山の辞典 : さ行

雪庇(せっぴ)

積雪地帯の稜線や尾根、構造物に降る雪が強風によって運ばれ、風下側に吹き溜まった積雪のこと。冬山における雪庇は季節風が当たる向き、風上と風下斜面形状や傾斜により、大きさや形は様々である。風下にできる吹き溜まりが「雪庇」の定義であり、庇(ひさし)は雪庇の一部である。気象変動があるため、雪庇の発達具合(形成時期や大きさや堅牢度など)も変動するが、その形状は一定の傾向がある。雪山登山においては可能な限り、事前に情報収集が望ましい。例:鹿島槍ヶ岳がある極端な非対称山稜にできる長野県側に張り出すタイプ例:北アルプス大日岳のように斜面傾斜が風下側で緩い場合、稜線から40m前後もの巨大な「吹き溜まり」ができ、その先端に脆弱な庇が形成される。例:稜線の向きや降雪時の風向により、同一稜線上だからといって、決まった側のみできるとは限らない。また、不安定な両雪庇が形成されることもある。冬山登山では雪庇の内部構造を確認することは困難である。雪面上の亀裂に注意するのは当然だが、雪庇先端から十分な距離をとる、歩きにくくても風上側の地面を歩くなどの判断が重要である。特に視界不良時は行動を控えたいが、やむを得ず行動する場合はロープを使う技術と高度な判断能力が求められる。