奥秩父の名渓 豆焼沢 ~ 新緑煌めく大滝ナメ滝に魅せられる癒しの渓へ (雁坂嶺東面 滝川支流)

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投稿者
伊藤 岳彦
横浜西口店 店舗詳細をみる
日程
2016年05月12日 (木)~2016年05月13日 (金)
メンバー
単独行
天候
快晴
コースタイム
国道140号「出会いの丘」駐車場(70分)トオの滝(90分)4段50m大滝下(80分)両門の滝(60分)登山道(10分)雁坂小屋(180分)出会いの丘
コース状況
本文をご参照ください
難易度
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  • スタートナビ
  • おとな女子登山部

感想コメント





豆焼沢新緑



この古い中部日本の山をよく知るためには、わたくしはそこの深林のなかのこの世ともつかぬ青苔のなかを逍さまよおう。そこの谿かげのふかい苔をわけて歩こう。

     大島亮吉 1925年





荘厳に巨立する大滝と流麗に白線を刻むナメ床。自然の造形物に畏怖する感覚と癒される感覚。
相反する二つのコントラストが際立つ渓として豆焼沢の右に出るものはないように思えます。
新緑萌える名渓で、心洗われる沢旅を満喫してきました。


総画像数130枚でお送りするレポート。
新緑のなか沢を歩く気分を少しでも味わって頂ければ幸いです。




2016/5/12 快晴

出会いの丘[12:20]…トーガク沢[12:57]…トオの滝[13:34]…豆焼の大滝[15:26]…大滝上[15:49]…幕営地[16:45]


2016/5/13 快晴

幕営地[9:26]…両門の滝[9:49]…奥の二俣[11:06]…登山道[11:25]…雁坂小屋[11:45]…林道終点[14:25]…出会いの丘[14:53]




【↑】 昭和初期に原全教が記した著書「奥秩父」に紀行文とともに載せた「豆焼沢遡行」図




豆焼沢遡行【前半部】の記録~2017年7月~はこちらをご覧下さい



目次


  • Ⅰ 豆焼沢遡行

  • Ⅱ 概要と案内




  • Ⅰ 豆焼沢遡行


    1 入渓点まで

    笛吹川流域から荒川流域へ。雁坂トンネルを越えると山が深まり、眩いばかりの新緑が広がる光景。今年も奥秩父の沢の季節が到来したことを強く実感させられます。



    【↑】 出会いの丘より豆焼橋を望む

    出会いの丘はトイレしかないものの、山々に囲まれた気持ちのよいパーキングエリア。ここには、埼玉県防災航空隊ヘリコプター「あらかわ1」墜落事故殉職者慰霊碑があり、ここを訪れたときは必ず長い黙祷をすることにしています。



    【↑】 慰霊碑で手を合わせました

    昨日まで降り続いた雨も上がり、この日は強い陽射しが照り付け、まるで初夏を思わせる陽気。水量の多さを想像して、期待と不安が入り混じった気持ちになります。
    まずは入渓点となるトオの滝を目指し、地図にはない杣道を辿ります。
    ヘリポート右脇の踏み跡を辿り、すぐに登りとなります。鉄パイプでできた階段があるので、これが目印。見落として、下りすぎないよう注意が必要です。



    【↑】 鉄パイプでできた階段が目印

    この道は今でも演習林従事者の方が利用されるそうなので、意外に良く整備されています。
    道はジグザグに登った後、山腹のトラバースとなり、30分ほどでトーガク沢へ。



    【↑】 踏み跡は明瞭 新緑が美しい道でした

    トーガク沢はかつては魚影豊富な美しい流れだったと言われますが、現在はご覧のようにまるで要塞と化しています。
    ほとんど人が訪れないところに限って、不必要なまでに整備された堰堤などがよくあるものですが、何となく違和感を覚えてしまいます。





    【↑】 現在のトーガク沢はまるで要塞です

    トーガク沢を橋で渡り、少し下ってから、さらに杣道を進みます。
    途中崩落が数ヶ所あり、固定ロープなどが張ってありますが、特に危険箇所はなく、アプローチとしては十分に使えるルートです。
    トーガク沢からさらに30分ほど。沢音が大きくなり、道が下降してくると入渓点はもうすぐです。



