこの日は靄がかかり幻想的な佇まいでした。
後は淀川小屋を目指すだけ。相変わらず健脚の標識に心折れそうになりながら、気がついたら小屋に到着しました。この天気で小屋にやって来る人は皆無だろうと思っていたら、後から後から登山者が入ってきました。どうやら登山口に近いため、前日のうちに入山して翌日アタックする人が多いようです。
小屋の中は広々としていて大人数が泊まれますが、標高が低くネズミが出るそうです。そういう訳で食べ物を床に置いたまま寝るのは厳禁、ザックの中も安心できません。梁に吊るして侵入を防ぐのがベストだそうです。実際にいたかどうかは分かりませんが、朝までぐっすりでした。
最終日は登山口まで約1時間、帰りのフライトも夜なのでのんびり下りました。あっという間に淀川登山口に到着してしまい寂しいような物足りないような。これから出発のハイカーが準備しており、今から山に行けるなんて少し羨ましい気持ちが芽生えてきました。バス停には紀元杉という大木があり、これで屋久杉の見納めとなります。この日は晴れ間もあり、バスの車窓から昨日見ることが出来なかった太忠岳の岩峰が見えました。
町に出てからまずは腹ごしらえ。やっぱりお魚が食べたかったので、安房のかたぎりさんで飛び魚のひつまぶしや鯖のアラカルトを頂きました。これも絶品、下山後に最高のご褒美でした。
満腹幸せのまま空港に戻り、目と鼻の先のお宿・まんてんで今度は日帰り入浴。15時から立ち寄り湯が可能になるので、屋久島ハイカーによく利用されています。飛行機に乗るまでのんびりするのも良いですが、お土産を見たりカフェでお茶したり。お茶のつもりが鯖を頂いてしまいました。我々は最後の最後まで屋久島を満喫、飛行機の窓から見えた島の夜景に少々おセンチになってしまいました。
山だけでなくグルメや観光に、非常に充実した4日間でした。また行く機会があれば、晴れの稜線をぜひ歩いてみたいです。そして美味しいグルメも再び味わいたいです。
【ウエア】
(アンダー)ファイントラック/ドライレイヤーベーシック...雨に濡れた日は特に肌がドライな状態が快適に感じました。雨が続き湿気った状態が長い屋久島では一押しのアンダーウエアです。3日連続で着ても冷えることなく臭いも気になりません。
(シェル)ミレー/ティフォン50000ジャケット...蒸し暑い時間帯も激しい雨風の中でも、蒸れにくくストレスがありませんでした。
(インサレーション)薄手フリースと化繊の厚手ジャケット、ダウンパンツを持参。シュラフにくるまったら暑かったです。屋久島では過度な防寒着はかえって荷物になるので調整を。
(グローブ)レイングローブと薄手メリノグローブを持参しましたが使いませんでした。
【ギア】
(ザック)2泊3日小屋泊装備が収まるオスプレイ/ミュータント52...着替えは下山後のみ、山中での替えは靴下のみ。3シーズンシュラフ、マット、ツエルト、移動時に履くローカットシューズがギリギリ入るサイズでした。
(シューズ)モンチュラ/ヤルテクノ...適度な軽さと剛性で長いトロッコ軌道も雨の岩場通過も滑らず歩けます。行き帰りはザックに詰め込むので重くないシューズがベストです。
ゲイター、レインパンツは必須装備、折畳み傘があれば休憩時に重宝します。
フォトギャラリー
・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。