奥多摩の佳渓 小菅川本谷 ~ 東京都水源林が育む清流を遡る (大菩薩峠東面 多摩川支流)

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投稿者
伊藤 岳彦
横浜西口店 店舗詳細をみる
日程
2016年06月02日 (木)~
メンバー
単独行
天候
晴時々曇
コースタイム
日向沢登山口(20分)第二堰堤上入渓点(25分)作業小屋跡(60分)連瀑帯入口(30分)大滝下(70分)作業道で遡行終了(55分)大菩薩峠(30分)フルコンバ(60分)日向沢登山口
コース状況
本文をご参照ください
難易度
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  • スタートナビ
  • おとな女子登山部

感想コメント





小菅川本谷



都会の喧騒を離れ、緑豊かな森に包まれたい時、まず思い浮かぶのは多摩川源流域。
東京都水源林が育む清冽な水と戯れる時間は、至福の時をもたらしてくれます。
小菅川本谷はアプローチと下山が便利で、特に悪場のない好ルート。
新緑と清流に心奪われる癒しの遡行で、心と体をリフレッシュしてきました。




2016/6/2 晴時々曇

日向沢登山口[12:41]…第二堰堤上入渓点[12:59]…作業小屋跡[13:24]…連瀑帯入口[14:23]…大滝下[14:54]…作業道で遡行終了[16:00]…大菩薩峠[16:55]…フルコンバ[17:27]…日向沢登山口[18:25]




目次


  • Ⅰ 小菅川本谷遡行

  • Ⅱ 概要と案内




  • Ⅰ 小菅川本谷遡行


    1 遡行

    多摩川源流域を訪れるときは、前夜に奥多摩湖畔の無料駐車場で仮眠するのが定番。
    この日は爆睡しすぎて、翌昼に小菅村へ。
    深山橋を渡り、国道411号線から国道139号線に入ると、段々と山が深くなり、運転しながら新緑に目を奪われてしまいます。
    最奥の集落から先は未舗装となりますが、四駆でなくても通行は問題ありません。
    ガタガタ揺られながら、林道終点まで進みます。
    入渓点はそこからわずか10分余りのところ。
    沢装備を身に着け、林道終点から踏み跡を辿ります。
    沢に降り立ったところが第一堰堤上。すぐに第二堰堤がありますが、ここは左から乗り越えます。下降点にトラロープあり。
    堰堤はこの2つのみ。第二堰堤上が実質的な入渓点となります。
    この日は気温があまり高くないためか、水がとても冷たく感じられます。
    序盤は穏やかな渓相。森林浴をするような気分で、ゆっくりと清流のなか歩を進めます。


    【↓】 序盤は穏やかな渓相


     ↑ 第二堰堤上から遡行開始










     ↑ 朽ちた橋に時の流れを感じます


     ↑ 作業小屋跡 立派な巨木が印象的でした


     ↑ この辺から少し傾斜が増します




     ↑ 水の造形が美しい


     ↑ 最初の滝らしい滝3m?


     ↑ 左岸支流に優美な滝


     ↑ 古い倒木がたくさんあります


     ↑ ちょっと奥まった小滝


     ↑ 新緑が鮮やかです


     ↑ 釜のある6m滝?


     ↑ 緑と白のコントラストに心奪われます


     ↑ 水の絨毯です





    少し冗長ながら穏やかな渓相をゆっくり進むと、やがて中盤の連瀑帯へ。
    ここからが小菅川本谷で一番面白いところです。


    【↓】 ハイライトの連瀑帯へ


     ↑ 連瀑帯に入ります






     ↑ 末広がりの美瀑


     ↑ 小菅川本谷で一番美しいところかもしれません


     ↑ 気分爽快です♪


     ↑ 滝の左側を直登しました


     ↑ 釜を見下ろします




     ↑ この滝も立派です





    直登は困難なので、左岸を巻きます。残置ロープがありました。


     ↑ 左岸に残置ロープあり


     ↑ 何気ないところに美しさを感じてしまいます


     ↑ 小さな淵ですが、水がとてもきれいです


     ↑ 午後の陽射しが強くなってきました


     ↑ きれいな三条の滝


     ↑ 左岸を巻いたような......




     ↑ 大滝が見えてきました


     ↑ 小菅川本谷最大の12m滝














    【↑】 新緑と清流の饗宴に心奪われます

    大滝は一般的に左岸巻きと思われます。立派な残置ロープもあり、特に危険なところはありません。些か拍子抜けしてしまいました。


     ↑ 左岸に残置ロープあり

    連瀑帯を越えると、沢はいくつかに分かれていきますが、忠実に一番水量の多い沢を辿ります。右へ右へと進むのが基本でしょうか。


    【↓】 源流部へ


     ↑ 大滝を過ぎれば、再び穏やかな渓相です


     ↑ 午後の遡行は写真的に絵になります


     ↑ 光の陰影にも見とれてしまいます


     ↑ シダですか?




