奥秩父の名渓 和名倉沢 ~ 秘められた大滝を巡る新緑耀く沢旅へ (和名倉山北東面 大洞川支流)
- 投稿者
-
伊藤 岳彦
横浜西口店
- 日程
- 2016年05月19日 (木)~2016年05月20日 (金)
- メンバー
- 単独行
- 天候
- 晴
- コースタイム
- 雲取林道入口駐車スペース(25分)入渓点(60分)弁天滝(60分)氷谷出合(60分)通ラズ入口(30分)和名倉ノ大滝下(35分)船小屋窪出合(100分)2段8m滝(70分)1,470m枝沢出合幕営地(60分)二瀬尾根登山道(120分)吊橋(45分)雲取林道入口駐車スペース
- コース状況
- 本文をご参照ください
- 難易度
感想コメント
和名倉沢新緑
秩父の美うるわしさはその深林と谿谷けいこくとの美わしさであるといわれている。
その深林と渓谷との美わしさこそ、深林のなかのさまよい歩き、渓川たにがわに沿うての沢歩きこそ、すなわちもっとも日本的な山歩きのひとつの特色ではないか。
大島亮吉
秘められた大滝には底知れない神秘性があるもの。
奥秩父にも大滝は数多ありますが、この和名倉ノ大滝はまさに眉目秀麗。
逆光のなか豪快に光り輝く飛沫のもとに佇めば、只々水が織り成す芸術的な美しさに陶然としてしまいます。
和名倉沢は多彩な滝を抱く、奥秩父屈指の名渓。
新緑と苔の緑が耀きを放つディープな世界で、心満たす珠玉の沢旅を満喫してきました。
総画像数128枚でお送りする圧巻の渓谷美。
新緑のなか沢を歩く気分を少しでも味わって頂ければ幸いです。
2016/5/19 快晴
雲取林道入口駐車スペース[8:04]…入渓点[8:27]…弁天滝[9:24]…氷谷出合[10:22]…通ラズ入口[11:18]…和名倉ノ大滝下[11:49]…船小屋窪出合[12:24]…2段8m滝[14:04]…1,470m枝沢出合幕営地[15:10]
2016/5/20 曇時々晴
幕営地[9:24]…二瀬尾根登山道[10:22]…造林小屋跡[10:54]…吊橋[12:22]…雲取林道入口駐車スペース[13:05]
目次
1 一日目 ~ 遡行
新緑萌える秩父湖はいつ訪れても風光明媚なスポット。
平日でも三峯神社へと向かうマイカーが多く行き来し、とても人気があることがうかがえます。
和名倉沢入渓のための入口は、二瀬ダムより3kmほど先。
三峯神社方面に向かう県道278号線に入り雲取林道の入口まで車を走らせます。
大きな渓に挑むときはいつもそうですが、不安と期待が入り混じりながらも、テンションが徐々に上がっていくのが分かります。
【↑】 雲取林道入口
雲取林道入口に広い駐車スペースがありますが、トイレはありません。
【↑】 広い駐車スペース
準備を整え、まずは入渓点を目指します。
駐車スペースから来た道を100mほど戻るとガードレールの切れた場所があります。
【↑】 ここが下降路の入口です
【↑】 明瞭な踏み跡を下ります
ここから明瞭な踏み跡を下って、大洞川にかかる吊橋へ。
【↑】 立派な吊橋を渡ります
【↑】 橋上より上流を望む
【↑】 橋上より下流を望む
吊橋を渡ると踏み跡はいくつかに分かれますが、和名倉沢のある北を目指します。
小尾根を越すと、踏み跡は下降し、和名倉沢へと導いてくれます。
【↑】 沢が近づいてきました
【↑】 杣人の炭焼き跡
丸太橋のあるところから入渓することになります。
因みに橋の先にはさらに杣道が続き、山腹を大きく巻いた後、通ラズの手前辺りで沢につながるそうです。
【↑】 丸太橋の前で沢装備を身に付けます
【↑】 長い遡行の始まりです
