越後の日帰り入門沢 黒又沢日向沢右俣 ~ 酷暑のスラブ遡行

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投稿者
伊藤 岳彦
横浜西口店 店舗詳細をみる
日程
2020年08月20日 (木)~
メンバー
単独行
天候
コースタイム
十字峡(15分)黒又沢入渓点(20分)日向沢出合(25分)20m2段滝下(30分)30m大滝下(15分)二俣(90分)枝沢水源(60分)中ノ岳登山道(100分)十字峡
コース状況
※ 本文をご参照ください
難易度
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感想コメント





黒又沢日向沢



難渓揃いの越後三山のなかにあって、日帰りで遡行できる初級ルートとして知られる黒又沢日向沢右俣
トレーニングとして臨んだものの、沢はかなり荒れており、連日の酷暑の下、水量は少ない上にぬるく、灼熱の詰めと下山は結構ドMなものでした。




首都圏から谷川連峰を越えて越後の沢を目指そうとすると、アプローチが短く行きやすいのは、まず巻機山の登川流域、次いで十字峡を抱く三国さぐり川流域、そして越後三山に囲まれた水無川流域ということになるでしょうか。
今回訪れたのは、しゃくなげ湖が広がる三国川流域。
越後三山の最高峰中ノ岳を中心に、西に八海山、南に丹後山や下津川山など巻機山に連なる稜線に囲まれた水を集めて西進し、魚野川に合流する河川です。
スケールの大きな裏巻機渓谷を南に分け、中ノ岳の登山口である十字峡で、三国川本流、黒又沢、下津川に三分されますが、どの渓も雄大かつ深遠でとても一日で遡行できるものではありません。
それらの渓のなかにあって、日帰りで遡行できるルートとして貴重なのが黒又沢日向沢。
十字峡から出合までアプローチは30分ほど。
美しいスラブを抱く初級ルートで、下山には正規の登山道を使うことができます。

起点は十字峡登山センター。


 ↑ 十字峡登山センター

無料駐車場は点在していますが、今回は落合橋を渡った右手の駐車場(5台ほど駐車可)に車を停めました。
中ノ岳登山口にある鳥居に安全祈願をしてから出発。


 ↑ 中ノ岳登山口

わずかに登ると、すぐに分岐。黒又沢方面への踏み跡があります。


 ↑ 看板があります


 ↑ 踏み跡は明瞭です

10分ほどで入渓点。駐車即入渓と言っても差し支えないでしょう。


 ↑ 沢へ降り立ちました

ここからは平凡な川歩き。この日も猛暑で、水温は高め。
それでも汗だくの体に、越後の清流はとても心地よいものでした。





30分ほど歩くと、早くも日向沢の出合へ。


 ↑ 日向沢出合

日向沢は、中ノ岳登山道の五合目に位置する日向山を源とする短いながらも急峻な渓。
登山体系には、「技術的にむずかしい滝はなく、美しいスラブと美しい滝を多くもち、上部は明るい広大なスラブ帯」と記されています。
ただ出合は連日の猛暑で伏流しているのか、涸れているのが残念でした。
因みに、黒又沢本流はこの先、又五郎沢・御神楽沢・五竜沢・荒山沢・中ノ沢・台嵓沢・檜倉沢と細かく枝分かれしていきますが、ガチ遡行はどれも大変そう。
何も難易度の高い遡行にこだわらず、誰にも会わない“暑い日の沢ハイク”として五竜沢出合辺りまで本流探勝をするのも一興かもしれません。


 ↑ 黒又沢本流の先を望む

さて、本日も遡行開始!
最初は伏流していましたが、しばらく行くと水が流れ始めます。
しかし、連日の酷暑のせいか水量はとても少なそう。
おまけに沢は結構荒れていて、なかなかテンションが上がりません。


