台高 大和谷本谷を訪れる ~ 美しい新緑と清流に魅せられる至極の沢旅 (池木屋山南面 宮川水系)
- 投稿者
-
伊藤 岳彦
横浜西口店
- 日程
- 2014年05月08日 (木)~2014年05月09日 (金)
- メンバー
- 単独行
- 天候
- 晴
- コースタイム
- 5/8(木) 【晴】
大杉谷橋先駐車スペース(120分)大和谷林道終点(120分)大和谷ダム(120分)夫婦滝下
5/9(金) 【晴】
夫婦滝下(105分)大和谷ダム(谷下降165分)大和谷林道終点(120分)駐車スペース
- コース状況
- ■ 大和谷林道 … 崩落のため車両通行止。小規模な落石があるだけで徒歩による通行は問題ありません。止むを得ず大杉谷橋前林道先の広場に駐車し、そこから歩きました。宮川ダム工事中です。
■ 六丁峠越え … 一部鉄橋が老朽化しているものの、簡易標識もあり、問題なく歩けます。一山越す感じなので、意外と時間がかかります。
■ 入渓 … 大和谷ダムを右岸に渡った先のガレ場を越えた辺りから下降。
■ 巴滝 … フィックスロープが2段に渡ってありました。帰路は懸垂で降ります。
■ 雄滝 … 顕著な支尾根の大高巻きとなります。
■ 地池谷出合からの下降 … 巨岩ゴーロの下り。懸垂を一度しました。
■ 地形図 … 宮川貯水池、大和柏木
- 難易度
感想コメント
数多の名渓名瀑を抱く台高山脈の渓谷群。
大台ケ原周辺の山域は生涯無縁のものと思っていましたが、浜松に勤務している間に、少しでも未知なる関西の沢を旅してみたいという欲求が日増しに強くなってきました。
深山幽谷の沢旅を愛する私ですが、そこでしか見ることのできない、心癒される瑞々しい風景をこの眼に焼き付けながら、素晴らしい沢旅を続けていきたいと思っています。
関西の沢デビューとして、今回向かった先は名渓の誉れ高い大杉谷を上流にもつ「宮川」の最大支流「大和谷」。
大和谷は台高山脈の一角、池木屋山から馬ノ鞍峰を水源とする流域で、本谷(川上谷)のほか、脇谷、銚子谷、弥次平谷、杉沢、ロクロ谷、焼山谷など遡行価値の高い沢が目白押しのようです。
関東では定番とも言える「奥秩父笛吹川東沢釜ノ沢」のような癒しの沢中一泊ができるようなルートを一つ知っておきたいという考えもありましたが、浜松からの距離も考慮して、この「大和谷」を訪れることにしました。
上流部に「巴滝」と「夫婦滝」という2つのハイライトをもち、技術的に難しい沢ではないので、アプローチが少し不便なものの、初めての泊まりの沢旅として最適なような気がします。
いきなり「大和谷林道の車両通行止」という憂き目に遭い、完全遡行の計画が狂ってしまいましたが、気を取り直してまずは林道歩き。
六丁峠越えでも意外と時間がかかり、長いアプローチの末にようやく入渓点へ。
もっと大きな谷をイメージしていましたが、眩い新緑と清流の美しさが醸し出す素晴らしい渓趣が迎えてくれました。
序盤は巨岩ゴーロが続き、いつもなら単調に思ってしまう渓相でしたが、未知のエリアというのはどこであってもワクワクするもの。
時折走る魚影に足を止めつつ、試行錯誤しながら大岩を越えていきます。
豪快な巴滝25mを越え、銚子谷出合を過ぎると、夫婦滝が突如大きく開けた空間に現れます。
スギ沢にかかる華麗な「雌滝2段50m」と、本谷に懸かる勇壮な「雄滝60m」。
このクラスの大滝が二つも同一の場所に存在する風景は過去に見たことがなかったので、その神秘的な光景に激しく心を動かされました。
私は大自然のなかで出会った圧倒的な光景に独り対峙したときに感じる、ありのままの感情を大事にしていきたいと願っています。
今回初めて目にした二つの大滝は、人知れず山深い奥地に屹立するが故に、パワースポットなどという通俗的な表現を遥かに超越した、神の住み処のような神聖さを遡行者にきっと与えてきたことでしょう。
滝壺から遥か上を見上げたときに抱かされる畏怖の念。
身体を突き刺すような冷気のなかに、自然の厳粛さが溶け込んでいたように思えます。
そしてまた、白い竜が咆哮するように奔落する飛沫の止めどない躍動感は、強い生命力を感じさせます。
あたかも人生に絶望などないとさえ思わせるような感覚。
この圧倒的な光景に吸い込まれたとき、力がみなぎってくるような気がしました。
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