新緑と苔が作りだす緑の美しさに目を奪われながら、ゆっくりと清流のなか歩を進めます。
【↓】 入渓点 ~ 石津窪出合
↑ この滝は右岸を巻きました
↑ 固定トラロープのある滝
↑ 石津窪出合へ
↑ 石津窪は苔むした沢です
【↓】 弁天滝 ~ 氷谷出合
幕営適地のある石津窪出合を過ぎると、まもなく序盤のハイライト弁天滝2段13mが現れます。直登は困難とされ、左岸のガレから高巻くのがセオリーです。
【↑】 弁天滝2段13m
↑ 左岸のガレから高巻きます
↑ ロープ不要で沢へ下降できます
↑ 左岸に幕営適地ありました
↑ ゴルジュ内の滝
↑ 左岸から容易に巻けます
しばらく穏やかな渓相のなかを進むと、やがて氷谷出合へ。
氷谷には2段17mの立派な美瀑がかかり、遡行者の目を癒してくれます。
【↑】 氷谷2段17m滝
【↓】 氷谷出合 ~ 通ラズ入口
氷谷を過ぎると、直登可能なナメ滝が多く現れ、快適な滝登りを楽しめます。
しかしワサビ沢出合の前では、倒木が激しい箇所があり、中には最近崩れたのではないかと思われるような生木さえ見られました。
↑ ワサビ沢出合
【↓】 通ラズ ~ 大滝下
ワサビ沢出合を過ぎると、いよいよ和名倉沢の核心部へ。
まずは通ラズ。ゴルジュの日本語訳として使われる地名で、奥秩父では多くの渓で見られます。
【↑】 通ラズ入口 8×15mナメ滝
通ラズは8×15mナメ滝から始まるゴルジュ内の連瀑帯で構成されますが、一般的には右岸の高巻きルートを利用します。
高巻きは踏み跡明瞭で、丁寧に赤テープも付けられています。
↑ 通ラズ内を見下ろす
途中の悪場にはしっかりと固定ロープも取り付けられており、ルートファインディングの要素は特にありません。
↑ ここは思わずロープに頼ってしまいました
↑ 大滝が見えてきました
赤テープを忠実に辿ると、ロープ不要で大滝の下に降りることができます。
【↑】 和名倉ノ大滝2段40m
和名倉ノ大滝は容姿端麗。豪快に豊富な水量を叩き落とす見事な直瀑です。
雰囲気的には、丹沢最大の大滝“本棚”に似ているのではないでしょうか。
心和むのは滝の周りの広い空間。丁度逆光の時間となり滝上を見上げると、光り輝く飛沫が織り成す光と水の芸術に陶然としてしまいます。
一週間前には豆焼沢の大滝の前で強烈な威圧感を感じ、只々大滝に畏怖していましたが、和名倉ノ大滝では力強さのなかにむしろ大きな優しさを感じ、心がとても落ち着くような気がしました。
自分の心の在り方が反映されるのかもしれませんが、本当に大滝を前に感じることは千差万別。
また一つ心に刻まれる大滝に出会うことができました。
↑ 大滝下にて 凄い飛沫です
↑ 大滝前の広場
大滝を包み込む空間には優しい陽射しが差し込み、他の大滝で感じるような谷底特有の圧迫感が全くありません。
できれば瀑音轟く空間で一夜を明かし、朝夕千変万化に貌を変える大滝の雄姿を見てみたいもの。
これまで幾つもの大滝に出会ってきましたが、こんな風に感じた大滝は初めてかもしれません。
【↓】 大滝 ~ 美瀑15m
エキスパートのなかには大滝登攀に挑む方もおられるようですが、一般的には左岸ルンゼの大高巻きによって、滝上を目指します。
左岸ルンゼに取り付いて上部に達したら、今度は左上に斜上トラバース。
赤青などの古いテープがあるので、見落とさないようにする必要があります。
乗越点を過ぎればロープ不要で沢に下降することができます。
↑ 左岸ルンゼに取り付きます
↑ 大滝を振り返る
↑ 続けて左上に斜上トラバース
↑ ロープ不要で沢へ下降ができます
大滝上に出て、少し進むとまた30m級の大滝が見えてきます。
↑ 先にまた30m級の大滝が...
