茶臼岳(那須)~どぶ汁を求めてロードムービーIN北茨木~

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投稿者
中澤 
ららぽーとTOKYO-BAY店 店舗詳細をみる
日程
2015年02月10日 (火)~2015年02月10日 (火)
メンバー
銀座店 向山
調布店 小野
藤沢店 川上
ほかアルバイト2名
天候
曇り時々晴れ
コースタイム
大丸温泉駐車場ー(40分)ー峠の茶屋駐車場ー(70分)ー峰の茶屋避難小屋ー(35分)ー茶臼岳山頂ー(分)ー峰の茶屋避難小屋ー(30分)ー峠の茶屋駐車場ー(30分)ー大丸駐車場
コース状況
雪が深いため輪カンがないと樹林帯は苦しいです。避難小屋より上部は岩稜帯のため雪の踏み抜きに気をつけてください。雪があっても歩きにくいところが多いので、道標どおりに進んだ方が結果的には楽です。
アイゼンをひっかけて転びやすいので要注意。6本爪以上のアイゼン必携です。また耐風姿勢をとるためにピッケルも必携です。
難易度
Google Map
  • スタートナビ
  • おとな女子登山部

感想コメント

ある2月7日の休日、銀座のギャラリーに行ったついでに寄った銀座店で「10日休み?那須岳行こう」と誘われ、突如9日深夜から那須岳に出発することになりました。

積雪が多かったのですが先に入山したパーティーのおかげでトレースもあり、峰の茶屋避難小屋までは比較的スムーズに進むことができました。強風で有名なこのあたりの山域ですが、この日もけっこう風が強くて小柄な女子たちは起き上がり小法師のように何度かころころ転がっていました。歩いて足を上げるとそのまま身体が浮いちゃうみたいです。体重が軽いっていうのも大変なものなのだと思いました。

数年前の記録だと避難小屋の扉は外されていたようですが、今はしっかり二重の扉がついています。森林限界を越したあたりからけっこうな強風だったので、この小屋があるのとないのとではその後の行程自体が変わっていただろうと思います。
小屋から山頂までは夏道30分程度の距離なのですが、途中の岩稜帯は踏み抜きそうな歩きにくい道で、足首に不安があったのと吹雪いてゴーグルが凍っていたので、かなりゆっくりになってしまいました。
この日はみんなゴーグル曇っていたのに、川上のだけすごくクリアでした。ノースフェイスのバラクラバのおかげだと本人は言うのですが、わたしが「実はエラ呼吸なんじゃね」説を唱えると川上はやや怒っていました。たぶんお腹が減ってきていたんだと思います。

下山後スキー場に隣接している「休暇村 那須」という施設で日帰り入浴(¥860)をし、どこで飯を食べるのだという会議をしていると、そもそも小野さんを茨木の実家付近まで送っていく約束をしていたようで、だったらば茨木でどぶ汁食いたいもんねオレ、と向山氏。
どぶ汁とは、茨木の沿岸部で食べられる味噌仕立てのすばらしいアンコウ鍋のことである。わたしも20代後半に青春18切符で鈍行に乗り、北茨木までわざわざ食べに行ったことがあるけれど、3000円程度でアンコウのあらゆる具とアン肝が入った鍋が食べられ、その雑炊にいたってはフグをも凌ぐうまさだった記憶があった。冬が来るたびにどぶ汁のことを思い出してはまた食べてみたいと思うのだけど、真冬の北茨木にわざわざ行くことがなく、いままでその1度きりしか食べたことがなかったのだが、まさか山の帰りにどぶ汁を再び味わえるとは!

