敬慎院に参籠して七面山へ
- 投稿者
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るんちゃん(おとな女子登山部)
浦和パルコ店
- 日程
- 2025年03月26日 (水)~2025年03月27日 (木)
- メンバー
- おとな女子登山部 なっちゃん
吉野香織さん
- 天候
- 晴/強風
- コースタイム
- 【1日目:表参道】白糸滝(100分)中適坊(120分)敬慎院
【2日目:裏参道】敬慎院(30分)ナナイタガレ(50分)七面山(30分)ナナイタガレ(30分)敬慎院(20分)奥之院(80分)安住坊(60分)角瀬登山口(5分)バス停
- コース状況
- ○表参道の羽衣登山口にトイレあり。駐車場ありますがバス停はありません。自販機もなし。裏参道の角瀬登山口にはバス停あります。旅館や日帰り温泉があります。こちらにもトイレあり。自販機たくさんあります。バス便は非常に少ないです。前泊しないと朝一の便には乗れません。バスは下部温泉駅まで400円。下部温泉から羽衣までタクシー7,500円です。
○各坊には休憩所があり宿泊できる坊もあります。シーズンオフのため売店はやっていませんでした。水や行動食は要持参。
○敬慎院宿泊は6,500円。夜と朝にお勤めに参加し読経を拝聴します。お寺の歴史も聞くことができます。お風呂もありますが石鹸は使えません。要タオル。水やお湯は自由に頂けます。
○寝具は畳の上に薄めの敷き布団と掛け布団一枚のみです。慣れない方はテント泊に使うロールマットやパタパタマットがあると良いです。
○随身門から上は雪山です。チェーンスパイクや6本爪アイゼン、ストックが有効です。ナナイタガレから先は急登なので注意。七面山山頂は展望ありませんがその先の希望峰から南アルプスが見えるようです。
- 難易度
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感想コメント
前から訪ねてみたかった信仰の山・七面山。中腹にある敬慎院に参籠すれば、ゆったり登って貴重な宿坊泊も体験できます。遠方まで行って日帰り弾丸は勿体無いので、ご利益旅が好きそうな女子二人を誘って一泊二日で出かけてきました。
登山道は表参道と裏参道の二つのみ。裏から登ればバス便がありますがスタートがお昼になってしまうので、タクシーを使って行程の短い表参道から向かうことにしました。起点の下部温泉駅は無人駅、タクシーも見当たらず登る前からあたふたしてしまいましたが、無事手配して羽衣登山口へ向けて予定通り出発しました。
まずは女子旅に相応しく、女人禁制を解いたお萬の方の像に挨拶をしてからスタート。灯籠を一丁毎に確認しながら登りました。全部で二十くらいかなと高を括っていたら何と敬慎院まで五十もありました。途中に休憩できるお休み処がいくつかありますが、まだ冬が終わったばかりで営業しておらず、軒から垂れた「ところてん」のお品書きを恨めしく見ていました。こちらでいただくところてんは絶品のようです。
この日は風が強く、花粉やら黄砂混じりの空は真っ白で霞んでおり、期待していた富士山はシルエットが微かに見えるだけでした。展望を諦めて後は樹林帯を黙々と登るのみ。九十九折の単調な景色の中を登り詰めるのはまさに修行でした。
それでも歩き続けていたら徐々に雰囲気が変わり、ついに現れた和光門。敬慎院の入口に着いて気持ちが高まりました。門を潜って敷地内に入ると渡り廊下からお坊さんが挨拶してくれました。わざわざ立ち止まって声をかけてくれるなんて。玄関に向かうと受付の方が「お疲れ様でございました」と出てきてくださり、敬慎院全体がとてもウェルカムな雰囲気。却って恐縮してしまいました。
受付をして宿泊代を支払いして、と身構えていましたがその前にお部屋に案内され、そのままお茶をいただいてまったりと寛いでしまいました。しばらくするとお風呂の用意ができたとのお知らせが。まずは身を清めてからとのことなのか、案内されるがまま湯浴みすることに。お風呂はちょうど奥多摩の三条の湯のような広さで、三人で入るには大きな湯船でした。石鹸は使えませんが、山の上で温かいお風呂に入れるのは贅沢の極みです。ホテルのような居心地の良さにすっかり胡座をかいてしまいそうでした。夜のお勤めが危うく億劫になるところでした。