【↑】 船小屋窪にかかる30m大滝
これは右岸支流である船小屋窪にかかる30m大滝。
この大滝もシンプルながらとても美しい滝でした。
↑ シダ畑 最高の幕営適地です
再び穏やかな渓相を過ぎると、やがて現れる名のない美瀑15m。
見所が随所に散りばめられ、飽きることがありません。
【↑】 名のない美瀑15m
この滝は右岸から巻くのが一般的。
↑ 右岸斜面を攀じ登ります
さすがにテープはありませんが、上手に高巻くと立派な道型の下降路があり、労せず沢へ戻ることができます。
↑ 立派な下降路がありました
【↓】 美瀑15m ~ 2段8m滝
溪は後半に入り、ますます山深さを増していきます。
↑ この滝の右岸巻きは容易
↑ 3段5m滝は倒木が残念 右岸巻きです
↑ 下降地点に残置ロープあり
↑ 放射状の2段8m滝
↑ 右岸ルンゼを小さく巻きます
↑ 古い残置ロープあり
【↓】 2段8m滝 ~ 幕営地
↑ 1,380m枝沢にかかる8m滝
↑ ふと樹々を見上げます
1,470m枝沢出合まで来ると、この日の長い遡行も終わりを告げます。
ほとんど枯れた枝沢ですが、左岸の高台に絶好の幕営適地があり、薪も豊富。
多くの方が一夜の夢を預けたのでしょう。
何となく整地もされていて、大型テント2張分くらいのゆったりとしたスペース。
まさに泊まってくださいと言わんばかりの空間でした。
【↑】 1470m枝沢出合に幕営適地
↑ いつ見ても炎は不思議です
いったん曇った空も夜には晴れ上がり、半月が照らし出す深い森のなか鹿の夜啼きが瀬音に吸い込まれていきます。
沢での気ままな幕営ほど開放感を覚えるものはありません。
日頃人種と感情の坩堝“新宿”において、種種雑多な出来事に身を粉にしている昨日の自分と、今このとき榾火ほたびに身を照らしている自分が全く一致しない不思議な感覚に捉われてしまいます。
↑ あまりにも非日常的な時間を過ごします
2 ニ日目~詰めと下山
本来ならば二日目も遡行を続け、和名倉山登頂を目指すべきところ。
しかし、朝のミルクティーを飲みながら地形図を眺めているうちに、二俣である1470m地点から西に派生する小さな枝尾根を直上し、標高差350mほどで二瀬尾根(下山路)に出た方が効率が良いのではないかと考えてしまいました。
ハイライトの核心がもうないこと、源頭部は恐らく倒木が多いと思われること、そして濡れた沢ウェアを身にまとい、遡行終了後に着替えるのが面倒になってしまったこと。
いつもの悪いくせで、また楽な方に心が傾いてしまいましたが、やはり明日の仕事になるべく疲れを残さないことを第一に考えてしまうものです。
という訳で、遡行はここで打ち切り、ショートカットというかエスケープで、強引に枝尾根を登ることにしました。
↑ 枝尾根を強引に直上します
夜に鹿の啼き声が聞こえたので、鹿の通り道になっているのではないかという推測が当たり、枝尾根には見事に鹿の足跡が見られます。
傾斜はそれなりにありますが、息を整えながら、ゆっくりと尾根を登りつづけること小1時間。
↑ 尾根が見えました!
途中で植生が変わりますが、藪漕ぎなしでやっと登山道へ。
【↑】 ウオー!道だ!