    【↑】 沢が段々と近付いてきます



    【↑】 入渓点で装備を換装します




    2 遡行一日目

    今回は前半をショートカットしているので、トオの滝が入渓点。
    程よく汗ばんだ体に、ひんやりとした冷気が気持ちよく伝わってきます。
    トオの滝は2段10mの立派な美瀑。





    【↑】 トオの滝は水量豊富でした

    この日はやはり水量多めで、以前訪れたときよりも迫力があるように思えました。
    水を全身に浴びるのを覚悟で登れそうな滝ですが、いきなりのシャワークライミングはちょっとキツイところ......。
    釣人のために作られたものでしょうか、右岸に明瞭な巻き道があるので、ここは無理せず巻くことにします。



    【↑】 巻き道には固定ロープも張ってあります

    トオの滝を巻いて越えると、実質的な入渓となります。
    初夏のような陽射しに新緑が映え、水が絶え間なく白線を刻み、光の陰影が見事な渓。
    序盤は穏やかな渓相ですが、水温は低くなく、水はとても澄んでいます。
    ただ少し倒木がやや多いのが気になります。















    【↑】 序盤は穏やかな渓相

    トオの滝から30分弱で、“十文字の場”へ。いわゆるミニ十字峡でしょうか。
    右岸と左岸から枝谷が同じ位置で出合い十文字を結ぶために、このように呼ばれます。
    昭和初期の文献には“十字谷”と紹介されているそうです。



    【↑】 十文字の場



    【↑】 左岸の枝沢

    この左岸の枝沢は、関東最大の洞窟である瀧谷洞から湧き出るものと言われます。横着して洞窟を覗きに行きませんでしたが、何か不思議なところから水が流れ出しているのが分かります。



    【↑】 こちらは右岸の枝沢

    十文字の場を後に、そこから5分ほど進むと、2段8m“ツバクラの滝”へ。
    下段の釜にはその昔大岩魚が棲んでいたそうです。



    【↑】 ツバクラの滝

    下段上段ともに右壁を直登できますが、ホールドが小さい箇所もあるので、慎重に突破したいところです。



    【↑】 上段も右を登ります



    【↑】 続く幅広の8m滝

    この滝は簡単に左岸を巻けます。
    溪が左に曲がると、姿の良い斜瀑10m“柾小屋滝”が現れます。



    【↑】 端正な柾小屋滝

    この滝の左岸の狭いスペースにはかつて杣小屋があったそうです。



    【↑】 水が生き物のようです

    しばらく進むと、とても見事な簾状の美瀑12mが現れます。
    さながら大滝前のオードブルといったところでしょうか。





    【↑】 簾状の美瀑12m



    【↑】 巻きは右岸ルンゼを直登します

    ここから大滝まではまた穏やかな渓相となります。



























    【↑】 大滝前まで穏やかな渓相が続きます

    そしていよいよ前半のハイライト、“豆焼の大滝”4段50mに到着です。







    【↑】 豆焼の大滝4段50m

    水量豊富な大滝はまさにド迫力!圧倒的すぎます!
    単純な直瀑とは異なり、遥か上方の狭い落ち口から末広がり4段に水を豪快に落とす姿は、冷静に見れば極めて格調高雅なもの。
    しかし、秘められた大滝を前に独り佇む私が感じたのは只々自然の造形に畏怖する気持ち。
    お前は真剣に山に登っているのかと問われたような気がしました。



    【↑】 大滝に圧倒され、厳しい表情をしています

    エキスパートは大滝登攀に挑みますが、通常は右岸の大高巻きで越えます。



    【↑】 少し戻って右岸ガレ場を登ります



    【↑】 何となく踏み跡があります



    【↑】 途中和名倉山方面を望む



    【↑】 大滝右岸枝尾根の乗越点を目指します



    【↑】 沢への下降はロープ不要 倒木の間をすり抜けます





    【↑】 大滝の落ち口へ



    【↑】 大滝上2段8m滝は左岸巻き

    大滝上の2段8m滝は下段は登れても、上段は登れないので通常左岸を巻きます。
    巻き上がると2張くらいの幕営適地。焚き火の跡もあり、出合から遡行された方はこの辺りに泊まるのかもしれません。



