晩秋・谷川馬蹄形縦走
- 投稿者
-
るんちゃん(おとな女子登山部)
浦和パルコ店
- 日程
- 2020年10月20日 (火)~2020年10月21日 (水)
- メンバー
- 単独
- 天候
- 1日目/晴 2日目/ガス時々晴
- コースタイム
- 【1日目】土合橋(20分)西黒尾根登山口(110分)ラクダの背(70分)肩の小屋(15分)オキの耳(60分)一ノ倉岳(20分)茂倉岳(90分)武能岳(40分)蓬ヒュッテ
【2日目】蓬ヒュッテ(60分)七ッ小屋山(40分)清水峠(120分)朝日岳(60分)笠ヶ岳(50分)白毛門(100分)土合橋
- コース状況
- 【山小屋情報】
・登山指導センターのトイレは渇水の為使用できませんでした。ベースプラザは営業しています。
・肩ノ小屋の外トイレは100円、売店営業中。宿泊は予約必須だそうです。
・蓬ヒュッテ幕営500円、テント場はあくまで緊急避難用とのこと。水場は蓬新道を15分下ったところにあります。トイレは小屋内のバイオトイレを利用、20時~6時までは使用禁止。営業は10月末まで。受付は小屋正面の小窓でアルコール消毒の上、記帳するシステムです。ボールペン持ってるか聞かれたので衛生上持参するのがベターです。
・清水峠の白崩避難小屋は10人程度泊まれそうな大きさでした。一ノ倉と笠ヶ岳の避難小屋は2、3人のスペースしかありません。
【登山道情報】
・西黒尾根の岩場は晴れていても岩角がつるっとして滑りやすかったです。ロープウェイが使えないので混み合っていました。11月以降はロープウェイ開通するようです。
・谷川岳~一ノ倉まで鎖場何ヵ所かあり。ぬかるんで滑りやすいです。
・ジャンクションピーク付近、東側のガレ場が切れ落ちています。強風時通過注意。
・白毛門頂上直下は鎖場多いですが、階段状で西黒尾根のように岩がつるつるしていませんでした。登山者多いので落石注意。
- 難易度
感想コメント
谷川馬蹄形とは谷川連峰を馬の蹄の形に縦走するルートで、近年は日帰りで周回する猛者ランナーで賑わっています。最近雨続きの私にも漸く晴天が巡ってきたので、蓬ヒュッテの管理人さんがいるうちに1泊2日で出かけてきました。
日帰りは私の体力では厳しいので今回は泊まりの計画で。それでもロープウェイなしのテン泊装備は決して楽ではないので、少しでも軽くするため食事はアルファ米で簡素に、水は上で確保できるので2Lのみ。寒くて寝れないなんてことがないように、3シーズンシュラフ+シュラフカバー、ダウンジャケット+ダウンパンツで寝具だけは万全に。降雨予報が出ていなかったので、アウターシェルは薄手のノースフェイスベンチャージャケットに、ミレーのティフォン50000パンツで。積雪が心配だったので、念の為チェーンスパイクも持参しましたが使う場面はありませんでした。お酒が飲めない体質なので、嗜好品の必要ない私は中型ザックで十分、いつもの45Lで挑みました。
上越国境に近づくにつれ、空は夕方のようにどんよりとして水上に着くと雨がパラパラと舞い始めました。それでも土合橋駐車場にはたくさんの車。白毛門へ行く人々を見送りながら、私は車道を歩いて西黒尾根登山口へ。朝のうちは熊が心配でしたが、予想より人がいたので鈴はしまい森林限界まで黙々と歩きました。早いこと谷川の稜線が見たかったので、休憩せずにラクダのコルまで登り切ると、登山道を彩る大勢の人の列。ロープウェイが動いていないせいもあるのか、西黒尾根は今まで見たことのない賑わいで、体力温存のため私も列に並んでゆっくり慎重に上を目指しました。
頂上へ行く前に肩の小屋で休憩していると、みるみるうちに雲が湧き上がってきて真っ白に。谷川岳では晴れ間に滅多に遭遇できないので、いつもの展開ながら少々残念な気分。オキの耳までは多くの人で賑わいを見せていましたが、その先へ行く人は僅かで、ぬかるんで滑りやすい岩場の道をとぼとぼと寂しく歩きました。
一ノ倉の急登をこなし、茂倉の緩い登りを乗り越えると今度は笹の斜面をしばらく急降下していきます。笹で滑るわ、ザレ場の先は切れ落ちているわ、なかなか厄介な道でした。この間何度か軽快なトレランの方とすれ違いましたが、走っている方も多国籍でやはり人気のルートだということが窺えました。
次の武能岳との間にある笹平付近で漸く明るい日差しが戻ってきたので、最後の登りに備え大休止。翌日通過予定の朝日、笠、白毛門の稜線を見ながら、誰もいないテラスでしばらく足を投げ出していました。
この日最後のピーク・武能岳を登っている間、苗場や飯士山、巻機の割引岳など懐かしい越後の山々が顔を覗かせていました。どうやらこの日、店のスタッフが湯沢のバリエーションルート・足拍子岳に登っていたようで、その特徴のある岩峰も私のいる場所からよく見えました。谷川岳の東には赤城山や子持山など上州を代表する山々や、一際白い栃木の男体山も姿を見せていました。
