ヨセミテ遠征 ワイントンコラム「South Face」 エルキャピタン「Luking Fear」

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投稿者
好日山荘スタッフ
池袋西口店 店舗詳細をみる
日程
2017年10月12日 (木)~2017年10月25日 (水)
メンバー
天候
晴れ
コースタイム
ワイントンコラム「South Face」
10月13日 1P目~3P目(ディナーレッジ)まで荷揚げ、4P目と5P目をFIX。
10月14日 6P目~10P目同ルート下降。

エルキャピタン「Luking Fear」
10月18日 1P目~3P目までFIX。
10月20日 4P目~6P目
10月21日 7P目~10P目
10月22日 11P目~14P目、15P目FIX。
10月23日 16P目~Top out
コース状況
朝晩は気温一桁、日中は壁の中だと半袖でOK

ヨセミテの花崗岩は氷河に磨かれてフリクションに乏しく、日本以上に暑さの影響を受けます。高難度トライは午前中か夕方に。
難易度
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感想コメント

ヨセミテでビッグウォールと言えば、やはりThe Noseが有名で日本人クライマーの多くが目指すところだと思いますが、今回はあえて外し、エルキャピタンの西側にあるLuking Fearを選びました。
理由は、The Noseがメジャー過ぎて違うところを登りたかったし、The Noseをやるならもっと強くなってからできるだけ多くのピッチをフリーで登りたかったからです。
Luking FearはグレードⅥルートの中ではThe Noseと同じく、比較的登りやすいルートに入りますが、エイドグレードがやや高くなります。ビークやカムフックといった前進用ギアが必要になりますし、グレード表記にネイリングの可能性を示す(F)表記が付くピッチが複数出てきますので、念のため最低限のピトンとコッパーヘッドも必要です(残置のコッパ―ヘッドがいつ吹っ飛ぶか分からないため)。また、良いレッジが無いため、ポーターレッジの使用が前提になります。エイド技術とビッグウォールでの生活技術を習得するには最適のルートです。
今回はウォームアップとして、ワイントンコラム「South Face」を前半に登ってからのトライとしました。

ヨセミテへのアクセスやキャンプ情報、使用ギアに関しては、東久留米店 赤羽さんのレポートに詳しく載っていますので、参考にしてください。
「Luking Fear」http://www.kojitusanso.jp/tozan-report/detail/?fm=22981
「South Face」http://www.kojitusanso.jp/tozan-report/detail/?fm=22980

このレポートでは、Super Topoの情報だけでは分からない部分まで、各ピッチのポイントを紹介していきます。ルート図に関しては、やはりSuper Topoが正確ですので、ご自身で入手の上、参照下さい。

ワイントンコラム「South Face」
1P目:5.8ハンド~左上して大バンド。
2P目:大バンド左のコーナークラックC1 カムフィンガーサイズとナッツ。
3P目:5.8フェイス~凹角~「ディナーレッジ」。
4p目:5.8クラック~「コアルーフ」をボルトラダーで超え、抜け口から右上するクラックを登るC1。抜け口のクラックに移る箇所はアブミ上段乗りからのけぞってエイリアンブルーセットでけっこう悪い。
5p目:小ハング~左上するルーフアンダークラック~振り子でビレイ点C1+。小ハング後、ポケットにエイリアンレッドをセットしてアブミ最上段乗りからマントル返し~ルーフクラックをキャッチ。
6p目:引き続きルーフクラック左上~直上クラックC1。
7p目:直上クラックフィンガーサイズC1。ナッツ多用。
8p目:クラックC1~5.9ハンド~チムニー内。
9p目:チムニーから右のフェースを5.8A0。
10P目:ガリーに入り、30mほどで終了。なお、トップアウトする場合はさらに浮石のガリーを50mほど。ただ、ガリーからの落石はディナーレッジを直撃するので、通常は10p目から同ルート下降するらしい。
下降は60mロープ2本必要。

