八方からぐるっと五竜岳

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投稿者
るんちゃん(おとな女子登山部)
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日程
2022年04月05日 (火)~2022年04月06日 (水)
メンバー
山仲間4名
天候
晴れ
コースタイム
【1日目】八方池山荘(180分)唐松岳頂上山荘(300分)五竜山荘
【2日目】五竜山荘(140分)五竜岳(60分)五竜山荘(100分)大遠見山(100分)アルプス平
コース状況
【八方尾根】
危険箇所なし。ゴンドラ8時~15時半まで。八方池山荘でトイレ借りました。
【牛首~五竜山荘】
・牛首付近は鎖出てます。その先黒部側をトラバースする箇所で鎖が半分埋ってたのでロープ出しました。トラバース後は2mほどの雪壁を越えます。登りきった地点でスノーバーでT字アンカーを作りました。
・ハイマツ帯が出てくると踏抜き多発、ワカンで乗り切りました。ツリーホール、長野側の雪庇に注意。
【五竜岳】
・降雪後で5cmほど表層が雪崩れた箇所がありました。
・急なトラバースを何度か越えます。アイゼン、ピッケル刺されば通過できます。
【遠見尾根】
下りのリフトは乗車不可。ゴンドラのみで下ります。踏抜きたまにあります。
難易度
Google Map
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感想コメント

 残雪期に人気の五竜岳。今回は八方池からスタートし、剱を見ながら縦走する欲張りコースを歩いてきました。天気は2日間とも穏やかでしたが、風がなく冬山のつもりで固めた装備はが暑すぎて辛いこと辛いこと。もう季節は春、レイヤリングと水の量を完全に間違えてしまい、体力消耗の激しい山行となりました。 

 スタートは3人で八方池から。なだらかな八方尾根ですが、体が標高に慣れていないせいかペースが上がりません。この日の装備は18kg。食担を引受けたのでいつもよりちょっぴり重め。ダウンや手袋を中厚手にして重量を削ったつもりでしたが息切れ激しく、日帰り装備で軽々登るメンバーを恨めしく思いました。

 唐松山頂は既にお腹いっぱいだったのでまたの機会にして、頂上山荘で登攀準備にかかります。山頂を踏んで八方へ戻る仲間を見送り、ここからは2人で縦走路へ踏み出しました。核心は牛首の先、それまで出ていた鎖は完全に埋まっていたのでロープを準備。スノーバーを使いたいギアマニアの相方くんに当然リードは任せました。斜面をトラバースし僅かに出ていた鎖に中間をとって、核心の雪壁へ。雪壁は2~3m、蹴り込んでラッセルするように詰めていきます。乗り込んで安定した所でスノーバーの登場。雪が柔らかめだったのでT字に掘って横埋めし、強固な支点をテキパキと作ってもらいました。
 私も雪壁を登り安定した場所までリード交替。ふいにバタバタと大きな音がして、雪崩か何かとびっくりしながら音の先に目をやると、白いモフモフがこちらを見ていました。そこにいたのは冬毛のライチョウさん。いなくなる前に安全な所まで上がって、急いで引き上げないと。この時ばかりは相方くんの安全<ライチョウだったことは内緒です。こちらの気持ちを察してか、ロープを解除してもしばらくその場でじっとしてくれていました。別れが惜しかったのですが、時間が無いので先を急ぎました。
 ロープを出す箇所はこれ以降ありませんでしたが、脆い岩場通過や雪の踏み抜き、えげつない急登や急降下があったりと、ある意味飽きのこない道が続きます。アイゼン→ワカン→アイゼンと履き替えも繰り返し、予想以上に時間を食ってしまいました。