頂上の標識を過ぎると特徴のある槍のような鋭峰・大源太山と縦走路の七ッ小屋に抱かれるように蓬ヒュッテが静かに佇んでいました。小屋に到着して受付に出かけると、頭にタオルを巻いたちょっと怖そうな管理人さんが顔を出しました。谷川周辺はほぼ幕営禁止で、蓬ヒュッテのテント場は緊急避難用として貸出しているだけ、「それを知ってて敢えてテントかい?」なんて言われたらどうしよう。恐る恐る「すみません、テント1張お願いしたいのですが...」目がつり上がったような気がしたのですが特にお小言はなく、幕営地、水場、トイレの利用について淡々と説明があっただけで、無事に設営する事ができました。
テントを無事に張って水も確保して、やっと安堵の時間。風に揺れる草原のさらさらという音をBGMに、黄昏時の優しい風景を眺めているとついうとうと。小屋には3人泊まっていたようで、話し声やコッヘルの音が聞こえて目を覚ますと、辺りはすっかり闇に包まれていました。私も食事を摂って再び横になりましたがやはり眠れず。それでも寒さは感じなかったので、深夜過ぎにはぐっすり眠りに落ちていました。
翌朝テントから顔を出すとガスで真っ白、幸い雨はなく風も穏やかだったので、日の出の時間と共に歩き出しました。トイレに寄り小屋の前で身支度していると、管理人さんが出てきて「お気をつけて」と短く一言。その言葉だけで勇気をもらえた気がして、それはもう涙が出そうなほど嬉しかったです。
気を引き締めて6時過ぎに出発、ガスが取れて太陽が見えたかと思うとすぐにまた雲に覆われ、なかなか視界が安定しません。風も強くなり、時折体が持っていかれそうになりながらまずは七ッ小屋を目指しました。大源太から七ッ小屋は過去に登っていますが、季節も違えば時間帯も違うので全く見覚えがありません。蓬峠との鞍部には小さな池塘や木道があり、ちょうど風の切れ目で穏やかな光景が広がっていました。朝靄の中から山頂がぼうっと見え隠れする様はまるで天国に向かっているよう。ブロッケンも出現して、一時のマジックアワーを体験しました。
幸せな時間は長くは続かず、山頂に着いた途端風が吹き荒れ再び視界ゼロ。清水峠を経由してジャンクションピーク取付きの池ノ窪辺りまでは、しばらくガスの中を歩くこととなりました。新潟との県境だからなのか、気障な名前を付けられたこのピーク、下から見ると異様に大きく、これから登ると思うと尻込みしてしまいそうなほど遠く感じました。ここさえ乗り越えればあとは高度を下げるのみ、登り切れば楽になるはずと言い聞かせ、大きく深呼吸。ゆっくりと歩みを進めると、少しずつ県境の尾根がせり上がってきました。あの尾根は巻機山、越後三山まで続いている、そう思うと感無量でした。残雪期に機会があれば歩いてみたいです。
尾根は時々東側に逸れて滑りやすいガレ場を通過しなければなりません。若干嫌らしい感じがしたので上りにして良かったです。そうこうしているうちにピークを過ぎ、朝日岳の山頂に着きました。朝日岳周辺は湿原が広がる谷川の小尾瀬のような場所。ガスに覆われていたのが非常に勿体なかったです。
湿原に別れを告げると今度はギザギザ尾根のアップダウン、ここでも強い風が吹き付け体が煽られます。ガスの中から三角の笠ヶ岳が見えると同時に人影もちらほら見えてきました。日帰りで笠まで行く人も多いので、人がいるのはいよいよゴールが近づいてきた証。雲の中に白毛門を確認すると、名残惜しい気持ちがこみ上げてきたのでもう先を急ぐのは止めました。
風を凌ぐため笠ヶ岳避難小屋脇で大休止。ドラム缶を大きくしたような簡素過ぎる避難小屋は、わずかな太陽の光をもすべて吸収するようで中はかなりポカポカ。絶対に寝落ちしそうな雰囲気だったので敢えて外で休憩することにしました。
笠を急下降すると先ほどより多くの人。大きなカメラを持って、美しい紅葉を写真におさめているようでした。白毛門まで来て振り返ると朝日、笠の大きな稜線、ぐるっと西に目を向けると昨日通った武能岳、右下の草原の中にはちょこんとした蓬ヒュッテが確認できました。管理人さん、小屋締めの準備でもしてるのかな。白毛門からは谷川の迫力ある岩壁が皆の目を惹き付けて止まないのですが、私は恐らくただ一人、目を凝らさないと見えないちっぽけな山小屋に熱い視線を送っていたのでした。
錦秋の白毛門、名物のジジ岩、ババ岩は上から見下ろすと紅葉の座布団の上に座っているように見えます。 そんな岩峰たちに別れを告げると、いよいよラストスパート。達成感に満ち満ちていた私は紅葉のトンネルをいつの間にか駆け下っていました。私の足まだまだいける?なんて調子に乗った途端に尻もち。それでも登山口にはだいぶ明るいうちに下りてくることができました。
今回、念願だった馬蹄形を歩ききって久しぶりの充足感を味わえました。下山後は疲れてバテー系になるかと思ってましたが案外元気で、無事に家まで帰り着くこともできました。
近くて良い山、谷川連峰。標高はそれほどでもないのに、アルプスにはない厳しさと雄大さは本当に魅力が満載です。次はまだ足を踏み入れていない万太郎や、朝日岳周辺をじっくり歩いてみたいです。
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