東丹沢 早戸大滝を訪れる ~ 紅葉近づく早戸川で大滝巡り (丹沢山北面)
- 投稿者
-
伊藤 岳彦
横浜西口店
- 日程
- 2016年10月29日 (土)~2016年10月29日 (土)
- メンバー
- 単独行
- 天候
- 曇
- コースタイム
- 魚止橋(15分)伝道(30分)最初の渡渉点(30分)雷平(40分)早戸大滝(30分)雷平(20分)雷滝(20分)雷平(40分)伝道(15分)円山木沢大棚(15分)伝道(15分)魚止橋
- コース状況
- 本文をご参照ください
- 難易度
感想コメント
早戸大滝
日本の滝100選にも選ばれている、丹沢三滝の一つ「早戸大滝」。
紅葉のピークはまだ先でしたが、丹沢を代表する名瀑の雄姿を目に焼き付けてきました。
2016/10/29(土) 雲
魚止橋[7:20]…伝道[7:33]…最初の渡渉点[8:02]…雷平[8:32]…早戸大滝[9:13/10:25]…雷平[11:09]…雷滝[11:27]…雷平[11:48]…伝道[12:25]…円山木沢大棚[12:39]…伝道[12:55]…魚止橋[13:10]
■ 早戸川林道解禁
久しく訪れることがなかった東丹沢。
長らく車両通行止めとなっていた早戸川林道が9月半ばに解禁になったという話を耳にしました。
もう一般車両の通行はできないだろうと諦めていただけにとても嬉しい知らせ。
主に丹沢三峰・丹沢山・蛭ヶ岳・姫次に囲まれた山域の水を集め、宮ヶ瀬湖に注ぐ早戸川は、首都圏近郊とは思えない程に山深い趣をもつ水量豊富な渓流で、ここ数年台風による影響で、川沿いの林道が通行できない状態となっていました。
早戸川と言えば、その上流部に日本の滝100選にも選ばれている落差50mの名瀑早戸大滝が有名。
旧来“雨乞いの滝”として知られてきただけでなく、大岩が滝の前にあり全貌を望むことができないため、“まぼろしの大滝”とも言われるそうです。
また沢登りの世界では、丹沢最高峰・蛭ヶ岳の北側に位置する原小屋平を水源に東進する原小屋沢も有名。
眩い自然林のなかを水量豊富な清流が爽快に走り抜ける東丹沢随一の美渓として知られます。
だいぶ秋も深まり、そろそろ沢登りの季節ではなくなってきましたが、大滝を巡る沢ハイキング!?ならまだまだ楽しめそう。
今回の目的地は早戸大滝、さらに雷滝と円山木沢大棚です。
丹沢にも紅葉がもうすぐ訪れようとしている10月末、久しぶりの早戸川で散策を楽しんできました。
■ まずは渡渉点まで
前夜に早戸川林道に入り、終点である魚止橋の手前にある駐車スペースまで。
2~3台ほどのスペースで、それ以外は前後の路肩か、少し手前の本間橋周辺のスペースに駐車することができます。
林道は若干の落石が見られるものの、きれいに整備されており、何の問題もなく通行できるようになっていました。
ただこの辺りはトイレが皆無なので、女性の方にはやさしくありません。
アプローチシューズを履いて、魚止橋を渡り、まずは渡渉点を目指します。
↑ 魚止橋
Uターンして登る林道を登山道で短くショートカットし、しばらく進むと林道終点である伝道へ。
↑ 伝道
↑ 案内板あります
ここからは明瞭な登山道を歩きます。
途中古めかしい造林小屋跡の前を通り過ぎますが、まるでお化け屋敷のよう。
こういうところは苦手なので、早足で駆け抜けます。
↑ まるでお化け屋敷です
道は少し登った後トラバースとなり、小尾根を越えて急下降すると渡渉点に辿り着きます。
途中桟道などもありますが、著しい崩壊などはなく、危ない箇所は特にありません。
↑ 気持ちのよいトラバース
↑ 橋が新しくなってました
↑ 途中早戸川を見下ろす
■ 早戸川を遡る
渡渉点でネオプレーンソックスを履き、フェルト沢靴に履き替えます。
かなり以前は丸太橋があったそうですが、今は跡形もありません。
靴を濡らさずにこの先進むのはかなり至難の業となるので、やはり沢靴+ネオプレーンソックスがオススメです。
ラバータイプの沢靴でももちろん良いのですが、前日の雨の影響かどこもかなり岩が濡れているので、今回はフェルトタイプを持参しました。
↑ 最初の渡渉点