わたしと向山さんはどぶ汁食いたいハイテンション!で登山の疲れもひととき忘れ、19時前には着くでしょ~と小野さんの地元の友人おすすめの「天心丸」という店にカーナビを設定。しかし小野さんが店を予約すると「・・・もう少し早く来てもらえますかぁ~?」と店のおじさんに言われたようだった。店は21時までだし移動中だから時間が読めませんと答えると「じゃ、できるだけ早く来てくださいね~」と言われたそうだ。
そんな強気な対応にややビビるわれわれ。もしかして頑固おやじが私語厳禁でどぶ汁を食わせるような職人肌の店だったらどうしようか・・・とわたしはやや不安に思った。

とりあえず行ってみようということでカーナビの示すまま茨木を走行していくと、突然土手にぶち当たり道路がない・・・なんなんだここは!ナビが間違えて近所のおじさんがジョギングしそうなのどかな土手に案内しているではないか。さすが田舎道だなぁ~とこのときはまだ余裕で笑い、あ~腹減りましたねぇ~などといつものように下らないあれこれを喋りまくっていたが、しばらく走るとナビは暗い山道を示しはじめ、「!?」と思いつつも素直にナビに従い走ること数十分。
街灯はほとんどなく、蛇行する道のカーブで慎重にハンドルを切っていくとカーライトの明かりで道路の両脇の雪が凍って残っているのが見えた。道は暗く長くアップダウンを繰り返し、しだいにわたしの意識も朦朧としてきて一時眠ってしまったようだった。
いったいこの道の向こうにまともな道路があるのだろうか・・・暗い山道を走り続けてみんな口数が少なくなり、約束の時間に店に到着するかやや不安になっていたが、川上にいたっては後部座席で終始熟睡していた。

ようやく長い山道が終わり大きな通りに出たが、ナビが示す方向を眺めてみるとそこにはこんもりとした真暗な山のシルエットがあった。この時点でわれわれはかなりローテンション、どぶ汁食いたいハイテンション!はさっきの土手に置いてきてしまったみたいだった。
不安に思いつつナビに従い車を走らせ、通りを曲がってやや細く暗い道に入っていくと車一台分の幅しかない狭い道の端にカーライトに照らし出された看板が見えた。
「倒木注意」そう書かれているのが目に飛び込んできた。その瞬間、向山さんはブレーキを思い切り踏み「無理無理無理」と言い「急がばまわれだよ、うん」と言ってナビを設定し直した。
路面凍結街灯なし蛇行アップダウンだけでも無理なのに、倒木にまで神経を使わなければいけないような体力は誰にも残っていなかった。今日は夜中の3時に出発しているのだ。車中は空腹睡魔倦怠不安の四拍子となり、なにも知らず熟睡しているのは川上だけだった。

やや遠回りにはなったが一般道は快適で安全で、高萩という町まで出たときは見慣れたチェーンのドラッグストアやファミリーレストランの明かりがまぶしく、ここからもうすこしです!と地元の小野さんが教えてくれたので、ここまで来ればもうやばい山道はないだろうと一同ほっとした。
どぶ汁ハイテンション!が戻ってきたわたしは、なんか今日はドキュメンタリー番組みたいになっちゃってますねー、撮影しときたかったですねーとくだらないことを言って笑わせたら左折し忘れてタイムロス。残念そうな後部座席の女子たち、すまなかった。

そしてようやく「天心丸」に到着した。19時を10分過ぎていたのでややびびりながら扉を開ける。想像していたよりずっときれいな店だった。座敷に通され、どぶ汁以外にあん肝、魚の天ぷら盛り合わせを頼む。「あん肝は何人前にしますか?」と尋ねられたので「とりあえず1人前」と答えた。
あらかじめ電話で注文していたどぶ汁3人前(1人前2,250円)がカセットコンロにかけられ、すぐにお通しのいかの塩辛が運ばれてきた。自家製でほどよい味つけでうまい。これはなかなか期待できそうだと思っていると直径7×4cm、高さ4cmほどの円柱状のあん肝がテーブルに。ポン酢、もみじおろし、小口ねぎがかけられている。箸で切ってきれいなピンク色の塊を口に運ぶと、瑞々しい新鮮さと濃厚なコクが舌の上に広がり、臭みというものがまったくなかった。こんな刺身みたいなあん肝ははじめて食べた。このボリュームで1人前。しかも1,000円。かなり期待できる。