     ↑ この二俣は右へ

    右俣が本流ですが、左俣には連瀑が遠くに望むことができ、こちらにチャレンジしてみるのも面白いかもしれません。


     ↑ 登れる小滝が続きます


     ↑ 水量も細くなってきました


     ↑ 階段状の小滝


     ↑ 突っ張りしながら軽快に越えていきます


     ↑ 水が美しい♪



    【↓】 詰めと下山

    石垣のある作業道が見えれば、そこが遡行終了点となります。最後に少し水を汲んでおくとよいでしょう。


     ↑ 石垣が見えました


     ↑ 作業道

    作業道を右に進み、左岸の枝沢を登っていくと通常登山道に合流します。早々に下山するならば、作業道を利用する方が便利。登山道に合流してから空身で大菩薩峠に立ち寄るのもよいかもしれません。


     ↑ 稜線を見上げます

    しかし今回は体力も余っているので、少し冒険気分を味わうため、遡行終了点から直接大菩薩峠を目指すことにします。登れそうな斜面を選んで取り付き、強引に斜面を直上して稜線を目指します。


     ↑ もっと楽な登りだと思ってました


     ↑ 緑が癒してくれます


     ↑ 稜線である熊沢山を目指します


     ↑ つつじですか?


     ↑ 結構キツイ登りです


     ↑ 稜線が見えました


     ↑ ウオー!道だ!

    どんな小さな沢旅であっても、登山道に出るとホッとします。


     ↑ 大菩薩峠は久しぶりです


     ↑ 気持ちのよい空間です♪


     ↑ 介山荘


     ↑ 奥多摩方面を望む


     ↑ 下山します


     ↑ 遡行終了点の作業道はここにつながります


     ↑ フルコンバ分岐 もう17時半です


     ↑ 奥秩父主脈を望む

    帰路の登山道である小菅大菩薩道もまた旧青梅街道。
    歴史ある登山道は無理なく歩きやすく作られており、古人の息遣いが聞こえてきそうになります。




     ↑ 快適な下山路でした



    2 遡行を終えて

    奥秩父の原生林のなかを彷徨う沢旅も素敵ですが、多摩川源流域の東京都水源林が育む清流と戯れる遡行もまた心潤すものです。
    さすがに同じ多摩川水系の大常木谷や竜喰谷、小室川谷ほどの山深さはないですが、小菅川本谷は心を構えて入渓するほどの困難さが全くなく、むしろ気持ちを楽にして癒しの渓歩きを楽しめるところが少なからず魅力なのではないでしょうか。
    仕事が忙しいとき、時間がないとき、天候が思わしくないとき、気分転換に訪れたい渓として知っておくのもよいと思います。
    序盤と源流部はやや冗長ながら、中盤のハイライトである連瀑帯のほとんどは楽しく登ることができ、大滝などは容易に高巻くことができます。
    水源林としての長い歴史があるので、丹沢全域や笛吹川流域で否応なく目立つ堰堤など人工物がほとんどなく、自然破壊的側面が極めて少ないのも嬉しいところです。
    久しぶりに訪れた小菅川本谷は、倒木がやや目立ちましたが、新緑と清流の饗宴は心をとても清々しいものにしてくれました。
    水が予想以上に冷たかったのが想定外。水流通しに滝を直登すると、かなり指先が冷えてしまいましたが、多彩な滝を思い思いに無心で越えていくのはとても楽しいものです。
    詰めは作業道を辿らず、天気も良かったので、大菩薩峠に向けてあえて道なき斜面を直登してみました。
    思っていた以上に傾斜もあり、時間もかかってしまいましたが、おそらく人が全く立ち入ることのない素の森の姿はとても美しく、人知れず咲き誇るツツジを愛でながら、フカフカの苔を踏みしめる感覚が印象に残りました。