    【↑】 小さな幕営適地で小休止





    【↑】 続く6m滝

    この6m滝の右岸には、ドラム缶やら一升瓶やら茶碗などが散乱しており、かつて人が作業していたことがうかがえます。
    なお右岸から巻こうとして奥まで行ってしまうと、崖になってしまい懸垂下降を強いられますが、小さく巻くと沢床へロープなしで降りられる箇所があるので、見落とさないよう注意して頂ければと思います。
    続く現れる4段20m滝はとても美しい連瀑。



    【↑】 4段20m滝は左岸巻きです

    左壁を登れるようですが、今回は無理せず左岸を巻きました。



    【↑】 高巻きの途中から



    【↑】 連瀑帯最後の滝



    【↑】 水の造形美に魅了されます



    【↑】 倒木のある滝を越えると幕営地です

    連瀑帯を越えると、予定していた幕営適地へ。
    立地的には豆焼沢のなかでは一番の場所のように思えます。
    初日の行程は約5時間でしたが、もういい時間なので遡行を打ち切ります。



    【↑】 この日はここで幕営

    物干しの木が一本あり、幕営スペースは十分広くて平ら。とても素敵な幕営地でした。



    【↑】 幕営地から下流を望む

    薪がある程度散らばっているので、焚き火をすることもできます。







    【↑】 焚き火はそれだけで一つの体験です

    暗闇のなか見つめる榾ほだ火からふと沢に眼を移すと、豊富な水の流れが月夜に白い帯のように照らし出される光景。
    あまりにも日常と違いすぎることに戸惑いながらも、その幻想的な世界がとても印象に残りました。



    3 遡行二日目

    絶え間ない大きな瀬音と、闇を切り裂く奇怪な怪鳥の啼き声をBGMに夜を越えると、翌朝はもう4時には明るくなり出します。
    しかし山でいきなり生活のリズムをスパッと変えられるほどもう若くはないので、いつもの起床時間まで遅寝してしまいました。



    【↑】 翌日も快晴です♪

    私は極端に朝に弱く、最近は山で朝食もほとんど食べられなくなり、ミルクティーにワッフル1個で充分になってしまいました。
    陽もだいぶ高くなり、気温もかなり上昇。十分に乾いた沢ウェアを今日も身にまとい、さらに上流を目指します。







    【↑】 まず現れる8×15m滝は見事です



    【↑】 苔むす穏やかな渓相が続きます



    【↑】 倒木が多くなっていくのが残念です

    そして幕営地から20分ほど。後半のハイライト、両門の滝に到着です。



    【↑】 両門の滝へ

    奥秩父で“両門の滝”といえば、笛吹川水系東沢釜ノ沢にあるものが有名ですが、豆焼沢の両門の滝もそれに劣らずとても見事な造形。
    男性的な左俣2段15mスダレ滝と、女性的な右俣50mスダレ滝が合わさる二俣は大変個性的です。



    【↑】 左俣2段15mスダレ滝









    【↑】 右俣50mスダレ滝



    【↑】 心洗われるスポットです

    本流は右俣。このスダレ状のナメ滝の登りこそ、豆焼沢の核心。“天国の”と形容されるナメ滝歩きで、心癒されない者はいないはずです。



    【↑】 右俣へ 滝の右側を水流通しに登ります





    【↑】 水の美しさに心奪われます





    【↑】 水の絨毯を上から眺めます





    【↑】 さらにナメ床が続きます





    【↑】 顕著な滝を軽快に越えていきます



    【↑】 次の二俣は右へ

    ここまで来ればあとは好きなように詰め上がることができます。
    時間に余裕がなければ、左俣に入ることもできそうです。



    【↑】 水量のある右俣が本流です



    【↑】 苔が見事でした





    【↑】 さらに上流へ 段々とガレていきます

    ここから先は渓が細くなり、小滝の続くミニゴルジュとなります。
    癒しのナメ歩きも素敵ですが、頭をフル回転させながらゴルジュ内の小滝を乗り越えていくのもまた沢登りの楽しさの一つ。
    右で行き詰まり、左でも行き詰まったら、中央の水流通しが簡単だったなんてこともあり、ルートを選ぶ面白さがこんなところに満ちているような気がします。

