と、いつものようなアドレナリン全開、生還の喜びがあった訳ではなく、読みが当たってホッとした感じ。
ふと「地形図ってスゴイな」などと変なことを思ってしまいましたが、和名倉沢遡行の最短コースとして価値あるエスケープを発見したことになるでしょうか。
下山は快適な二瀬尾根を辿ります。
登山道も整備され、迷う箇所はありません。道標も随所にあり、まさに高速道路。
あとは一瀉千里、駆け下るのみ。
【↓】 二瀬尾根下山
↑ 途中の水場 湧き水です
↑ 造林小屋跡 幕営できそうです
↑ 秩父湖にかかる吊橋
↑ 今回も心に残る沢旅ができました
3 遡行を終えて
子供の頃、両親に連れられ、姉と私、家族4人で奥秩父を縦走したことがあります。
将監峠から雁坂峠までの小屋2泊縦走。しかも新雪舞う霜月の終り。
何てシブいコースなのかと呆れてしまいそうですが、子供を安易に3,000mに連れて行くべきではないという、何かポリシーが両親にはあったのかもしれません。
子供心に和名倉山のことを知ったのはそのときだったように思えます。
山火事があった怖い山で、訪れる者がほとんどいない。
縦走路から北に外れて孤高に横たわる大きな山塊であり、その頃道があったのかどうか分かりませんが、何か近づいてはいけないような大きな山だという印象を抱いていたように思えます。
将監峠の西、山ノ神土から和名倉山へ至る稜線が、さながら(大袈裟ですが)“魔界”の入口のように見えたのかもしれません。
あれから数十年。今になって和名倉山を遡行で訪れることができました。
戦後復興の名のもとに徹底的に伐採され、人間のエゴで破壊されつくした後に捨てられたように放置された世界。
ある意味本当の“魔界”へと変貌を遂げていたのかもしれませんが、溪から垣間見る和名倉山の懐は驚くほど豊かなものでした。
確かにワイヤーが散乱し、倒木は増え、鹿の食害も増加の一途を辿っているのかもしれません。
しかし破壊と再生が繰り返されるなか、和名倉沢の渓として美しさは他の奥秩父の渓と比しても遜色のないもので、特に青苔の美しさは秀逸。
苔の深みが森の深みを生み出し、本来の原生林と違わぬ世界を演出していたように感じられました。
日本の近代登山の先駆者の一人、かの大島亮吉が、“この世ともつかぬ青苔”と表現した世界を私も体感することができたと信じたいところです。
そして和名倉沢と言えば、秘められた大棚“和名倉ノ大滝”がシンボル。
眉目秀麗の大滝の清々しい雄姿は大迫力のなかにも心を和ませるものがあり、遡行者に安らぎを与えてくれる稀有な大滝であると謳うのは言いすぎでしょうか。
こんなにも優しさに満ちた大滝に出会ったのは初めてのことかもしれません。
青苔・大滝・新緑・清流 --- 和名倉沢は聞きしに勝る奥秩父の名渓でした。
和名倉山ほどの巨大な山になると、多くの渓が三々五々に流れています。
和名倉沢と同じ大洞川水系には、市ノ沢・惣小屋谷・井戸沢。
西側の滝川水系には、曲沢・金山沢・槙ノ沢八百谷。
またいつの日か、和名倉山に抱かれる渓を旅し、奥秩父のさらなる山深さを体感してみたいと思います。
1 荒川水系大洞川
秩父盆地から関東平野を辿り、東京湾に注ぐ大河川・荒川。
その水源は奥秩父北面に源を発する大血川、中津川、大洞川、滝川、入川、これら5つの谷に分かれます。
そのなかで“奥秩父有数の悪渓”と称される井戸沢を本流にもち、深淵なゴルジュと豊富な水量で遡行者を魅了してやまない一大支流が「大洞おおぼら川」。
秩父湖を起点に、和名倉山から将監峠、飛龍山、雲取山、白岩山、三峰山で囲まれた広大な面積の水を集めて北走する長大な渓で、かつて森林伐採のために使われた雲取林道がアプローチとして利用されます。
