六呂場山(ろくろばやま)~不動岳(南アルプス深南部)

このエントリーをはてなブックマークに追加
投稿者
好日山荘スタッフ
日程
2018年10月24日 (水)~2018年10月25日 (木)
メンバー
天候
晴れ
コースタイム
(一日目)
戸中山林道ゲート-(300分)-1740mピーク-(75分)-六呂場山山頂

(二日目)
六呂場山山頂-(180分)-鹿ノ平-(40分)-不動岳山頂-(35分)-
鹿ノ平-(40分)-鎌崩(かまなぎ)ノ頭-(135分)-不動岳登山口-(100分)-
戸中山林道ゲート
コース状況
戸中山林道ゲート手前に車を停め、ゲートを越えてすぐに東俣沢を渡り、小さな神社を抜けて、六呂場山へ向かう尾根に乗ります。1740mピークまでは所々踏み跡が薄く、正確な道をたどるのは困難ですが、ずっと尾根上を進むので、地図で方向を確認しながら登れば、おおよそ大丈夫です。尾根に乗ってから1740mピークまでの、おおよそ中間くらいにあたる1473mの矢筈山と呼ばれるピーク付近まで急登が続きます。
1740mピークから一旦鞍部に下り、六呂場山まで登り返しますが、これもなかなかの急登です。

六呂場山の山頂は思ったより広く、2~3張ならテントが張れます。

六呂場山から鹿ノ平の区間が、今回で一番の難所だったと言っていいでしょう。
六呂場山山頂(1747m)から下る尾根の分岐点が分かりづらかったです。1700m付近で尾根が分岐しますが、南東方面の尾根に下るべきところを、北へ下る尾根に入り込んでしまい、また登り返して数十分のタイムロスをしました。六呂場山からおおよそ1700m地点まで下ってきたら、地形図で鹿ノ平方面へ向かう尾根の方向を確認した方が良いでしょう。

南アルプス深南部は、笹(クマザサ)が深いことで知られています。鹿ノ平周辺は、その中でも上位に入る笹の深いエリアです。案の定、1799mピーク付近から笹が現れ始め、下って鞍部を過ぎると、背丈を越すくらいの笹エリアになってきました。踏み跡もほとんどなく、密集する笹が体や荷物にまとわりついて行動の自由を奪われ、しかも、これまた登り返しの急登で、笹を踏むと足も滑り、進むのにかなり難儀します。ストックは笹に絡まってあまり役に立たないので、ザックに仕舞い、笹を掴みながらの方が、多少ラクに登れるでしょう。また、笹で目をやられないよう、注意が必要です。

息を切らせながら鹿ノ平に着きますが、ここから不動岳の往復が一番気持ち良く歩けました。重たい荷物を置いて軽身になったから、というのももちろんありますし、一部笹も深かったですが、不動岳への登りは比較的緩やかで笹の背丈も低く、展望も抜群に良かったからです。
不動岳山頂も展望が素晴らしく、深南部の他の山々や南アルプスの百名山、聖岳や光岳も見え、文句なし、今までの疲れを吹き飛ばしてくれるような、そんな達成感を味わわせてくれました。

鹿ノ平から鎌崩ノ頭までも背丈以上の笹群がお待ちかね、踏み跡も薄い中、ヤブ漕ぎが続き、やや難渋するでしょう。笹の中には大きな倒木も隠れており、足を引っかけて転んだり、膝をぶつけたりしないよう、注意が必要です。笹の中で物を落とすと、回収は難しいでしょう。また、方向もしっかりと確認しながら進みたいところです。

鎌崩ノ頭からの下りも、油断は禁物です。元々、所々踏み跡が薄い箇所がある上に、9月末の台風の影響でしょうか、巨木が何本も倒れていて、それらを苦労して乗り越えるたびに、踏み跡や赤テープを見失います。下部は尾根もはっきりしなくなってくるので、現在地が分かっている限り、方向を確認しながら下るべきでしょう。

不動岳登山口の林道に下りたら、あとは2時間弱の林道歩きを楽しめば、車を止めたゲートに帰還できます。
難易度
Google Map
  • スタートナビ
  • おとな女子登山部

感想コメント

南アルプス深南部。

それは、文字通り南アルプスの南側に位置します。もう少し具体的には、百名山である光岳より南の、1500~2000m級の山々が連なる広大な山域を指します。長野県南部の一部も含めますが、大部分は静岡県北部に属し、市町村でいうと、浜松市天竜区北部と榛原郡川根本町北部にまたがるエリア、といった感じでしょうか。有名で高い山が多い南アルプス本体に比べると、山々の知名度も標高も劣りますが、人の手があまり入っていない原始的な森が広がり、静かな山歩きが楽しめます。

ただし、深南部の山々は登山口までのアプローチが長く、標高の割には日帰りで帰れる山はあまりありません。公共交通機関もないため、基本的にはマイカーでのアプローチに限られます。また、車止めのゲートから登山口まで長い林道歩きを強いられますし、営業小屋も一切ないので、食料・飲料・テント・寝具など、衣食住に必要なものは全て自分たちで持っていかねばなりません。