    【↑】 ゴルジュ内の小滝を次々に越えていきます

    ゴルジュを越えると、奥の二俣へ。



    【↑】 奥の二俣へ 倒木がひどい有様です

    本谷は右のガレ沢ですが、倒木がひどく、通常は水量のある左の沢を詰めます。



    【↑】 左の沢を詰め上がります

    しかし左の沢も徐々に倒木がひどくなるので、遡行に見切りをつけ、右岸の枝尾根を強引に詰め上がることにします。



    【↑】 鹿の獣道を辿ります

    枝尾根に乗ると、鹿の通り道になっているようで、順調に高度を稼ぐことができます。
    そして藪漕ぎすることもなく、突如目の前に登山道が現れます!
    いつものことですが、「ウオ~道だ!」と大声で叫んでいる自分。
    多くの方が山頂で登頂の達成感に酔いしれるのと同じかそれ以上の感覚で、登山道に興奮している沢ヤはやはり変わった人種なのかもしれません。



    【↑】 ウオ~道だ!




    4 下山

    帰路はまず雁坂小屋へ向かいます。



    【↑】 雁坂小屋まではすぐです



    【↑】 雁坂小屋



    【↑】 小屋前にベンチと水場



    【↑】 入口扉に掲げられています



    【↑】 突出つんだし尾根を望む

    雁坂小屋からは原生林が美しい黒岩尾根を辿ります。













    【↑】 新緑眩い黒岩尾根を下ります



    【↑】 途中ベンチのある“あせみ峠”

    看板によると『あせみとはこの辺にたくさん生えている馬酔木あせびのこと』だそうです。



    【↑】 林道終点に着きました



    【↑】 最後は林道歩き ゴールはもうすぐです



    【↑】 豆焼橋を渡ります

    最後に橋の上から、万感の想いを込めて豆焼沢を仰ぎ見ます。
    今回も心に残る素晴らしい沢旅ができたように思えます。



    【↑】 豆焼沢を仰ぎ見る




    5 遡行を終えて

    豆焼沢はやはり奥秩父を代表する名渓です。
    シンボリックな大滝と、両門の滝から続く癒しのナメ滝がフォーカスされがちですが、渓として冗長なところがなく、上流部のゴルジュでも滝を登る楽しさを堪能することができ、見所が実にバランスよく配置されているところは大きな魅力です。
    紅葉に彩られた遡行もまた素晴らしいものだとは思いますが、豆焼沢には新緑萌える遡行がふさわしいように思えます。
    快晴の青空のもと、新緑と豊富な水が与えてくれる躍動感と爽快感は何物にも代えがたく、私の心を澄み渡ったものにしてくれます。
    新緑と青空のもと、白い絨毯のようなナメ滝の中段で、ただ清流だけに囲まれた時間の美しさはいつまでも心に残るものとなりました。
    こうした沢登りならではの感動が生きる糧となり、心を豊かにしてくれるのだと信じたいもの。
    今年も自分自身が深まるような遡行が一つでも多くできるように、心から遡りたい渓に真摯に向き合っていきたいと思います。




    Ⅱ 概要と案内


    1 荒川水系滝川

    秩父盆地から関東平野を辿り、東京湾に注ぐ大河川・荒川。
    その水源は奥秩父北面に源を発する大血川、中津川、大洞川、滝川、入川、これら5つの谷に分かれます。なかでも最も水量が豊富で、迫力ある奔流と奥深い渓相で遡行者を魅了してやまない一大渓谷が「滝川」。
    和名倉山から雁峠、雁坂峠を経て突出つんだし尾根で囲まれた広大な面積の水を集めて北走する長大な渓で、日本登山体系では“入川とともに荒川を育くむ母なる源流域である”と紹介されています。
    滝川は多くの支流ーーー美渓として名高い「豆焼沢」や、静寂に満ちた「金山沢」と「槙ノ沢八百谷」、下降に適した「曲沢」、雁峠へ詰める「ブドウ沢」などーーーを擁し、本流の最後は、「面蔵滝」など連瀑の続く「水晶谷」と、美しいナメがどこまでも続く「古礼沢」に分かれます。



    【↑】 古礼沢のナメ床

    1998年雁坂トンネルの開通により、明らかに水量が減るなど、自然の原始性においては、荒川本流とされる「入川」に一歩譲るところはありますが、美しくも険しいゴルジュや閉塞的な暗さのなかに広がる大釜、そして原始の香りが色濃く残る苔むした渓相が醸し出す“渓としての奥深さ”は荒川水系随一。同じ奥秩父山塊でも、笛吹川水系や多摩川水系の明るい渓にはないあまりにもディープな世界がそこにはあります。