 ↑ 結構荒れています

しばらく進むと、最初の滝である15m3段滝が現れます。
体を慣らすのに丁度いいレベルです。


 ↑ 15m3段滝


 ↑ 左から登ります

続いて、倒木のかかった小滝。よくある倒木を利用しないと登れない滝です。


 ↑ 倒木のかかった小滝


 ↑ 倒木をたてかけた先人に感謝です


 ↑ ふと後ろを振り返ります

傾斜が増し、次の滝が見えてきました。


 ↑ 傾斜がきつくなります


 ↑ 20m2段滝

登路は水流の左。足場はあるので、特に難しくはありません。


 ↑ 左壁の様子


 ↑ 登路は水流左


 ↑ 途中から見下ろす

この滝を越えると、正面に大スラブ壁が見えてきます。


 ↑ 大スラブ壁

圧巻といえば圧巻なのですが、ちょっと距離がある分、威圧感はありません。
その後小滝を幾つか越えると、F4にあたる5m滝へ。


 ↑ 5m滝

まともに突っ込むと上部で行き詰まりそうなので、無難に右岸巻き。
踏み跡らしいものもありました。


 ↑ ここは右岸巻き


 ↑ また倒木のある5m滝


 ↑ 7m滝は小さく巻けます

ここを過ぎると、ハイライトの30m大滝へ。


 ↑ 大滝が見えてきました

水量が少ないのがとても残念ですが、それなりに立派な滝。


 ↑ 30m大滝①


 ↑ 30m大滝②

さて登路は水流左。乾いた草付きを快適に登っていくことができます。


 ↑ 登路は水流左


 ↑ ホールドは豊富です


 ↑ 登りながら

ここを越えると、あとは難所もないまま1:2の二俣へ。


 ↑ 二俣へ

本流は左のようですが、ここからは右へ右へと進んだ方が登山道に早く出るので、迷わず右へ。





沢が源頭の雰囲気を出してきたところで、左岸に顕著な枝沢が現れます。


 ↑ 顕著な枝沢

もう核心部は越えたので、早く帰りたい気持ちを抑えることができず、ここも右へ。左側の草付きを強引に直上することにします。
この先はどうなっていくのか、あとはなるようになれという感じで突入すると、すぐに立派な8m滝が現れます。


 ↑ 傾斜のある8m滝

傾斜が強く、とても登れるものではないので、ここは左岸の高巻き。
灌木を掴みながら、急な斜面を攀じ登ります。
ここを過ぎると、水が徐々に冷たくなっていき、終盤になってやっと沢登りらしい爽快感が広がっていきます。
あとは沢型を忠実に辿って、上を目指すのみ。


 ↑ まだ滝があります


 ↑ 枝沢の水源

水源を越えると、あとは我慢の詰め。
ひどい藪漕ぎではありませんが、それなりに斜度があり、灌木を頼りに体を持ち上げ、ひたすら上へ。とても苦しい時間帯です。
感覚的には奥秩父の詰めに似ていますが、暑さは尋常ではなく、大粒に汗を流しながら斜面を攀じ登る苦しいものでした。


 ↑ ドMな詰め

水がなくなってから1時間弱の詰めでようやく登山道へ。


 ↑ ウオー!道だ!

どうやら飛び出したのは、四合目の少し先の辺り。
ここからは正規の登山道を2時間ほど下れば、十字峡に戻ることができます。
ただし途中に鎖場もある大変急な下りなので、決して楽なものではありません。


 ↑ それにしても暑い…

今回のルートはトレーニングには最適ですが、思っていた以上に沢が荒れていたのが残念でした。
きっと以前はもっときれいな渓だったのだろうと思いますが、近頃はどの沢に行っても台風の爪痕が残されているような気がします。
1日で無駄な脂肪がなくなったのは良かったですが、日向沢遡行は盛夏よりも紅葉の時期の方が向いていると思いました。
これだけ暑い日が続くときは、登攀的な渓ではなく、本流などの泳ぎの沢へ行く方がやはり気持ちがよいもの。
体は大分作れてきたので、次は水量豊富な泳ぎ系の沢へ行ってみたいと思います。



フォトギャラリー

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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