越後 黒又沢探勝 ~ 謎の湧水滝を巡る爽快な渓歩き

このエントリーをはてなブックマークに追加
投稿者
伊藤 岳彦
横浜西口店 店舗詳細をみる
日程
2020年08月27日 (木)~
メンバー
単独行
天候
コースタイム
十字峡(10分)入渓点(15分)日向沢出合(30分)御神楽沢出合(20分)鉄橋下(40分)五竜沢出合
コース状況
※ 本文をご参照ください
難易度
Google Map
  • スタートナビ
  • おとな女子登山部

感想コメント





黒又沢探勝



越後の大きな渓は豪雪地帯ならではの雄大な自然を抱いています。
今回訪れたのは、十字峡の北に広がる黒又沢
本来目指す沢へのアプローチとして使われるものですが、
越後独特の景観が織り成す渓歩きは心洗われるものでした。




関越トンネルを越えると空模様が一変し、明るい夏空が広がり、沢を歩きたいという気持ちが俄然高まっていきます。
本来は群馬での沢登りを予定していましたが、天候が崩れる予報となったので、晴天が広がる新潟へ行き先を変更。やはり沢は青空の下訪れたいものです。

首都圏から谷川連峰を越えて越後の沢を目指そうとすると、アプローチが短く行きやすいのは、まず巻機山の登川流域、次いで十字峡を抱く三国さぐり川流域、そして越後三山に囲まれた水無川流域ということになるでしょうか。

今回訪れたのは、しゃくなげ湖が広がる三国川流域。
越後三山の最高峰中ノ岳を中心に、西に八海山、南に丹後山や下津川山など巻機山に連なる稜線に囲まれた水を集めて西進し、魚野川に合流する河川です。
スケールの大きな裏巻機渓谷を南に分け、中ノ岳の登山口である十字峡で、三国川本流、黒又沢、下津川に三分されますが、どの渓も雄大かつ深遠でとても一日で遡行できるものではありません。
越後の難渓に挑むにはそれ相応の準備と覚悟が必要ですが、主にアプローチとして使われる前半部であれば、沢遊びの感覚で気軽に訪れることができるもの。
酷暑のなかの沢登りは水流を歩いているうちは爽快ですが、詰めと下山は長くなればなるほど苦行の様相を呈してきます。
先週は黒又沢日向沢右俣で疲労困憊したので、今週は黒又沢前半部の探勝。
スケール大きな渓歩きが期待できそうです。



起点は十字峡登山センター。


 ↑ 十字峡登山センター

無料駐車場が点在していますが、平日であれば登山口の近くに停めるのは容易でしょう。
中ノ岳登山口にある鳥居に安全祈願をしてから出発。
入渓点までは10分ほどなので、最初から沢装備。靴もフェルト靴で出発しました。


 ↑ 中ノ岳登山口

わずかに登ると、すぐに分岐。黒又沢方面への踏み跡があります。


 ↑ 看板があります


 ↑ 踏み跡は明瞭です

10分ほどで入渓点。駐車即入渓と言っても差し支えないでしょう。


 ↑ 入渓点より

まずはのんびりとした河原歩きから。
水の中を歩くと、火照った身体が冷やされていくのが分かります。
少し進むと、前方に大きな岩壁が見えてきました。


 ↑ 遠くに大きな岩壁

こちらは日向沢の右岸上部にある大スラブ帯。越後らしい風景です。


 ↑ 大スラブ帯

入渓点より30分ほどで日向沢出合へ。
日向沢右俣は越後の入門沢として紹介される短いながらも急峻な渓。
半日で遡行ができ、核心部に30m大滝があるのでトレーニングにも最適ですが、詰めと下山は決して楽ではないので、盛夏よりも紅葉の時期に訪れるのがオススメです。


 ↑ 日向沢出合

日向沢を見送り、渓がS字にカーブすると堰堤が見えてきます。


 ↑ 堰堤があります


 ↑ 右から越えます

堰堤を越えると、再び穏やかな河原歩き。どことなく谷川連峰の湯檜曾川に似ている雰囲気があります。
しばらく進むと、また大きなスラブ壁が見えてきました。











雄大な風景を見上げながら先へ進むと、今度は遠く正面に大きな滝が見えてきます。


 ↑ 正面に大滝

これはどうやら御神楽沢にある大滝。登山体系には95m3段滝とあります。


 ↑ 御神楽沢の大滝をアップで


 ↑ 御神楽沢出合

御神楽沢は五竜岳と阿寺山の稜線に突き上げる急峻な渓。
最近の記録を見ると、中上級者が一つ上流の五竜沢を遡行した後の下降路として使うケースが多いようです。
さて御神楽沢出合の対岸に、何やら不思議な滝が見えてきました。


 ↑ 右の滝ですが…







水が湧き出てる??


ちょっと神秘的な滝。湧水の滝とでもいうのでしょうか。
たまにこういう滝に出会うことがありますが、中がどうなっているのか気になりますよね。
続いて先に目を転じると……。




また湧水の滝!