    【↑】 滝川本流



    2 豆焼沢

    奥秩父北面を代表する険谿「豆焼沢」。
    高低差1500mを約4kmで駆け降る急峻な沢で、日本三大峠の一つ雁坂峠を見下ろす雁坂嶺(2,289m)を源とし、東進して滝川本流に注ぐ秀逸の美渓として知られます。
    1998年雁坂トンネル開通によって最も甚大な影響を受けた沢であり、「ホチの滝」真上に雁坂大橋が架かるなど、トーガク沢出合より下流はまさに「死の谷」へと変貌を遂げてしまいましたが、上流部の連瀑の美しさは今以て健在。
    見所は、ホチの滝・トオの滝・4段50m大滝といった美瀑の堂々たる容姿と、両門の滝から続くスダレ状のナメ滝群の目を見張る美しさです。
    自然の造形に畏怖する感覚と、癒される感覚がそれぞれ強烈に心に刻まれる、荒川水系屈指の名渓と言っても過言ではないでしょう。
    かわいらしい名前に反して、その名の由来は物哀しいもの。
    その昔、二人の旅人が冬にこの沢に迷い込み、最後の糧である豆を焼いて食べた方だけが猟師に助けられたという逸話からくるそうです。
    通常日帰り強行軍の方が多いようですが、釣師を避けた遅い入渓で、深い森に抱かれながら焚き火を見つめる夜を堪能するのも一興。
    薪集めには難儀しそうですが、大滝上にはビバーク適地がいくつかみられます。
    数々の美瀑とナメ滝の饗宴に酔いしれた後は、詰めらしい詰めもなく、雁坂小屋の取水場で遡行終了。
    帰路は黒岩尾根道を利用した快適な下山で出会いの丘へと戻ることができます。


    3 アプローチ

    【交通機関利用】

    川又より出会いの丘まで長い国道歩きとなるので、一般的ではありません。

    【マイカー利用】

    アプローチは雁坂トンネルが開通した現在、国道140号線「豆焼橋」に隣接する「出会いの丘」パーキングエリアが通常起点となります。
    「出会いの丘」パーキングエリアはトイレのみで、売店及び自販機もありません。数日の長時間駐車は可能ですが、計画書などの掲示が望ましいと思われます。

    出会いの丘パーキングエリアの情報はこちらをご覧ください~ウィキペディア



    【↑】 橋を渡って左に行くと出会いの丘

    また勝沼方面から行く場合、道の駅は便利な施設。
    道の駅みとみ道の駅まきおかの二つがあります。

    道の駅みとみの情報はこちらをご覧ください

    道の駅花かげの郷まきおかの情報はこちらをご覧ください


    埼玉県側にも道の駅があります。

    道の駅大滝温泉の情報はこちらをご覧ください


    【入渓点まで】

    完全遡行を目指すならば、豆焼沢出合から入渓することになります。
    滝川本流入渓と同じく、天狗岩トンネルの先から踏み跡を辿って急下降するのが一般的ですが、黒岩尾根末端の古道を辿るルートもあり、こちらの方が風情があるかもしれません。
    なかには出会いの丘よりワサビ沢を急下降する強者もおられるようです。
    しかし、雁坂大橋に気分を害されてしまう方や、時間に余裕がない方は、トオの滝まで続く立派な杣道を利用し下流部をショートカットすることも可能です。
    今でも演習林従事者の方が利用される道なので意外に良く整備されています。
    トーガク沢より先はごく一部荒廃がみられますが、危険箇所はなく、アプローチとしては十分に使えるルートです。
    ここは体力と時間、モチベーションに合わせて無理なく入渓したいところです。


    4 雁坂小屋

    豆焼沢遡行において、雁坂小屋は有難い存在。
    沢中泊に不安のある方は、山小屋泊により装備の軽量をはかることもできます。
    小屋前に水が引いてあり、大変助かります。



