燕岳から餓鬼岳へ 土砂降りテント泊

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投稿者
るんちゃん(おとな女子登山部)
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日程
2024年09月17日 (火)~2024年09月19日 (木)
メンバー
単独
天候
1日目 晴れ/2日目 曇→雨/3日目 雨
コースタイム
【1日目】中房温泉(150分)合戦小屋(60分)燕山荘
【2日目】燕山荘(40分)北燕岳(120分)東沢岳(210分)餓鬼岳小屋
【3日目】餓鬼岳小屋(120分)大凪山(200分)白沢登山口
コース状況
・穂高駅から中房温泉まで定期バスあり。1時間ほどの運行で1500円。
・燕山荘テント2000円。水は1L200円、喫茶メニューは18時まで頂けます。テン場専用トイレあり。
・餓鬼岳小屋テント2000円。水はペットボトルを買います。外トイレは小屋の近くなのでテン場から5分くらい。紙が無いので持ちこみです。
・北燕岳は東側を巻いた後、切れ落ちたザレ場のトラバースがあります。その後は東沢乗越まで延々と下り東沢岳まで登り返します。刈り払いされてない朝露に濡れた笹藪の道なのでレインパンツやゲイターは必須。
・剣ズリ付近は梯子や岩稜地帯ですが難しい箇所はありません。
・餓鬼岳小屋の方によると東沢の破線ルートは崩壊あり、できれば白沢を登ってくるよう勧められました。
・白沢登山口までは岩場の急下降やザレ場トラバース、沢の渡渉数回あります。ピンクテープ・ケルンがあるので迷いにくいですが難路です。
・餓鬼岳小屋でタクシー呼んでもらえます。最短の信濃常磐駅までは歩いて2時間ほど。タクシー料金は3000円程度。中房温泉まで戻るとさらにかかります。
難易度
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  • おとな女子登山部

感想コメント

 北岳へ行く予定を急遽変更して、まだ未踏の餓鬼岳へ行ってきました。最短は白沢からのピストンですが、車が無いのでアクセスしやすい合戦尾根から登り、燕岳から縦走して向かいました。アップダウンの多い尾根で骨が折れましたが、行動中に降られたのは3日目だけ。テントが浸水するほど激しい雨にも拘わらず、トラブル無く無事下ることができました。

 初日はあずさに乗ってまず穂高駅へ。数年前の初めての北アルプスもこの穂高駅からスタートしました。穂高駅の近くには登山者駐車場があり、中房温泉から燕岳、さらに槍ヶ岳や穂高連峰を縦走する多くのハイカーが利用します。さすが人気の燕岳、一番遅い中房行きのバスでも満車で、登山口に着いてからも下山してきた人で賑わっていました。
 合戦尾根は急な箇所もありますが、適度な所に休憩ベンチがありとても歩きやすい尾根です。テントの重荷を積んだ身にとってはありがたかったです。途中の合戦小屋ではスイカ休憩で賑わっていました。私も腰を下ろして炭酸ジュースをいただきます。合戦小屋を過ぎると森林限界は間もなく。行く手には表銀座の縦走路と槍ヶ岳が見えてきました。そして花崗岩の城・燕岳も。皆足を止めて歓声を上げていました。
 さらに登って想定時間内に本日の拠点・燕山荘に到着しました。ほぼ満杯のテン場を一瞥し急いで受付へ。水の補給は後にして足早にテン場へ向かいます。山荘側はいっぱいでしたが、山側でトイレも近い位置に良い場所が残っていました。素早く立てたら給水しに再び山荘へ。明日以降はきつくて地味なコースだし今日くらい贅沢にしようと、燕山荘名物のケーキをオーダーし優雅な時間を過ごしました。
 夜は比較的暖かく、隣に張っていた知らないおじ様が「暑くて眠れんわい!」と独り言を言っていたくらいです。この日はちょうど仲秋の名月。明るく照らされた燕岳や有明山を見ながら眠りにつきました。