お風呂の後、ようやく受付をして特別祈願などを申込みます。それからお部屋に戻って夕食です。精進料理ということで量が足りないか心配でしたが、ご飯とお味噌汁はお代わりできました。その前に頂いたおかきも、丁度良い塩気で食べる手が止まらず、想像以上に満腹になりました。
そのまま眠りに就きたいところでしたが、これから大事なお勤めがあります。時間になったら静まり返った本堂へ向かい、足を崩した状態で座らせてもらいました。
静かに始まったお経は徐々に速くなり、四人のお坊さんの高い声と低い声、それぞれが唱える御題目は混声合唱のようでした。法事で聴くお経は大抵眠くなりますが、凛とした空気の中で響く声は、鏧や太鼓の音と相まって不思議な一体感が生まれ、眠気どころか前のめりになって聴き入ってしまうほどでした。途中で私たちの名前が読み上げられたことにも驚き、感動しました。
お勤め後は敬慎院に携わった人々の話や歴史を聞いたり、お堂内の十二支の彫刻や龍の天井画など見処を案内していただきました。大満足で部屋に戻り、いつの間にか寝入ってしまいました。
翌日はご来光に合わせ起床、早速富士山を拝める随身門に向かいます。期待を胸に石段を登ると、、、見えました。門から眺める額縁富士山。昨日と違って富士山のシルエットがくっきりと朝靄の中に映し出されています。展望所からは同じく霊山の身延山の姿も見えました。薄紫の空が徐々に暖かさを帯び、ついには裾野からまん丸の太陽が顔を出しました。山の上で見るご来光は本当に素晴らしいです。幸せの瞬間を三人で分かち合い、その足で朝のお勤めへ向かいました。
寝惚けた頭がキリッとする瞬間。お勤めをして一日の無事を祈願します。その後の朝食も、やはりしっかりとお代わりをしてバテないよう準備しました。この日は七面山登頂と下山、気合いを入れて出発しました。
雪が残る斜面はスパイクを付けて登りました。あちらこちらに鹿がいて時々じっと我々の行動を見つめてきます。こちらが近付いても食事に夢中になって我関せず。警戒心が無くのびのび堂々とした姿に和みました。
大崩落地・圧巻のナナイタガレを眺めた後は急登の始まりです。狭くてつるつるの斜面は用心して登りました。頑張って登り切っても展望はありません。写真を撮ったりしながら小休憩の後、行程も長いので早めに下りました。
急坂を下って敬慎院を通過し、帰りは裏参道を歩きます。日が高くなるとまたしても花粉と黄砂の洗礼、見えるはずの南アルプスも霞み、最後の方はマスクをしてガードしながら歩いていました。
休憩できる坊が各所にあるとはいえ、表参道と同じくこちらも九十九折の樹林帯です。風が強かったせいで登山道には落ち葉だけでなく、大小様々な枝が散らかって歩き辛かったです。バス時間も考慮し少し駆け足気味だった裏参道、最後の最後まで修行の道のりでした。
角瀬のバス停には、敬慎院に泊まっていた単独男性もバス待ちしていました。お互いお疲れ様の挨拶をしてバスに乗り込み、下部温泉まで戻りました。少しタイトな行程だったので甲府までの特急ふじかわの車内でようやく落ち着き、お疲れ様の乾杯しながら帰路に就きました。
季節を変えれば見える景色や富士山の表情も変わるので、またいつか訪れてみたいです。七面山は登るだけではやはり勿体無い、是非とも参籠してどっぷりと浸かるのがおすすめです。
【使用装備】
○レインウエアのミレー・ティフォンジャケットを三人とも着用しました。私は旧カラーでしたが、吉野さん着用のものは新作カラーで耐水圧が30000mmにアップしてます。なっちゃんが着ていたのはティフォンファントムジャケット。薄手で透湿性は驚きの60000g/㎡/24hです。いずれもストレッチが効いて動きやすいので、まだ肌寒いこの時期にアウターとして大活躍です。
○アンダーウエアはミレーのドライナミックメッシュ。日が暮れると寒く、動き出すと暑くなる季節の寒暖差を少なくしてくれます。特に昨年発売のアブソーベントショーツは女性におすすめです。下部は厚みがあり寒い季節や生理中でも安心、冷気をシャットアウトしてくれます。
○バックパックは小屋泊一泊が十分にできる30Lクラスを背負いました。私はノースフェイスのノーム28、吉野さんはマムートのデュカン30(いずれも新モデルが出ています)、なっちゃんはマムートのトリオン28です。
フォトギャラリー
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