裏丹沢の秀渓 伊勢沢遡行 ~ 神秘の50m大滝を抱く流量豊富な渓へ (原小屋平西面 神ノ川最大支流)

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投稿者
伊藤 岳彦
横浜西口店 店舗詳細をみる
日程
2015年06月22日 (月)~
メンバー
単独行
天候
コースタイム
日蔭沢橋(30分)伊勢沢出合(120分)大滝下(60分)二俣(80分)原小屋平(180分)日蔭沢橋
コース状況
■ 神ノ川林道は孫右衛門隧道手前新設ゲートまで進入可。
■ ゲート手前路肩に駐車スペース。8台程。
■ 林道から伊勢沢出合まで明瞭な踏み跡。
■ F1、F2、F3、大滝高巻き いずれも残置ロープ有。
■ 倒木がとても多いのは残念です。
■ 上流部に伏流あり。
■ 詰めは水線を忠実に辿ると原小屋平水場へ。
■ ヒルいませんでした。
■ 立ち寄り湯 いやしの湯 ¥700 火休
■ 7/5 北丹沢12時間山岳耐久レース
難易度
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感想コメント



伊勢沢再訪【2017年6月】の記録はこちらをご覧下さい



※大滝の登攀レポートではありませんので、ご容赦ください。高巻き中心の沢歩きです。

広大な丹沢山塊の北部、道志川流域は「裏丹沢」と言われ(「北丹沢」とも)、交通の便が悪いため、訪れる人も少なく、とても静かな登山を楽しむことができます。
なかでも蛭ヶ岳から檜洞丸にかけての稜線の北側を水源とする神ノ川(かんのがわ)は道志川の最大支流で、意外にも立派な渓谷の様相を見せてくれる隠れたスポットです。
西丹沢玄倉川ユーシン渓谷には一歩及ばないかもしれませんが、僻遠の趣さえ感じられる山深さで、誰もいない世界で新緑や紅葉を静かに楽しみたい方には意外にオススメかもしれません。
ただ神ノ川林道を日蔭沢橋ゲートから1時間ほど歩いたところ、その名の通り開けた「広河原」は、要塞化した堰堤だらけの景観になってしまっているのが残念です。

その神ノ川流域の最大支流が、裏丹沢を代表する秀渓として名高い「伊勢沢」。
東海自然歩道の最高点である姫次から原小屋平の西面の水を集め、西進して神ノ川に注ぐ、水量豊かな渓で、大滝以外にもいくつかの美瀑をもち、変化のある渓相を楽しむことができます。
ハイライトは、その懐に人知れず君臨する、落差50mの「伊勢の大滝」。
「早戸大滝」「遺言棚」「西沢本棚」いわゆる丹沢三滝ほどのネームバリューはないものの、知る人ぞ知る見事な直瀑で、一見の価値あり。丹沢の奥深さの一端を知ることもできるでしょう。
大滝のほかにも特徴のある個性的な滝が4つほどあり、やや距離があるものの、急登のツメやヤブ漕ぎは一切なしで東海自然歩道に詰め上げることができるのも嬉しいところです。

梅雨真っ盛りの天気のはっきりしない6月の平日、2年ぶりに裏丹沢を訪れました。
以前は公衆トイレのある日蔭沢橋先のゲートまでしか進入できませんでしたが、現在は孫右衛門トンエル手前の新設ゲートまで入れるようになっていました。
まずは入渓点まで30分ほど神ノ川林道を辿ります。
小洞トンネル先の曲橋を過ぎた辺り、道が右にカーブするところから踏み跡のある小尾根を伝って神ノ川へ。
降り立ったところが伊勢沢出合。ここから入渓します。連日の雨で幾分増水しているように思えます。