大洞川は多くの支流---「ホラノ貝窪」と「アザミ窪」を抱く静かな渓「椹さわら谷」、美しい秘渓「栂つがノ沢」、本谷に劣らず深い「惣小屋谷」、雲取山を源頭にもつ大洞川流域入門「荒沢谷」、下降に適した「市ノ沢」、そして秘められた大滝を抱く「和名倉沢」---を擁し、本流の最後は美渓として名高い「井戸沢」が将監峠に詰め上げています。
この谷は、古くは炭焼きで栄えたそうですが、和名倉山と同様、首都圏の戦後復興のために、木材の大規模な供給源として注目され、ほとんど全ての沢において伐採の手が入りました。
原生林が残っているのは、「椹谷」と「栂ノ沢」だけで、美林を誇ったコメツガの原生林が人間の暮らしのために根こそぎ失われた歴史をもちます。
70年代初頭、外材輸入が主流になるにつれて、大洞川での伐採も行われなくなりましたが、自然の回復力は物凄く、二次林ながら森が復活し、荒れていた沢もその本来の美しさを蘇らせようとしています。
今では落石だらけの廃林道と化した雲取林道は沢ヤしか利用することはありませんが、この林道を辿って大洞川の最奥へと足を踏み入れると、「キンチヂミ」などの美しくも険しいゴルジュが黒々と耀きを放ち、今でも遥々と訪れる遡行者を待っています。
“渓としての険しさ”はまさに荒川水系随一。同じ奥秩父山塊でも、滝川水系や入川水系の奥深さとはまた異なる、あまりにもディープな世界がそこにはあります。
2 和名倉沢
重厚な和名倉山(2,036m)を源とし、北東に流れ大洞川の最下流部へと注ぐ険谿「和名倉沢」。
悪絶さで名高い大洞川のなかでも中規模ながら屈指の険谿で、大小多彩な数多の美瀑を抱き、奥深い渓相のなか、豊富な流れが急傾斜を豪快に駆け降ることで知られます。
意外にも多く見られる原生林と瑞々しい苔の美しさは、新緑の耀きと相まって秀逸の一言。自然の造形美に誰もが心奪われることでしょう。
見所は、核心のゴルジュ「通ラズ」に続く、和名倉ノ大滝2段40m。
気持ちのよい空間のなか、豊富な飛沫を落とす豪壮な滝は必見。
他にも、弁天滝2段13mや名もない美瀑が多数あり、遡行者の心を和ませてくれます。
遡行に丸一日、下山に半日以上を費やすので、一般的には沢中一泊が妥当。
幕営適地は石津窪出合、弁天滝の先にある左岸河原、船小屋窪先の右岸シダ畑(ここがベストの地形かも...)、1,470m枝沢出合の左岸上部などがあり、遡行時間を考慮して幕営地を選びたいところです。
3 和名倉山
茫洋とした不遇の山塊・和名倉山。
標高2,036mにして、大菩薩連嶺並みの規模を誇る非常に大きな山ですが、奥秩父主脈から北に大きく外れ、展望もないため長く登山の対象として見られることはありませんでした。
1950年代後期から70年代初頭まで、首都圏の戦後復興のために、木材の大規模な供給源として注目され、和名倉山では徹底的な伐採が行われました。
大規模な皆伐に追い打ちをかけるように山火事まで発生し、和名倉山は壊滅的な打撃を受けた歴史をもちます。
70年代に入ると、外材の輸入により林野行政は行き詰まり、伐採の終焉とともに和名倉山は放置される形で再び静かな山へと回帰します。
その後は60万本のカラマツが植林されるなど人の手が入ることもありましたが、自然の回復力は驚異的で、丸裸になった尾根や谷に樹々が復活。
しかし、鹿の食害から逃れることができず、破壊と再生のなか、和名倉山の未来には予断を許さない状況が続いていくものとされます。
【参考文献】 『奥秩父 山、谷、峠そして人』 山田哲哉さん著(東京新聞)
また参考までにウィキペディアでは、以下のような記述で紹介されています。