エルキャピタン「Luking Fear」
1p目:スラブのボルトラダー5.9A0。ボルト間隔遠いので、フリーで繋ぐ。
2p目:引き続きボルトラダーA0でクラック下まで。
3p目:残置コッパ―ヘッドの細いクラックC2F~ルーフアンダークラックに入り、抜けてから振り子で左のクラック5.9orC1に乗り移って直上。
4p目:ボルト、カム、フック使用で右上し、フィンガークラックに入るC2。
5p目:フィンガー~ハンドのC1。
6p目:フィンガーC1~C2。
7p目:C2水平トラバース。ボルトとフック。大き目フック多用。
8p目:ハンド~ワイド。4番サイズが20m以上続き、ランナウトが激しい。4番2個だと15m以上ランナウトするので、確実に決めて。C1。
9p目ハンド~フィンガーC1。半分は5.10アンダーでフリーで登った。「ピラーオブディスパイア」まで。
10p目:フレアハンドフィンガー~シンクラック。前半フレア部分はオフセットカム必須。極細クラックはオフセットマイクロナッツ~最後は細いピトンスカーにビークorラープでの前進が2~3m入り、ボルトが1本。さらにオフセットマイクロナッツ最小サイズ2連発くらいで終了。C2F。
11p目:出だしC2の残置コッパーヘッド小ハングを右上後、C1でルーフ下まで。
12p目:コッパ―ヘッド残置のルーフアンダークラックC2Fを左上。抜け口を上がったところでリーチのいるフックムーブが出てくる。
13p目:シンクラックC1。傾いたレッジまで。
14p目:ワイド~チムニーを左に抜け、レッジまで。5.8~9。
15p目左のクラックから離れ、正面の逆層フェースを登る。C2or5.10cだが、プロテクションがとりにくく、ほぼフリーで突破。岩がツルツルでグレードのわりに悪い。
16p目:左のコーナークラック。C1。
17p目:出だしのワイドから階段状を登って「サンクスギビングレッジ」
18.19p目:レッジを50mほど右に回り込んだコーナークラック。前半は5.10a位までのフィンガー~ハンド、クラックを抜けてからは簡単なスラブ。70mロープいっぱいでリンク可能。そして Top out!!

終了点からは踏み跡をたどってエルキャピタン頂上のトレイルへ。所々急なスラブがあるが、FIXあり。ホールバックが重いとかなり大変。下降はイーストリッジを下ってエルキャップベースに戻るか、ヨセミテフォールトレイルを歩いてキャンプ4まで4時間ほど。我々は夕方の下降になり、イーストリッジの降り口を発見できなかったため、トレイルを歩いてキャンプ4まで帰りました。

ワイントンコラム「South Face」はほとんどホーリングが無いため、スムーズに登れました。
「Luking Fear」の方はというと、50kgを余裕で超える重さのホールバックが今までの引き揚げ方ではなかなか上がらず、3p目までのホーリングが激遅だったのと、当初予定していたシステム自体が上手く機能せず盛大にトラブり、大幅に時間をロス。結果、予定よりも1日余計にかかってのTop outとなりました。ポーターレッジの上で改善策を議論の上、翌日からはほぼトラブルなし、3日目からはシステムが完全に自動化され、かなりスピードアップしました。とはいえ、特にF表記のあるピッチのリードには時間がかかり、全体を通して早く登れたとはいえません。フリーの実力を上げることも重要ですが、更なるビッグウォールを目標とするならば、エイド技術の向上も大きな課題であると痛感しました。

今回の遠征では、エルキャップベースやクッキークリフなどのメジャーエリアでショートピッチも少々やりましたが、どこに行っても長くて素晴らしいクラックが山ほどあり、次回はフリーだけを目的に来ても良いなと思いました。初心者でも楽しめるエリアやマルチピッチもたくさんあり、ヨセミテは決して上級者だけの目標ではありません。また、キャンプ4のあのヒッピーな雰囲気が素晴らしく良いです。2週間の滞在でしたが、影響を受け過ぎていまだに日本社会に馴染めません。自然もダイナミックで美しい。日帰りできるショートトレイルもたくさんあるので、クライミングをしない方も楽しめます。
ヨセミテ、自然が好きな全ての方にオススメしたい場所です。

長文に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

フォトギャラリー

ワイントンコラム「South Face」1p目

5p目振り子

6p目ルーフトラバース

7p目シンクラック

ワシントンコラムはハーフドームがバック!

最強5.10bエイハブ

エルキャップベースでのクライミング

クッキークリフにて

熱い!

エルキャピタン「Luking Fear」下部スラブ

先は長い

高い

後半はホーリングも余裕

壁の中での快適な我が家

エルキャプの頂上は平和でした

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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