 翌日はご来光を見ながら縦走開始、少し寝坊して朝5時に出発しました。燕岳でご来光を眺める人たちとすれ違い、北燕岳付近で朝日を眺めます。北燕岳の岩峰は巻いて東側を急降下してザレた斜面をトラバース。燕岳の愉快な時間はあっという間に終わってしまいました。餓鬼岳までは約7時間、雨が降る心配が無さそうだったのは幸いです。
 餓鬼岳方面へ縦走する人はほとんどいませんがこの日は単独の男性が歩いていました。聞けばこのまま東沢から下降するか、餓鬼岳まで行って白沢を下りるか悩んでいました。私は当初合戦尾根ではなく破線の東沢から登る計画を立てましたが、餓鬼岳小屋にテン場予約をした際、東沢は崩壊して危険なので変更するよう促されました。その話を伝えると、その方はまた悩み始めたので私は先を急ぎました。
 東沢乗越は沢沿いなだけに、このまま下山してしまうのではと心配になるほどの距離を下りました。その後は稜線に出るまでひたすら登り返し。笹の海を這い上がったので全身朝露でびっしょりしました。稜線からはこれから向かう餓鬼岳、唐沢岳、さらには高瀬ダムから続く裏銀座の山々が見えてとても爽快でした。表銀座のようにこのまま気持ちの良い稜線歩き、とはいかず再び樹林帯を下っていきます。人気の無い理由はこのアップダウンでしょうか。
 そしてまた登り返し。登っている途中で珍しく人に出くわしました。「この下りまだ続きますか?」向こうもうんざりした様子で聞いてきます。「まだまだ続きますね...」申し訳ないですが事実をさらっと伝えてすれ違います。久しぶりに人と話せたので気分が少し晴れました。岩の基部に着いてようやく景色が開けました。梯子を使っての登り下り、たまに朽ちかけた梯子もありましたが危ない箇所はありません。白い花崗岩を攀じ登りながら、最後に求めていた稜線歩きを楽しめました。
 餓鬼岳小屋の前に小さなテン場があったので、先に荷物を下ろして小屋へ向かいます。安曇野の夜景が見えそうな右端側に陣取りました。受付を済ませてゆっくりお昼ご飯を食べながらこれからの計画を練っていると、ポツポツと嫌な音が。餓鬼岳登頂後に元気があればその先の唐沢岳まで...なんてプランを考えていたところでした。電波が入ったので天気を確かめると、少し待てば止みそうだったのでしばしの待機。しかし雨は弱くなっと思えば急に強くなり安定しません。小降りの時にフライの張りを強くして戻ると更なる大雨が。唐沢岳はもう諦め、餓鬼岳周辺をゆっくり散歩しようと計画を立て直し、やかんに火をかけました。お茶を飲んでいると、テントの外で慌てて駆けて行く人の足音がしました。可哀想にと思いながら、地図や撮った写真を眺めたり、雨雲レーダーと睨めっこしたり、なんやかんやしていたらいつの間にか暗くなり、今度は夕食の準備をすることに。雨は止まないし、もうすっかり根が生えたのでさらに寝る支度に取りかかりました。すると今度は稲光と雷鳴が轟く始末。沢の増水が気になるところでしたがそのまま寝入ってしまいました。
 
 翌日目を覚ますとまだ雨はしとしと。それになんだかインフレーターマットがしっとり。なんとインナーテントがびっしょり濡れていました。結露だけではなく完全に雨漏りしていて、ダブルウォールなのに何故?と焦ってしまいました。とりあえず布巾で拭いては絞りを繰り返し、排水作業に取りかかります。どうやらフライの防水がもう効いていない模様。このダンロップのVS1は10年は使っている我が家で、ポールが折れたら一節ずつ変えたり、ほつれや空いてしまった穴は縫い直したりしながら大切に使ってきました。重量はあっても乾きは早く丈夫で、最近の軽量テントとは趣が異なり質実剛健な見た目の愛すべきテントです。そろそろ限界が来たのでしょうか。それにしても浸水しても眠りが妨げられなかったのはさすがVSです。
 雨は止みませんが、下山の時間もあるので重い腰を上げました。ある程度片付けたらテントの外に躍り出て一気に撤収。晴れていたら鼻歌でも歌いながら乾いたテントをふんわり畳めますが、今日はスピードが要、濡れたまま収納袋に放り込みます。雨の日は大きめの袋が仕舞いやすくて安心です。
 思ったほど降っていなかったので、そのまま餓鬼岳の山頂へ向かいました。風は強かったですが唐沢岳も見えました。僅かな時間でしたが山頂からの景色はとても心地が良く、下山するのがとても惜しかったです。