    【↑】 雁坂小屋

    雁坂小屋の情報はこちらをご覧ください

    雁坂小屋のテント場は、とても開放的な素敵な空間。
    奥秩父の深い山々を見渡すことのできる静かなスポットで、夜爛漫に輝く星を眺めるのもまた一興です。



    【↑】 テント場



    5 下降ルート

    帰路は快適な黒岩尾根道を辿ります。
    この道は長らく廃道だったものですが、国道140号豆焼橋の出現によって2000年に復活再建されたルート。
    本来は滝川の豆焼沢出合に至るものでしたが、現在は林道も開発され、豆焼橋へと安全に導いてくれます。
    途中黒岩付近より望む水晶谷の巨大排気口が目に付きますが、実はこのルートは手つかずの美しい原生林が広がる素晴らしい登山道です。
    非常に歩きやすく、展望はないものの清々しい森林浴を堪能できるので、ランナー系の方や、ハイキングから少しステップアップを考えている方にもオススメです。
    車が利用できれば、初めてのテント泊で雁坂小屋を目指すのもよいでしょう。


    6 立ち寄り湯の情報

    山梨県側の立ち寄り湯として参考にして頂ければ幸いです。

    花かげの湯・鼓川温泉・笛吹の湯の情報はこちらをご覧ください

    ほったらかし温泉の情報はこちらをご覧ください


    埼玉県側の立ち寄り湯として参考にして頂ければ幸いです。

    道の駅 大滝温泉の情報はこちらをご覧ください



    7 豆焼沢の鍾乳洞

    奥多摩に鍾乳洞があることをご存知の方は多いと思います。
    日原鍾乳洞・日原三又洞・倉沢鍾乳洞・小袖鍾乳洞・青岩鍾乳洞・大岳鍾乳洞など。
    しかし奥秩父に鍾乳洞があることを知っている方はそれほど多くはないのではないでしょうか。
    瀧谷洞---豆焼沢左岸の標高1,400m付近の国有林内、通称「燕岩」と呼ばれている石灰岩峰の基部に、それは存在します。
    平成元年10月15日、「パイオニア・ケイビング・クラブ」の方々が発見。
    その後の探検により、関東地方でも最大級の規模であり、把握された範囲だけでも長さが約2,700mで、福島県あぶくま洞(2,600m)、山口県秋芳洞(2,480m)に匹敵する日本有数の長さを誇ることが分かりました。
    内部は、高低差が160mもあり、入り組んだ複雑な形態をなしており、天井が高いなど洞内空間が広いのが特徴だそうです。
    但し現在、この鍾乳洞の入口は塞いであり一般の方が入ることはできません。

    雁坂小屋公式ブログ内でも紹介されています



    8 豆焼沢名前の由来

    最後に豆焼沢の名前の由来を紹介させて頂きます。

    大田巌氏著 『奥秩父の伝説と史話』より



    滝川谷に豆焼沢という沢がある。
    昔、ある年の冬であった。
    何か曰くありそうな二人の旅人が、雁坂峠から腰まで埋もれる雪を掻き分けて武州側へ下って来た。そしていつしか道に迷ってこの沢へ入ってしまった。
    やっと狩人の小屋を探しあて、そこで焚火を起し、猛烈な寒風をしのぐことは出来たが、食料が何もなく、全く疲労困憊してしまった。
    それでも、ないよりはましだと二つの豆粒を拾って、仲良く二人で食べようとしたが、旅人の一人は、そんなものは何の役にも立たないだろうとして手を出さなかった。 他の一人は丹念にそれを焼いて食べた。
    やがて麓の狩人がやってきて、二人の旅人を見つけたが、一人はもう息が絶えており、他の一人は虫の息であった。
    様子を知った狩人は、一人を背負って岩穴へかついで行き、種々手当をして、元気を回復させた。
    この救助された旅人の方が、豆粒を二つ食べた方であったという。
    それから、この沢を豆焼沢と呼ぶようになった。





    最後までご一読いただき、有難うございました。

    ※ HTMLを使用したレポート掲載については許可を得ております。




    フォトギャラリー

    豆焼沢は奥秩父の名渓です

    トオの滝より入渓しました

    ツバクラの滝

    幅広の8m滝

    姿の良い斜瀑10m“柾小屋滝”

    スダレ状12m滝

    豆焼の大滝1

    豆焼の大滝2

    豆焼の大滝3

    大滝上の2段8m滝

    6m滝は右岸巻き

    4段20m滝は左岸巻き

    連瀑帯最後の滝

    8×15m滝

    両門の滝

    左俣は2段15mスダレ状

    右俣はスダレ状50m滝

    上流のスダレ滝

    苔が美しい

    水の造形に目を奪われます

    ・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
    ・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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