ここからは数回膝下くらいの渡渉を交えながら、概ね分かり易い登山道を辿ります。
昭文社のエアリアマップには破線でのルートが付けられていますが、赤布や赤ペンキが豊富にあるので、迷うことはないでしょう。
難易度としては、沢歩きなら初級中の初級、一般登山としては中級以上と言っていいかもしれません。
ただ無理に固定ロープを張った箇所などがありますが、平水であれば川の中を進んでしまった方が安全で早い場合もあるので、ここは自分でよく判断してルートを選びたいものです。
↑ 張り巡らされた固定ロープ
↑ 第二渡渉点
↑ 第三渡渉点
雷平の手前で川幅が広くなり、明るい河原歩きとなります。
水温はそれほど低くはないので、思ったほど冷たくは感じません。
↑ 気持ちのよい河原歩き
最初の渡渉点から30分ほどで、雷平へ。
ここは美渓原小屋沢の出合にもなっています。
雷平はできることなら一晩焚き火を見つめていたくなるような穴場的空間。
幕営適地もちらほら見られるので、このような静かなところでキャンプをするのも一興かもしれません。
↑ 雷平
ここから先は少し道が不明瞭となりますが、赤布は依然豊富。
だいたい左岸→右岸→左岸と辿る感じになっています。
しかしあまり登山道にこだわらずに、歩きやすいところを選んで、どんどん突き進んでいきます。
↑ 左岸支流 名もない連瀑
しばらく単調な河原を進むと、やがて大滝沢出合へ。早戸大滝はもうすぐです。
↑ 大滝沢出合
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■ 圧巻の早戸大滝へ
大滝沢出合から少し遡ると、瀑音が轟いてきます。
↑ 早戸大滝が見えてきました
↑ 50mの大滝 スゴい瀑音です
「えっ!こんなところにこんなスゴイ滝が!」というのが早戸大滝の第一印象。
聞きしに勝る大滝で、ド迫力で眼前に忽然と現れる姿は圧倒的!
全容を見せずに屹立する姿はとても神秘的で、自然の造形美の素晴らしさを実感させられます。
↑ 圧倒的な大滝の雄姿
手前の小滝から鑑賞するだけでも十分な迫力がありますが、折角なので滝壺まで進んでみることにします。
滝壺までのルートは2つ。小滝の右壁直登か、高巻き道から途中で降りるか、になります。
右壁はホールド豊富なので、沢慣れした方ならフリーで登ることができます。
↑ 右壁はホールド豊富です
↑ 上から右壁を見下ろす
ただ上部には支点となるものがないので、フリーでの下降は困難。高巻き道で降りることになります。
高巻き道は固定ロープも張ってあり、赤布が豊富にあり、踏み跡も明瞭です。
↑ 高巻きの取り付き
↑ 滝壺へ至る踏み跡あります
高巻き道を使い、早戸大滝を越え、稜線を目指すこともできますが、大滝以外は凡庸な渓相なので大滝沢を遡行される方は非常に少ないでしょう。
また早戸大滝では厳冬期に幻想的な氷瀑を楽しむこともできます。
今冬は強い寒波が到来した時を見計らって、是非訪れてみたいものです。
■■■【PHOTO GALLERY ②】■■■
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■ 雷滝を訪れる
早戸大滝を堪能した後は、次なる大滝である雷滝を目指します。
雷滝は雷平に戻り、そこから原小屋沢を少し遡行したところにあります。
左岸沿いに道らしきものがあり、ごく最近ペンキを塗ったのか、緑の苔が真っ赤になっているところもありました。
対岸に中ノ沢出合を見ながらさらに奥へ。
↑ 赤ペンキ豊富です
滝の少し手前で、左岸から右岸に移り、渓が左に90°向きを変えると雷滝が姿を現します。
↑ 雷滝①
雷滝はオーソドックスな美瀑25m。
生憎の曇り空でしたが、幽玄の趣に満ち溢れ、格調の高さを感じました。
↑ 雷滝②
↑ 雷滝③
ここより上は沢登りの世界。
ちなみに原小屋沢は雷滝だけでなく、バケモノ滝、ガータゴヤ滝など名のある美瀑を抱く、昔から知られたクラシックルート。
丹沢とは思えない豊かな自然を体感できる渓として初級者に大変オススメです。