 白沢までの道は楽ではないとわかっていましたが想像以上の難路でした。前半は木の根や倒木が行く手を邪魔して歩き辛く、岩場は急なので落石を起こしがちです。しかも雨。適度に休憩を入れて沢下りに備えました。
 沢に降りるにはまず崩れかけた支沢を何度か横切ります。沢に入ったらピンクテープやケルンを目印に、渡渉や下降、時には梯子を登り、右岸左岸と頻繁に行き来します。印を見落とさなければそれほど危ない道ではありません。登ったら気持ちの良さそうなナメ滝を見学したり、沢登りならどうやって滝上に抜けられるか想像したりできるので飽きません。天気が良ければきれいな流れを眺めつつ登れるので、白沢から餓鬼岳を目指すのも楽しそうです。
 最後に断崖に作られた桟道を渡ります。写真で見ていた限り細くて怖そうな印象でしたが、手すりも付いていて案外安定していました。
 林道の終点には小屋で呼んでもらったタクシーが時間通りにお出迎え。信濃常磐駅まで歩く方も何人かいましたが、私は早く帰って洗濯したかったので楽な方を選びました。

 信濃常磐駅は無人駅。雨はすっかり落ち着き、涼しい午後の日差しが降り注いでいました。キヨスクなどはないので、近くのコンビニで調達したカフェラテで一服しつつ電車を待ちます。向かうのは松本方面。餓鬼岳から燕岳、大天井、常念へと続く安曇野の景色を眺めながら電車に揺られるのはかなり贅沢な時間でした。たまには電車で遠くの山へ出かけるのも悪くないです。

【使用ウエア】
(上)ファイントラック/ドライレイヤークール+ミレー/ヘザーメッシュクルー
(レイン)ミレー/ティフォン50000ストレッチジャケット+パンツ...縦走中に雨が降っていなくても露のついた笹で濡れるのでティフォンパンツは履いていました。ストレッチが効くので足上げが非常に楽で重宝できます。
(インサレーション)化繊プリマロフトジャケット+ダウンパンツ
【使用ギア】
(ザック)オスプレイ/ミュータント52
(マット)サーマレスト/プロライト
(シュラフ)イスカ/エア450

フォトギャラリー

仲秋の名月。雲海と月明かりに彩られた有明山。

ザ燕岳な光景。

レアチーズケーキと紅茶セットをいただきました。

テン場から見上げる夜の燕山荘。

翌朝すっきり晴れた有明山と南アルプス方面。

眼鏡岩と富士山。

きつい登り返しが終わると燕岳がまだ見えてました。

まだ登り返し終わらなかった。

岩稜帯が続きます。

嫌らしいザレ場。滑らないように慎重に通過。

このまま岩場の稜線歩きかと思ったらまた激下って登り返し。

グリーンの高瀬ダムが見えました。

もうすぐゴール。歩いてきた稜線を振り返って。

テン場着きました。安曇野の街並み。夜景を楽しみにしていたのに。

翌日雨上がりの餓鬼岳山頂から唐沢岳。

下りのガレ場にはお猿さん。危ない場所も何のその。

倒木多くて下るのも一苦労。くぐるか跨ぐか悩みます。

白沢は増水してなくて安心しました。

名物のほっそい木道。

危険な場所には必ずいる餓鬼。

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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