北アルプス 剱岳 登攀 敗退 (前剱 迄)

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投稿者
田渕 幹敏
日程
2013年04月28日 (日)~2013年05月01日 (水)
メンバー
ららぽーと横浜店 田渕 (TL)
他 1名
天候
04/28 晴 ⇒ 04/29 霧のち晴 (強風) ⇒ 04/30 吹雪 ⇒ 05/01 霧のち雪
コースタイム
【04/28】
室堂ターミナル ⇒ (180) ⇒ 別山乗越 ⇒ (25) ⇒ 剱沢幕営地 ⇒ (20) ⇒ 剱山荘 (剱山荘 泊)

【04/29】
剱山荘 ⇒ (30) ⇒ 別山尾根 稜線 ⇒ (120) ⇒ 前剱山頂 ⇒ (80) ⇒ 別山尾根 稜線 ⇒ (10) ⇒ 剱山荘 (剱山荘 泊)

【04/30】
剱山荘 ⇒ (60) ⇒ 剱沢幕営地 ⇒ (100) ⇒ 別山乗越 (剱御前小舎 泊)

【05/01】
別山乗越 ⇒ (60) ⇒ 雷鳥沢幕営地

※ 単位は分。
※ 休憩及び無線等の実験時間を含みます。
コース状況
室堂ターミナル周辺は圧雪されており歩き易い。

室堂平から別山乗越までの雷鳥沢は、行きはズボズボと足が沈む湿った軟雪で、帰りは上部がカリカリのアイスバーンで下部が表面のみクラストした軟雪。

剱沢は、入山者が少なく脛から膝程度のラッセル。
帰りは吹雪で視界が効かなかったが、状況からすると雪崩のリスクもありコース取りには気を遣った。

剱山荘から別山尾根に上がるまでは膝上のラッセル。
尾根上は概ね状態は良かったが、雪が緩んでいるヶ所や雪庇には注意。

前剱の雪壁は、雪が緩んでおり注意が必要。
シェルンドも隠れている。
メンバーの技量によっては、スタカットもしくはフィックスを張って通過する方が良いだろう。

春の北アは天候により条件が大きく変わるので、アイゼンとワカンなど変化に対応出来る準備が必要。
天候が荒れると完全な冬山に戻るので、装備は最も悪い条件を想定した物を用意したい。
難易度
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感想コメント

オープン直後の大雪でアルペンルートが通行止めになったりと、今年の立山は開山から慌ただしい雰囲気。
それでも初日は好天で、室堂平は沢山の観光客でいっぱい。
雷鳥沢のバーンは、スキーヤーやスノーボーダーが思い々々に描くシュプールで溢れていました。
初日は剱山荘まででしたのでのんびり登山。
山岳警備隊の詰所でヤマタンをお借りして、いざ出発です!
久しぶりに25kg程の荷物を担いだので、雷鳥沢の登りは歩き応えがあって充実でした(笑)

今回は通信手段として、家電量販店等で購入出来る「特定小電力トランシーバー(特小)」ではなく登録申請が必要な大出力の「デジタル簡易無線トランシーバー(デジ簡)」を使ってみました。
デジ簡は最大5Wの高出力(特小の500倍)である為、無免許で使用出来る無線機としては最も遠い距離間での通信が可能です。
ザイルワーク等でのパートナー間での通信は勿論、緊急時の通信としても有効な可能性を秘めています。
今回は付属の通常アンテナのみで通信状況を確認して来ましたが、別山乗越の両側(雷鳥沢と剣沢)では、どちらかがコル付近まで上がらないと通信は届きませんでした。
(高性能な外付けアンテナを付ければ、恐らく峠を挟んでも届くと思いますが…。)
但し尾根上に上がってからは殆どの場所で、遠くは松本を含む麓の業務利用の通話が入ってきました。
緊急時の救助要請に有効な可能性は高いと思われます。

二日目は剱岳へのアタックを予定していましたが、朝から約25~30mの強風でした。
予報では午後から更に崩れるとの事。
ガイドパーティーを始め出発するグループもありましたが、我々はメンバーの技量を鑑み早々に前剱の雪壁を目標に切り替えました。
実際は予報より遅くまで天気が持ち、行けば登頂出来たかもしれません。
しかし、今回はこの判断で良かったと思います。
安全と挑戦の、そのギリギリのバランスを見極めるのは中々に困難ですね。
来年もまたチャレンジさせて欲しいと、剱岳に頼んできました!