入渓して5分ほどで、F1=2段4×5mへ。
とても豊富な水量のなか、上段では水流左のトラロープに体を預け、ゴボウで登ります。
左岸には作業路のような立派な踏み跡もあるので、巻くのも容易でしょう。
その先はしばらく倒木がとても多く、少し時間がかかります。
いくつか小さな釜を越えていくと、滝らしい容姿をみせるF2=2段15m。
冒険すれば左壁を直登できそうですが、ここも右岸の残置ロープの力を借りて、あっさりと越えていきます。
へつりを1回まじえながら、おだやかな渓相をゆっくりと進んでいくと、やがて三ノ沢と四ノ沢の出合へ。
三ノ沢には落差40mと言われる大滝と、立派な前衛6m滝があるので、寄り道してみるのもよいでしょう。
標高800mを越えたところで、沢は大きく右に曲がり、トイ状のゴルジュへ。
ナメ床も連続し、積極的に水流のなかをグングンと登っていきます。
穏やかな渓相を越え、しばらく進むと大滝への関門と言われるF3=2段15m滝へ。
右壁にとても古い鎖があり、下部は崩落していますが、トラロープが巻きつけてあります。
平水ならば素直に水際を半身水浴びで右壁の残置ロープまで攀じ登る方がよいでしょう。
F3を越えるといよいよクライマックスの大滝50mへ。
通常は右側の流れだけですが、増水しているときには左側の窪にも流れができ、八の字大滝になるそうです。
それにしても見事な美しい直瀑。人知れず奥深い山地に孤高に屹立する大滝ほど神秘的なものはありません。
飛沫が力強く飛び散りマイナスイオンも全開!何か底知れないパワーが漲ってくるような気がしました。
大滝の大高巻きは、少しだけ戻った左岸のガレ沢をまず登ります。
何となく踏み跡があり、左急斜面に続く踏み跡を見逃さないように辿ると、またもや補助ロープ。
かなり傾斜がきついので、思わずロープに手を伸ばしてしまいます。
木の根と灌木を頼りにグングン登ると、今度は左へトラバース。登りすぎないように注意しましょう。
沢への下降は灌木頼りのモンキークライムダウンで大滝の落ち口へ。踏み跡も比較的明瞭です。
大滝の落ち口に立つと壮大な景観がまなかいに広がります。まるで空から新緑の森を見下ろすような感覚。
高い頂きから麓を眺めるのと異なり、広大な森のなかからさらに森を俯瞰する時間はとても新鮮でした。
大滝から先も幾つか小滝が続きますが、もうそれほど大きな滝はありません。
F6、F7を淡々と越えると渓相は段々と穏やかになっていき、やがて新緑まぶしい二俣へ。
二俣からもまだ距離がありますが、疲れが溜まった体に鞭打って傾斜のある棚をグングンと登ります。
途中伏流がありますが、すぐに流れが復活するので最後までフェルトを使用した方がよいでしょう。
最上流部は枝沢も多いですが、何となく人の通った跡のある本流は分ります。ここは忠実に水線を辿ります。
静かな森のなか稜線が見えてくると原小屋平の水場はすぐそこです。

伊勢沢は水量豊富で変化に富んだとても素晴らしい渓でした。
結局残置ロープを掴みまくりの沢歩きになってしまったことは少し反省しなければなりませんが、状況に応じた最適な判断を連続して行えたことは収穫です。
幾分距離もあるので初めての沢歩きには向きませんが、少し沢慣れた方がステップアップとして遡行するのに最適なルートであるような気がします。
次は増水したときを狙って、滅多にお目にかかれない二条の大滝をこの眼で見てみたいと思いました。

水場からは立派な踏み跡を辿って、ジグザグ登りで原小屋平へ。
原小屋平は森の中の小さな草原(くさはら)といった感じで、とても落ち着いた空間。
寝不足でクタクタのせいもあり、その場でそのまますぐに横になってしまいました。
泊まりの沢でタープ&ゴロ寝&焚き火はよくしますが、草のうえで眠ったのは久しぶりのこと。
やさしい草の匂いをかぐと、なんだか童心に返ったような気になりました。
小1時間眠ったあと、素直に姫次、風巻ノ頭経由おとなしく登山道で日蔭沢橋へ戻ります。
余力のある方は、スリルある尾根歩きが楽しめる地蔵尾根下降で広河原へ降りるのも一興。
バリエーション好きなら絵瀬尾根を下降して伊勢沢出合へ降りるのもよいでしょう。
帰路東海自然歩道上では数人のランナーの方にすれ違いました。
近々行われる北丹沢12時間山岳耐久レースに参加される方が練習されていたのでしょう。
沢歩きとトレランでは全くジャンルが違いますが、自分に挑戦する楽しさはきっと同じもの。
自分との闘いを楽しむことができれば、山はきっと大きな達成感を与えてくれるのかもしれません。

フォトギャラリー

伊勢沢は大滝50mを抱く秀渓です

伊勢沢出合 鹿の鳴き声が響き渡っていました

入渓してすぐに現れるF1

今日は水量多めでしょうか

小さな釜を多くもつ水量豊富な渓です

F2=2段15m滝の上段 右岸巻きに残置ロープあります

登れる小滝が続きます

水温もそれほど低くなく、快適な遡行が楽しめます

四ノ沢出合で沢は右に折れ、長いトイ状の滝が現れます

中流部の穏やかな渓相

大滝への関門 F3=2段15m 

水量が多いと巻かざるを得ません

張り巡らされた残置ロープ 下部にはとても古い大きな鎖もあります

圧倒的な迫力がある大滝50m とても見事な直瀑です

大滝前の広場にて とても神秘的な空間でした

大高巻き後、大滝の落ち口へ すごい高度感でした 

五ノ沢出合 五ノ沢(左)を詰めて袖平山へ詰め上がることもできそうです

さらに上流へ 

二俣から右俣へ入ります

稜線が見えてくると原小屋平の水場は近くです

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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