今度の滝はさらに大きい。近寄ってみると、かなり立派です。




 ↑ 水量もすごい

因みにこの滝の下は絶好の泳ぎポイント。





水位は平水で胸当たりまで。足はつきました。
魚は見かけませんでしたが、真夏の泳ぎは気分爽快!
清流と自分が一体となって戯れる時間はとても貴重なものです。
濡れたくない場合や水温が低いときには、高巻き可。


 ↑ 巻くなら右岸

この辺りは渓相が美しく、心が洗われるようでした。

さて、さらに先へ進むと今度は鉄橋が出現します。


 ↑ 赤い鉄橋

話には聞いていましたが、こんな山奥にこんな立派な橋があるのはとても不思議。
近づいてみると、何か大きな瀑音が響いています。


 ↑ 橋の下に滝が…




またまた湧水の滝!


今度の水量はハンパない!!


 ↑ すごい飛沫です


 ↑ 水が美しい


 ↑ せっかくなので記念撮影

それにしてもこれら湧水の滝や鉄橋は一体何なのでしょうか???

気になったので帰ってから調べてみると、湧水の滝だと思ったのは、


抗廃水??


よく分かりませんが、人為的に作られたものであることは確かなようです。

ここで黒又沢の歴史を紐解いてみると、かつてこの流域は「南越鉱山」と呼ばれていたとのこと。
豊臣政権時代から金、銀、銅の採掘が行われており、昭和25年に「日満鉱業」が採掘を開始し、その後昭和30年に「東邦亜鉛」の所有となり、昭和46年休山となったそうです。
鉱床は銅を随伴する鉛、亜鉛の鉱脈鉱床で、南越鉱山で精鉱されたものは亜鉛・硫化鉄・銅・鉛。最盛期は昭和40年頃ということですから、今から半世紀前の遺物ということになります。
因みに鉄橋はトロッコ軌道跡だそうで、黒又沢の左岸には鉱山道があったようです。
湧水の滝だと思ったのは、採掘時の坑道から噴き出した地下水なのでしょう。
それを抗廃水と呼ぶのだと思いますが、水質的には現在問題はないようです。
ともあれ自然の神秘だと思い込んだままでいた方がかえって良かったような気もします。
それにしても今では沢ヤしか訪れないようなこんな山奥にも意外な歴史があったことに驚きを禁じえません。


さて、話が大きくそれてしまいました。
まだ時間があるので、さらに上流へ進むとすぐに釜をもった滝が現れます。


 ↑ 釜をもった滝

ここは左岸の高巻きがセオリー。


 ↑ 左岸の様子

斜度45度くらいの右端を登りますが、ホールドは豊富なのでフリーで容易に上がることができます。
しかし、帰りに降りる場合はやはりロープが必要だと思います。
岩壁の上の小広場より少し上の灌木を支点とできますが、長さ30mは欲しいところ。
ハーネス・ロープのない沢歩きの方はここで引き返した方がよいでしょう。
高巻きは岩壁上部から灌木帯のトラバースへ。


 ↑ 岩壁上部の小広場から

斜めに少しずつ下降すると、沢へ戻ることができます。


 ↑ ここに出ました

高巻き後は、再び穏やかな渓相。


 ↑ 穏やかな渓相

やがて五竜沢出合へ。ここまで入渓点から2時間弱です。


 ↑ 五竜沢出合

五竜沢はその名の通り、五竜岳に突き上げるスケール大きな渓。
高度差があり多くの滝をもつが、ゴルジュは浅く高巻きの苦労も少ないので、中級者向けとされます。
WEBの記録を見ると、五竜沢遡行→御神楽沢下降を選ぶパーティーが多いようです。
本流はその先に深い大釜を持った3m滝が現れます。


 ↑ 深い大釜を持った3m滝

右岸のバンドから容易に越えられますが、この先は大きな見どころもなさそうなので、今回はここまでとしました。


往復4時間ほどの沢歩きでしたが、黒又沢は明るく素晴らしい渓でした。
スケール大きな渓のなかに越後らしい雄大な風景が広がり、個性的な滝と出会い、泳ぎを楽しむこともできます。
なかなかマニアックなエリアですが、隠れた穴場スポットとして大変おすすめです。
鉄橋までなら、ロープはおろかハーネスも不要なので、初めての沢歩きにも適していると思います。
90分ほどで来ることができるので、鉄橋をゴールにして、のんびり沢ハイクをするのも一興でしょう。
酷暑が続く盛夏にはやはり沢歩きが一番!
十字峡を起点にすると、黒又沢のほかにも、三国川本流、栃ノ木沢、下津川などがあるので、また別の機会に偵察というか探勝をしてみたいと思います。






       




フォトギャラリー

黒又沢は明るく美しい渓です

中ノ岳登山口

黒又沢入渓点

日向沢の右岸上方にある大スラブ帯

水量の少ない日向沢出合

越後らしいスラブ帯広がります

水量少ないですが、迫力あります

正面に御神楽沢の大滝を望む

湧水の滝①(抗廃水)

絶好の泳ぎポイント 足はつきます

湧水の滝②(抗廃水)

鉄橋と湧水の滝③(抗廃水)

釜のある滝は左岸巻き

五竜沢出合

釜をもった3m滝

暑い日は沢歩きが一番です!

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

この記事を見た人は次の記事も見ています

アクセスランキング

横浜西口店 - 登山レポート

同難易度の登山レポート

  • スタートナビ
  • おとな女子登山部