 日が傾きかけ2人とも内心焦りの色。五竜山荘で待っている先輩は、我々の顔見て開口一番何と言うだろうか。「お疲れ様」とか「遅ぇよ~」なんて言ってもらえるかな。当てっこしながら気持ちだけは前向きに持っていきました。
 最後は白岳東面のトラバース。気を抜くと滑落しかねない斜度なので、足下だけは集中して。ここを越えたら五竜山荘、と頭の中で念仏のように唱え、黙々と登り詰めるとこちらへ向かってくる人影が。目が合った瞬間、奇声のような歓声を上げ駆け寄ってきたのは、心配して様子を見に来た先輩でした。固く握手を交わして感動の再会。山の上で落ち合うのも良いものです。眼下の小屋前には既に3張のテントと、きれいに整地された更地が。優しい先輩が私たちのために場所を作ってくれていたのでした。どうせなら水も作って欲しかったと軽口を叩きながら、日没前にギリギリ寝床を完成させました。

 翌朝は5時半過ぎに出発。風が強いのでゴーグルを装着し、念のため登攀道具も装備しました。五竜岳登頂は今回の一番の核心。落ちたらまず止まらなそうな急傾斜を、アックスとアイゼンの前爪だけで確保しなければなりません。手足も気持ちもガクブルでしたが深く考えないようにして、ただ前に進むことだけ考えました。
 風が強くなり視界が白けることもしばしば。そんな折、突然足下の雪面が崩れ、僅かに体が後退しました。崩れたのは表面わずか5cmほど。雪崩れた箇所を避け上から回り込もうとするとまた崩壊。踏み出す度にまた崩れるのではと思うと足がすくみ、登るのを躊躇してしまいました。それを見かねて先頭は交代、へっぴり腰の私を二人がかりで導いてもらいました。アックスと前爪を雪にしっかり刺して、なんとかフリーで登頂。足元が緩やかになり山頂標識が見えると、ようやく人心地がつきました。
 初めての雪の五竜はとても静か。これまでの怖さが吹き飛ぶほど、穏やかで荘厳な景色が広がっていました。剱はもちろん隣の鹿島槍、遠くは槍ヶ岳まで。昨日歩いてきた唐松からの稜線が、朝日を浴びて輝き出すのを見届けたら緊張の下山へ。穏やかな気持ちから一転、再び顔が強張るのを感じました。空が明るくなり風も落ち着いたせいか、登りよりも怖さはあまり感じませんでしたが、へっぴり腰は相変わらず。強がらずに後ろ向きにクライムダウンしながら、無事に山荘まで戻ってきました。

 テントを撤収したら後半戦、長い長い遠見尾根の下りが始まります。白岳から最後に縦走路を見納めしたら、照り返しの辛いアップダウンへ突入。西遠見山から大遠見山間はテント場好適地が多く、立派なイグルー跡が至るところにありました。中を覗いてみるとちゃんと土間があって、職人が作ったようなしっかりしたものばかり。イグルー体験もぜひしてみたいです。
 それにしても2日間とも山頂以外はかなりの暑さでした。日焼け止めが適当だったため、下山後はお肌ぼろぼろ猛反省。今後はしっかりヤケーヌを装備に加え、日焼け対策怠らないよう誓いました。

フォトギャラリー

五竜菱が良く見えます。遠見尾根から。

八方尾根は人気のルート。たくさんのハイカーがいました。

唐松頂上山荘から五竜を目指します。

縦走スタート!

鎖が出てるから安心と思いきや...。

ここでロープセット。雪は安定してました。

終了点がダケカンバくらいしかないのでスノーバーで作ってもらいました。

雷鳥がこちらを見ている。仲間に入りたそうだ。

雪がズボズボでわかんに履き換え。

剱を見ながら歩きます。

この日は4張。五竜山荘は半分埋まってます。

夕食は春を感じる献立、空豆と筍のご飯。味付けは炒めたベーコンとほりにしで。

翌朝、いざ五竜へ。この先で足下が雪崩れてびびる。

ここのトラバースは緊張しました。

へっぴり腰でなんとか登頂。昨日歩いた道を俯瞰。

下りは特に慎重に。時々クライムダウン。

登りで雪崩れた場所。雪は落ち切ったので登りの時より怖さは感じませんでした。

遠見尾根下り。イグルーの住居跡がたくさん。

鹿島槍のカクネ里。雪崩の筋が出来てました。

暑い!長い!遠見尾根。

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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