四方に谷を刻んだ巨大な山体が特徴的である。かつては奥秩父の秘峰としてその原生林の美しさが讃えられたが、戦前に山林の権利が大滝村(現秩父市の一部)に移ったあと、1950~60年代の森林伐採と山火事で山域の荒廃が進んだ。かつて美林を誇ったコメツガの原生林は、大滝村の皆伐と伐採事業に伴う火災によりほぼその全てが失われており、尾根筋の大半は平凡な唐松の植林とスズタケの密藪に覆われている。辛うじて伐採を免れた県境付近では、石楠花の群落が見られる。
登山について、かつては、登山道がはっきりせず、暗い樹林帯が多い難路で、山中でテント泊する準備が出来、薮こぎに耐える覚悟と体力を持ち、地図と磁石で針路を決められる技術を持つ者以外には危険な“秘峰”とみられていたが、最近は登山道の開発が次第に進んできた。現在では、一般ルートを取る限り、テント泊も必要でなく、とくに難しい山ではない。
一般ルートは、山梨県側からとりつき、将監峠からの往復である。将監小屋から山頂往復でおよそ8~9時間かかる。
埼玉県側からは、秩父湖からの二瀬尾根、川又からのヒルメシ尾根、雲取林道からの仙波尾根ならびに仁田小屋尾根ルートが存在する。しかし、いずれも積極的に一般登山道として整備されていない難路であり、登山経験者以外、安易に踏み込むべきでない。過去に山岳遭難の死亡事故も起こっており、自己責任での行動が求められる。
とはいえ最近は、埼玉県側のルートをとる登山者が増えている。二瀬尾根ルートなどでは踏跡がかなり明確になり、一部で笹薮が刈り払われ赤テープや道標も設けられるようになってきた。仁田小屋ルートの下部、雲取林道の一般車が入れる終点である大洞橋から仁田小屋の頭(1,555m)までは、埼玉県のNPO・百年の森づくりの会によって作業道が整備され、一般登山者でも通行できる状態となっている。しかし山頂までは、笹薮に覆われて踏跡が不明瞭な部分もある。いずれのルートを取るにせよ、ルートファインディングの経験を要し、地形図やGPSなどが必携である。
4 アプローチ
【交通機関利用】
西武観光バス秩父鉄道三峰口駅発三峯神社行に乗車。
入渓下降点まで二瀬ダム下車徒歩50分。或いはバス途中下車可能のようです。
三峯神社線バス時刻表はこちらをご覧ください
【マイカー利用】
秩父湖から、三峯神社方面に向かう県道278号線に入り雲取林道の入口まで。
雲取林道入口に広い駐車スペース。トイレはなく、全くの無人です。
【↑】 広い駐車スペース
5 下降ルート
マイカーで入渓した場合、二瀬尾根を辿るのが一般的。
古いエアリアマップでは破線で記されていますが、最近は多くの方が訪れるようになったのでしょうか、立派な登山道です。
幕営適地でもある造林小屋跡の上部に水場もあるので、山中一泊にて和名倉山を目指すのもよいかもしれません。
また“渓を遡り渓を降る”が信条の方は市ノ沢を下降されます。
市ノ沢はナシ尾根と仁田小屋尾根の間を流れる穏やかな渓。
ゴルジュが続き、多段30m滝などもありますが、ロープなしで下降可能。
上流部に幕営適地もあります。
6 立ち寄り湯の情報
埼玉県側の立ち寄り湯として参考にして頂ければ幸いです。
道の駅 大滝温泉の情報はこちらをご覧ください
山梨県側の立ち寄り湯として参考にして頂ければ幸いです。
花かげの湯・鼓川温泉・笛吹の湯の情報はこちらをご覧ください
最後までご一読いただき、有難うございました。
※ HTMLを使用したレポート掲載については許可を得ております。
フォトギャラリー
・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。