色々な山を歩いてきた玄人好みの山域と言えるでしょうし、昭文社の「山と高原地図」にもこのエリアの情報がほとんど載っていないことを考えても、マニアックなエリアとも言えるかもしれません。そのため、地形図が必携になりますが、踏み跡が薄い部分も多く、地形図をある程度読めるようにしておかないと、目的地への到達は難しいでしょう。

僕も静岡県に住んでいながら、なかなか足が踏み出せないハードルが高いエリアだと捉えてきたので、このエリアにはまだ数えるほどしか足を運んでいません。
久々に行きたいなぁと思っていたところに、深南部制覇に情熱を燃やす他1名と、タイミング的に意気投合したので、今回行ってきました。

すると、やはり一筋縄ではいかず、苦労の連続でした。運動不足の上、久々のテント泊。一般的な登山道ではあまり出てこないような急登に大腿筋や腰が悲鳴を上げ、背丈も超える深い笹の海に行く手を阻まれ、行く先とは違う尾根に下ってしまってまた登り返し、帰りの長い急な下りでは、「もうご勘弁を」と膝が泣き言を言っていました。一泊二日の山行でしたが、久々に強い疲労感にさいなまれ、とても長い山旅のように感じました。
(トレイルランナーでもある相棒は、ここは俺の庭、とでも言わんばかりの終始余裕の表情、見上げたものでした)

ただ、今回は天候には非常に恵まれました。二日間通して好天で、露営した六呂場山頂上付近も風がほとんどなく、寒くもなく快適に一晩過ごせました。日中も気温は高めでした。尾根上や不動岳山頂からは、聖岳や光岳などの百名山、中ノ尾根山や黒沢山や黒法師岳など、その他の深南部の山々など多くの山が見渡せ、普段は見れないような絶景を拝むことができました。月並みですが、今までの苦労が報われたような、そんな達成感に浸る自分がおりました。

また、気持ちの良い笹原が広がる鹿ノ平付近は、まさに非日常の別天地で、これまた充実感と癒しの時間を与えてくれます。

様々な苦労はありましたが、ホントに行ってよかったと思っています。皆さんにも、十分な準備をしてもらった上で、ぜひ行ってみていただきたい。

また、静岡県民として、この貴重な山域の自然が、いつまでも守られることを切に願っています。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

フォトギャラリー

戸中山林道ゲート前に車を停め、出発です。

ゲートを越え、すぐに東俣沢を渡り、小さな神社の脇を抜けて、六呂場山へ続く尾根に乗ります。矢筈山のピーク(1473m)までは急登が続きます。

その後、傾斜は緩やかになります。尾根が広くなり、踏み跡も薄くなるので、方向を確認しながら進みます。この案内板も、次に来た時は見つけられないかも。

1740m付近で尾根が二股に分かれるので、六呂場山へは分岐を右にとります。

一旦鞍部に降り、急登を登り返して辿り着いた六呂場山で幕営です。何とか2張ほど張れます。写真は翌朝の様子。

滅多に来れないマニアックな山頂で記念撮影をして、さあ出発です。

1700m付近での尾根の分岐が分かりづらい。一旦、北へ下る尾根へ入ってしまいました。鹿ノ平へは、南東へ下る尾根が正解です。写真は、その尾根上にて。

深南部らしく、笹が出てきて、だんだんと深くなってきました。このあと、1799mピークに到達し、また鞍部へと降ります。

鞍部から登り返しますが、その区間が一番キツかった。急登と、深くて密集した笹群に難渋します。写真を撮るのも忘れてました。息を切らせて、やっとのことで稜線へ。

鹿ノ平は、まさに山上の楽園。気持ちの良い笹原です。

鹿ノ平から不動岳へと続く稜線。見上げるだけで、心地いい。

この辺りは笹が低く、傾斜も緩やかなので、景色を楽しみながら気持ち良く登れます。

振り返れば、心地よい笹原の稜線と深南部の他の山々、そして心強い某相棒。

ついに今回最大の目的地、不動岳の山頂に到着です。北方面には百名山の聖岳や光岳なども見え、360°絶景が広がります。まさに深山の雰囲気。

快晴の中、もちろん記念撮影です。しつこいようですが、二日間通して天候には本当に恵まれました。

山頂からの景色を堪能したら、下山開始です。左奥に見える三角形の山は、黒法師岳。これも深南部の名山です。

深い笹は、大人とて簡単に隠します。倒木が隠れているので、足元に注意!更にガスに巻かれると、方向感覚を失いやすいでしょう。

丸盆岳から黒法師岳へと続く稜線。中央には、この付近のもう一つの別天地、カモシカ平が見えます。

鎌崩(かまなぎ)ノ頭と丸盆岳の間にある大規模なガレ場、鎌崩を横目に下降していきます。

所々、踏み跡が薄い所がありますが、何とか登山口へ降り立ちました。あとは、2時間弱の林道歩きを堪能すれば、車を停めたゲートへ帰還できます。お疲れ様でした!

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

この記事を見た人は次の記事も見ています

アクセスランキング

同難易度の登山レポート

  • スタートナビ
  • おとな女子登山部