どぶ汁がいいかんじに煮えてきたので小野さんが取り分けてくれた。どぶ汁はあんこうの身、軟骨、皮、内臓がバランスよく入れられ品のいいあっさりした出汁が出ていた。そこに味噌とあん肝を入れてコクを出していたがほどよい味噌加減でうまい。昔食べたのはもっと濃いめだったが、このあっさり加減の味つけもすばらしい。そしてその出汁を吸った大きな輪切り大根がほくほくとして、疲れた身体を温めてくれた。
これは当たりですね~とほくほくしながら食べているわれわれの前に、高く盛られた白っぽい固形物が載った大皿がテーブルに置かれた。
「魚の天ぷら盛り合わせです」とお店のおばちゃんはにっこり笑って言った。
一瞬なにかと思うほどの巨大な天ぷらに一同衝撃を受けた。店のおじさんが出てきて「手前のはブリ、そのうしろはヒラメ、横のちいさいのは鰆・・・」と嬉しそうに天ぷらの種類を説明してくれた。これが電話のおじさんか。いい人じゃないか。あとで聞いたら、基本的に前日予約までしか受け付けていないのだけど、今日はたまたま先客がいたので電話に出てくれたらしい。それで早く来いと言っていたのか。
天ぷらの横にキッチン鋏が置かれ、これで切って食べてね、と言っておばちゃんは去って行った。
キッチン鋏で天ぷらを切るのははじめてだったが、平たいヒラメを丸ごと天ぷらにしているのもはじめて見た。魚の味は脂がのっていておいしく、みんなでさくさく切っては食べ切っては食べしたのだけれど、天ぷらの山は一向になくならない。これが1,500円っていうのはなにかの間違いじゃないかというような量。
ふとメニューをみると下のほうに「料理はすべて1人前の金額です」と書かれていた。もしかしてこの天ぷらは4人前なのでは・・・と不安になり、天ぷらの油にも負けはじめてわたしはややテンションが下がってきていた。
ふと、うしろのおじさん3、4人組のテーブルに目をやると戦艦のような巨大な船盛りが。もしやあれがお刺身盛り合わせ1人前2,300円なのだろうか・・・。心なしかおじさんたちもやや食べ疲れているように見えた。
天ぷらは持ち帰ることになり容器を2つ購入(1個50円)し、川上に持って帰るよう勧める。二度ほど断っていたが、そのうちに、そんなに欲しくないけどみんながいらないのなら的にブリなどの魚をぎゅうぎゅうに詰め、ニンジンも入れろと言うとあたしはニンジンはいらないですときっぱり断られた。川上はなんだかんだでやはり魚がほしかったのだ。明日の弁当にでも入れなさい。

天ぷらとどぶ汁でだいぶお腹がいっぱいになった頃、雑炊を3人前(1人前ごはん165円、たまご100円)頼んでがしがしとたまご入り雑炊を4人で平らげ、もうなにも思い残すことはないという気分でお会計を頼んだ。ここでまさかの落とし穴で天ぷらがめちゃくちゃ高かったらどうしよう・・・という不安は杞憂に終り、これだけ食べてひとり2,500円ほどだった。信じられない。

思えば那須の温泉でどぶ汁に盛り上がり山を越えてここまでたどり着いた。カーナビが北茨木の大津町の半島のような場所にあるこの店を、残り7km、4km、2km・・・と近づいていき、とうとうそのナビの線がすべて消えてしまうまでの間、われわれはまるでウィニングランのように車を走らせ勝者の気分で天心丸の駐車場にゴールした。
昼間は茶臼岳の突風にころころ転がっていたとは思えない激しく長い1日は、北茨木のどぶ汁屋で天ぷらの思い出とともにわれわれの心に刻まれたのだった。

フォトギャラリー

峠の茶屋駐車場あたり

雪だるマン

けっこーサムい

雪に埋もれた鳥居

足も埋もれます

なかなかの斜面 

中澤すでに弱ってます

ここからへんから強風

峰の茶屋避難小屋の中

ここから山頂目指します

岩岩ゴツ道です

足首弱る

茶臼岳山頂 ゴーグル凍りすぎで外す

灯篭エビのしっぽ

踏み抜かないよう慎重に下山します

下山は早し 雪だるマンまで戻ってきた

スバラシイどぶ汁とあん肝に喜ぶ川上

立方体のようなあん肝とどぶ汁

顔が隠れる魚の天ぷら盛り合わせ

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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