別山尾根上のコンディションは概ね良好でしたが、春山らしく温度変化が激しい為雪は緩みがち。
表面が固くても、その内側が空洞の様にスカスカである事が多かったです。
はまるとバランスを崩したりするので、特に雪壁の降り等は気を遣いました。
また当日は風が強かったので、稜線での急激な冷えや風に因る転滑落にも注意しました。
別山尾根は無積雪期の一般登山道ですが、積雪期はバリエーションルートと考えた方が適切です。
天候の不安定さや、岩稜や雪壁の登攀難易度も含め、決して易しい登路ではないです。

前剱の雪壁はとても素敵でした!
実際の斜度は45~50度位かと思いますが、体感ではもっとキツク感じます。
富山側はスパッと切れ落ちて、足元を覗けば遥か下の武蔵谷への鞍部が小さく見えます。
まるで空中に浮いているかの様な爽快感は、本当に気持ちが良かったです。

翌日は予定では下山日でしたが朝から吹雪で、ひたすら脛上から膝上のラッセルでした。
コース状況にも書きましたが、やはり今の時期でもワカンはあった方が良さそうです。
今回は、持って来なかった自分の判断ミスを悔やみました^^;
県警山岳警備隊の方の話しでは、瞬間最大風速は30mを超えていた様です。
久しぶりに、ただ歩いているだけで風で転びそうになる感覚を思い出しました(笑)
かなり濃いホワイトアウトで、油断するとリングワンダリングに陥りそうになります。
この現象は脚の利き等に因る僅かな歩行の偏りが原因と言われており、その他にも地形の影響等もあるかもしれません。
今回の自分は、気を付けていないと右へ右へとずれる傾向がある様に感じました。
数メートル先のパートナーも見えない程のホワイトアウトは、去年の谷川岳以来でしょうか。
ロストによる体力消耗と雪崩を最も警戒していた為、基本は僅かな風雪の切れ目に赤旗が覗くのを見極め、少しの視界も効かない時間帯はGPSを頼りに進みました。
また、途中から風雪に雨や霙が混じる様になった為どうしても体が濡れます。
典型的な低体温症リスクの高い天候でしたので、体温の管理にも気を遣いました。
別山乗越まで頑張ったのですが、ココで前述の山岳警備隊員に出来れば停滞する様にとの指示を受け、即座に従う事を決めました。
室堂までもう少しでしたので残念でしたが、おかげで夕方の僅かな晴れ間にそれは素晴らしい夕焼けを見る事が出来ました!

翌日もガスは変わりませんでしたが、風はかなり弱くなり快適に室堂まで降る事が出来ました。
時間がたっぷりあるので、「みくりが池温泉」でお湯に浸かり富山の御馳走を堪能しました。
深海魚"げんげ"の唐揚げ、美味しかったです!

今回は小屋泊まりだったのですが、「剱山荘」も「剱御前小舎」もとにかくスタッフが気持ち良かったです。
暖かく細やかな気遣いがあり、とても素敵な小屋でした。
ご飯も美味しかったですよ!

雪山シーズンも、もう終わりですね。
今年の雪山は、行けてあと1~2回でしょうか?
最後まで怪我の無い様に気を引き締めて、遅い冬を楽しめればと思います!

フォトギャラリー

アルペンルートでの一コマ。ちょっとカッコ良かったので載せました(笑)因みにスキー板はパートナーの物で、僕のではありません^^;

行きには全面凍結していた黒部湖は、帰りには全て融け周りの雪も消えていた。30日の吹雪は、恐らくココでは雨だったのだろう。

コレがヤマタン。利用者が雪に埋まって生体反応が無くなっても、理論値で約三ヶ月、実測値で約一ヶ月以上も電波を出し続ける。

パートナーはテレマークスキー。雷鳥沢にて。初日は素晴らしい晴天に恵まれた。

剱御前小舎にはスキーヤーやスノーボーダーが沢山。

剱沢にて。遅れているパートナーからのデジ簡での通信を待っている。

明日、登攀予定の前剱の雪壁。凄い所に道がついているなぁ、と思わずニンマリ。

剱山荘。中はとても綺麗で居心地が良く、スタッフも温かく感じが良い。

来シーズンに向けて剱沢でスキー練習。テレマークは難しすぎてダメでした^^;

翌日は朝から強風で、目標を前剱の雪壁までに変更。別山尾根までの登りは中々に急だが、短いので直ぐに終わってくれる。

尾根上の風景。天気良くないですね^^;

前剱の雪壁が見えてきた。やっぱりカッコ良いっ!!!

雪壁を登攀するパートナー。何て魅力的な壁だろうか!

慎重に、素早く、確実に。気持ち良く研ぎ澄まされていく精神と、美しい風景に癒される心。今その二つが、絶妙なバランスで僕の中に同居している。

帰りに出会った「同志社大学 山岳部」のパーティー。

雪壁を下降中のパートナー。隣では同志社大パーティーの監督と先輩が、新入生をフィックスを張って降ろしている。良い山行を!!

別山尾根の稜線にて。地吹雪が美しい。

吹雪の中の下山。降ったばかりの雪に足をとられ、視界も無い。ワカン、持って来るべきだったなぁ…^^;

一筋に僕のラッセル跡だけが剱沢を貫く。コレはコレで気持ち良いですね(笑)

夕刻、僅かな晴れ間に素晴らしい夕焼けが顔を覗かせた。明日、立山を離れるのがとても寂しい。でも、ありがとう!

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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