    Ⅱ 概要と案内




    1 小菅川本谷

    小菅川は奥多摩湖(深山橋付近)に注ぐ多摩川の支流の一つ。
    その源流が小菅川本谷で、大菩薩峠を源頭としています。
    付近は丹波川上流域と同様、東京都水源林として1901(明治34)年以来大切に維持管理がなされていて、営利目的の開発から逃れることができたため、手つかずの豊かな自然が広い範囲に渡って残されています。
    首都圏近郊にこれほどの自然が存在することは奇跡に近く、小菅村源流一帯は、ブナやミズナラ、カツラやシオジなどの巨木が生い茂り、全国的にも珍しいシオジの天然更新が見られるなど、学術的にも注目されているそうです。
    沢登りの観点からみると、日本登山体系(大菩薩連嶺の項)でごく簡単に紹介されているように、初心者向けの好ルートとして一部では知られます。
    最近のガイドブックで紹介されることはありませんが、とても静かな癒しの沢歩きを満喫することができるので、もっと知名度が上がってほしいものです。
    前半部はやや単調なゴーロ歩きが続きますが、美しい小滝が続く核心部はほとんどの滝を楽しく快適に登ることができます。
    上流部は倒木の少ない苔むしたゴーロ歩きとなりますが、藪こぎなしで顕著な作業道に出会います。
    マイカー利用の場合、駐車即入渓ができ、下山も“旧青梅街道”という立派な登山道で駐車場所へ戻ってくることができるのは嬉しいところ。
    ゆったり遡行3時間、下山1時間強で周回してくることができ、下山後の温泉も楽しみです。
    ただし小菅の湯は第4金曜休み、のめこいの湯は毎週木曜休みです。
    奥多摩沢登り入門というとすぐ水根沢となりますが、里山感ではない山深さのある小菅川本谷にも是非注目してもらいたいもの。
    沢登りというよりも沢歩きの感覚で遡行を楽しむことができるので、初めての沢靴を履いて、原生林に包まれる遡行の素晴らしさをもっと多くの方に知って頂ければと思います。


    2 青梅街道の歴史

    青梅街道は、新宿で甲州街道から分かれ、青梅や大菩薩峠を経由し、酒折で甲州街道と再び合流するルート。
    このため、「甲州裏街道」とも呼ばれ、道程で甲州街道より二里短く関所が無いため、庶民の旅客にも多く利用されたそうです。
    奥多摩(氷川)から大菩薩峠へ至るルートは、元々は「古甲州道」といわれる大和朝廷時代の武蔵府中と甲斐府中を結ぶ官道で、小菅 ~ 牛の寝 ~ 石丸峠 ~ 大菩薩峠 の小菅道がメインルートであったようです。
    江戸時代中期になると、丹波 ~ フルコンバ ~ 大菩薩峠 の丹波道がメインルートとなり、丹波山村での宿泊者が増えたので宿と俗称されるようになりました。
    1868(明治元)年には 小菅から白糸の滝の脇を通り、フルコンバへ至るルートが新設された後、1878(明治11)年には丹波山村から柳沢峠を越えて裂石へ至るルートも新設され、奥多摩から塩山まで馬が行き来できるようになりました。
    この一番新しいルートが現在の青梅街道、国道411号線となっています。


    3 アプローチ

    【交通機関利用】

    西東京バスJR奥多摩駅発小菅の湯行に乗車、大菩薩峠東口バス停下車(乗車時間51分)。
    入渓点まで徒歩約120分。

    JR奥多摩駅発バス時刻表はこちらをご覧ください


    【マイカー利用】

    青梅街道国道411号線深山橋交差点から、旧青梅街道国道139号線に入り小菅村役場方面へ。
    さらにほぼ未舗装の県道508号大菩薩峠線に入り、日向沢登山口の先、林道終点まで。
    林道終点に駐車スペース。または日向沢登山口前に数台駐車可。
    公衆トイレは途中に2カ所(冬期閉鎖)あります。



    【↑】 林道終点



    【↑】 日向沢登山口前のスペース


    【入渓点まで】

    林道終点から10分あまり踏み跡を辿ると、第一堰堤上に降り立ちます。


     ↑ 第一堰堤上の流れ

    そのすぐ先に第二堰堤。ここは左から越えることができ、下降点にはトラロープもあります。


     ↑ すぐに第二堰堤が見えます


     ↑ 左から容易に越えられます



    4 下降ルート

    遡行の帰路に快適な登山道を利用できるのが、小菅川本谷遡行の便利なところ。
    フルコンバと日向沢登山口を結ぶ小菅大菩薩道もまた旧青梅街道。
    最後の仕上げに大菩薩峠での大展望を楽しむもよし、小菅大菩薩道を使って日向沢登山口まで気持ちのよい森の中を下山することができます。
    さすがに歴史ある登山道だけあって、とても歩きやすいルートです。


    5 立ち寄り湯の情報

    ご参考にして頂ければ幸いです。

    小菅の湯の情報はこちらをご覧ください

    丹波山温泉のめこい湯の情報はこちらをご覧ください





    最後までご一読いただき、有難うございました。

    ※ HTMLを使用したレポート掲載については許可を得ております。




    フォトギャラリー

    小菅川本谷は心癒される渓です

    新緑と清流が美しい

    作業小屋跡にて

    連瀑帯へ

    滝の落ち口を仰ぎ見る

    水がきれいです

    小滝を越えていきます

    大滝が見えてきました

    大滝①

    大滝②

    大滝③

    大滝④

    苔が美しい

    源流部の小滝

    シダですか?

    清流に午後の陽射しが差し込みます

    稜線を目指します

    結構キツイ登りでした

    手つかずの自然です

    大菩薩峠へ

    ・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
    ・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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