農鳥岳初冬 ~ 雪化粧の大門沢を辿る (南アルプス)

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投稿者
伊藤 岳彦
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日程
2011年12月12日 (月)~2011年12月14日 (水)
メンバー
単独行
天候
快晴
コースタイム
【1日目】 奈良田(13:30)-大門沢小屋(17:40)
【2日目】 大門沢小屋(6:45)-稜線分岐(12:00)-農鳥岳(12:45/13:30)-稜線分岐(14:00)-大門沢小屋(15:45)
【3日目】 大門沢小屋(9:30)-奈良田(12:30)
コース状況
奈良田から大門沢小屋まで通常の時間で歩くことができました。
ペンキ印や赤布などが多く付けられ、道も分かり易くなりました。
ガレ場の設置ロープや渡渉点の橋なども新しくなり、今夏整備されたものと思われます。

大門沢小屋から先もワカンを要するほど雪は多くなく、森林限界を超え急傾斜となる冬道の起点でアイゼンを装着しました。

甲府方面からの最短ルートである丸山林道は12月14日現在通行可能のようでしたが、例年12月中旬より通行止めになるのでマイカーの方はご注意下さい。
難易度
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感想コメント

本格的な冬の訪れが間近に迫った南アルプスで贅沢な3日間を過ごして参りました。
燦々と照り輝く太陽、雲一つない紺碧の青空、そして美しく威風堂々たるあまたの雪嶺。
初冬とはいえ、あまりにも幸運な天候のもと、これほどの大自然と向き合うことができ、心の隅々まで洗われた気がしました。

冬の南アルプスは、観光地化されたようなスポットを起点にアプローチを省略して手軽に行けるところではなく、時間が緩やかに流れているような温かい人里を起点に長いアプローチの末に山に入り、そして下りてくるところです。
そのために、世俗の影を微塵も感じさせない純度の高い自然の印象がゆったりと体に沁み入ってくるような気がします。

私にとって冬の南アルプスでただ独り過ごす時間ほど濃密なものはありません。
濃密な時間とは肉体的な充実感と、五感で身体に深く刻まれたものによって生み出されるのでしょうか?
今回も心地よい疲れのなかで、多くの印象的な風景や音が身体に刻まれました。
深夜月光を浴びて浮かび上がる幻想的な富士山、キュンキュンと物悲しく響く鹿の鳴き声、そして3000mの稜線に残してきた自分の足跡など。
そうした記憶が、しばらくするとふと甦り、また濃密な時間を求めて、私を山へと誘うのかもしれません。

ところで今回比較的容易に登頂が出来たのは、素晴らしい天候に恵まれ、想定していたよりも雪が少なかったということ以上に、先行者(正確には下降者)のトレースがあったことに他なりません。数日前に白峰三山を縦走された2人?の方がいらっしゃたようです。冬道を含め、その正確無比なルート採りには大変驚かされました。相当な岳人の方々だと思われます。敬意を込め、この場を借りてお礼申し上げます。

【ルートについて】
農鳥岳に至る大門沢ルートは、白峰三山縦走路のメインルート(特に下降路)としてシーズン中は賑わうところですが、オフシーズンは訪れる登山者も少なく、とても静かな山歩きが堪能できます。
農鳥岳は3000m峰ながら、周囲の百名山と比べるとやや地味な印象を与え、農鳥岳だけを目的に登山する方は稀だとは思いますが、懐に大門沢という情緒豊かな沢を抱き、比較的楽なアプローチで南アルプスらしい山の深さを味わえるので、晩秋から初夏にかけても是非訪れたいルートです。登頂にこだわらずとも、八丁坂より先の豊かな樹林帯を散策し、大門沢小屋周辺の水場で遊んでくるだけでも、南アルプスの自然を十二分に味わえるのではないでしょうか?

何よりも大門沢冬期小屋の存在はとても有難く、昔ながらの山小屋らしさを残す静かな小屋であり、いつも感謝の念を忘れずに利用させて頂いております。沢沿いなので真冬でも流水があり、東側に面しているので富士山を望めるロケーションも素晴らしいと思います。
また下山後に疲れた体を癒すことのできる奈良田温泉(※水曜定休)があり、身延と奈良田をつなぐバス路線は通年運行なので、無理にマイカーを使わなくても来れるところも有難いですね。

【大門沢下降点(稜線分岐)直下の冬道について】
正確に冬道と記載のある文献には出会ったことはありませんが、地元奈良田の方が以前そう表現していたので、冬道と呼ばせて頂きました。
通常夏道はハイマツ帯を蛇行するように付けられているはずですが、冬道はハイマツと石楠花が混生する尾根状に隣接するガレ場を、雪崩を起こさないように一直線に登降します。下降時は右に下りすぎないよう注意が必要です。
好天時は問題ないと思いますが、視界が悪いときにこのポイントで正確にルートが見極められるように、しっかりと地形を頭に叩き込んでおくことが重要だと思われます。

フォトギャラリー

白峰三山 勢揃い!

大門沢上部 ルートは沢を離れ、右岸より傾斜を増していきます

長い樹林帯の登りが続きます

ようやく森林限界を超えました

冬道は急傾斜のガレ場を一気に登ります

目指す農鳥岳が迫って見えます

大門沢下降点直下 一段高いところに冬道を示す目印が立っています

大門沢下降点のある稜線分岐は風の通り道です

意外とカッコいい広河内岳(2,895m)

農鳥岳までトラバース気味に進みます

広い稜線をゆっくりと歩きます

悪沢岳(3,141m)を望む

塩見岳(3,047m)と雪投沢

3,000mの稜線上から望む富士山

登路を振り返る 広い雪田が印象的でした

北岳(3,193m)の雄姿  このアングルも素敵です♪

間ノ岳(3,189m)の厖大な山容

西農鳥岳(3,050m)の向うに中央アルプス

大門沢冬期小屋 2晩お世話になりました

明るく清潔な内部 床板が新しくなっていました♪

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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