大滝以外にも、適度に登れる小滝や斜瀑が随所に散りばめられているので、飽きることがなく、上流部に長く続く癒しの渓相は心を穏やかなものにしてくれます。
■ 最後は円山木沢大棚へ
早戸川の大滝巡りと言えば一般的には早戸大滝と雷滝の二つですが、実はもう一つ流域にはマニアックながら隠れた大滝が存在します。
伝道より少し先、急峻な右岸支流に円山木えんざんぎ沢があります。
円山木とは神かんの木を意味するそうです。
登山体系では直登も高巻きも悪い上級者向けルートとして紹介されていますが、出合より少し登ったところに25mの大棚があるのです。
↑ 円山木沢大棚①
↑ 円山木沢大棚②
今回見に行ったのは下流部の大棚ですが、円山木沢には上流部にも大棚があるとのこと。
マイナールートですが機会があれば遡行してみたいものです。
■ 丹沢は大滝の宝庫
丹沢山塊は大滝を巡る沢ハイキングがしやすい山域。
隠れた大滝の数々はどの山域にもあるものですが、丹沢の良さは全て日帰り可能で、アプローチも比較的よいことであるように思います。
特に西丹沢には大滝が多く、本棚・下棚・地獄棚・雨棚・モロクボ大滝などが有名です。
ちなみに丹沢では滝のことを棚たなと表現します。
上信越では滝のことをセンあるいはゼンと表現しますが、地域によって呼び名が変わるので、それらを調べてみるのも面白いかもしれません。
以下簡単ですが、丹沢の主要な大滝を紹介させて頂きます。
〇 西丹沢 本棚ほんだな 〇
丹沢三滝の一つ。西丹沢自然教室から畦ヶ丸へ至る登山道の山腹にあり、本棚沢出合から僅かに寄り道するだけで見ることができます。
流量、落差ともに丹沢山地最大級の大滝と評される名瀑で、日本登山体系などでは落差70mと記されています。
↑ 本棚(2016年7月撮影)
〇 西丹沢 下棚しもんたな 〇
本棚沢よりも800mほど下流で西沢に注ぐ下棚沢にある大滝。西丹沢自然教室から畦ヶ丸へ至る登山道の山腹にあり、下棚沢出合から踏み跡を5分ほど辿ります。
男性的で豪快な本棚に対して、スラブを優雅に流れ落ちる女性的な美瀑で、日本登山体系などでは落差40mと記されています。
↑ 下棚(2016年7月撮影)
〇 西丹沢 地獄棚 〇
畦ヶ丸の南東面、大滝沢の中流で出合う50m大滝。
マスキ嵐沢出合より沢歩き40分ほど。
怖い名前に反してとても優雅な大滝です。
↑ 地獄棚(2015年7月撮影)
〇 西丹沢 雨棚あまんたな 〇
地獄棚のすぐ近く、大滝沢の中流にある50m大滝。
谷底から見上げる大滝は圧巻ですが、高巻きの取り付きに戻るためにロープ携行が望ましいです。
↑ 雨棚(2015年7月撮影)
〇 西丹沢 モロクボ大滝 〇
畦ヶ丸の北東面、水量豊富なモロクボ沢の下流にある30m大滝。用木沢出合ゲートより1時間ほど。
↑ モロクボ大滝(2016年7月撮影)
この他にもまだ私は訪れる機会を得ていませんが、遺言棚やモチコシ沢大滝などもあります。
また本格的な沢登りの世界となってしまいますが、表丹沢最大のイイハシの大滝や、裏丹沢の名瀑伊勢沢大滝なども有名です。
〇 表丹沢 イイハシの大滝 〇
鍋割山南西面にある表丹沢最大の大棚4段45m。
寄やどろぎ沢の中流部にあり、登山道からそんなに離れた距離にある訳ではありませんが、滝壺から戻るにはロープ必携です。
↑ イイハシの大滝(2016年4月撮影)
〇 裏丹沢 伊勢沢大滝 〇
裏丹沢神ノ川かんのがわの最大支流である秀渓伊勢沢の中流部にある名瀑50m。
↑ 伊勢沢大滝(2015年6月撮影)
〇 西丹沢 石棚 〇
ポピュラーな小川谷廊下の盟主2段20m滝。
↑ 石棚(2015年10月撮影)
大滝の下に佇み、マイナスイオンを浴びるだけでも、日頃の疲れが吹き飛び、気分爽快になれるものです。
盛夏はもちろんのこと、紅葉に映える大滝の雄姿も格別です。
人知れず孤高に君臨する大滝からは、言葉では言い表すことのできない何か大きな力を感じることができるもの。
それはきっとどこかで自分を支えてくれる大事な記憶になるような気がします。
最後までご一読いただき、有難うございました。
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