絶景 双六岳新雪 ~ 静寂の北アルプスを辿る
- 投稿者
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伊藤 岳彦
横浜西口店
- 日程
- 2016年11月17日 (木)~2016年11月18日 (金)
- メンバー
- 単独行
- 天候
- 曇後晴
- コースタイム
- 新穂高温泉(310分)鏡平(130分)双六小屋(100分)鏡平(225分)新穂高温泉
- コース状況
- 本文をご参照ください
- 難易度
感想コメント
双六岳新雪
厳しい冬を間近に控えた11月の北アルプス。
静謐極まる双六岳で久しぶりの雪山登山を楽しんできました。
雪化粧を施し始めた槍穂高を終始望みながら歩く珠玉のトレッキング。
北アルプス新雪の世界の美しさを感じて頂ければ幸いです。
ふたたびの風景
長く山を登っていると、四季を変えて何度か訪れたことのある場所でも、何年も経つとまた登ってみたくなるような山というものがあるものです。
常に新しい山旅沢旅の記憶が刺激を伴って経験に上書きされていくうちに、劇的な感動をもって対峙したはずの記憶もいつしか風化してしまっているからなのでしょうか。
しかしそれだからこそ、再び訪れた久恋の頂きからまた新たな感動が得られるのかもしれません。
私にとって、双六方面の山域というのは、何度登ってもその素晴らしさを再確認させられる、心の故郷のような世界。
槍穂高を常に遠くに望みながら、北アルプスの中心部に向かってなだらかな山稜を歩く珠玉のルート。
同じように槍穂高を眺めるなら常念山脈も素晴らしいものですが、山頂から世俗の街並みを俯瞰することもない山深さを抱く点において、双六方面の山域は抜きん出たものがあります。
近年は4月5月頃の残雪期しか来ることがなくなっていましたが、厳しい冬の訪れを待つ11月半ばに訪れたことは今までなかったので、晩秋新雪ならではの風景を眼にして、また新しい感動を得てみたくなりました。
粉雪舞う稜線へ
秋枯れの左俣林道を辿り、終点から小池新道へ。
小池新道は石畳状によく整備された、大変歩きやすいルートです。
この日は朝からぐずついた天気で、残念ながら槍穂高を望むことができません。
秩父沢を渡った頃から、一段と暗雲が立ち込めてきました。
シシウドガ原を越え、淡々と歩を進めていくとほどなく鏡平へ。
凍てついた鏡池の前に立って一息ついたところで、とうとう雪が降り出しました。
鏡平で見る久しぶりの降雪は幻想的な風景。
レインウェアに現れては消える雪の結晶の美しさにしばし見惚れてしまいました。
↑ 冬の訪れを待つ鏡平山荘
鏡平より先の登山道はすでに雪に覆われ、所々凍った箇所もあるので、早々にアイゼンを装着し、稜線まで軽快に登っていきます。
↑ 稜線を目指します
稜線に出ても相変わらず展望はありませんが、粉雪が舞う白一色の世界、そして全く音のしない世界は久しぶりで、とても新鮮な気持ちになりました。
↑ とても静かな稜線
途中、一羽の真っ白い雷鳥に遭遇。何とか写真に収めることができました。
↑ 雷鳥は逞しいです
雪がよく締まっているので、アイゼンの効きがよく、思っていたより早く双六小屋へ。
↑ 双六小屋が見えてきました
↑ 深閑とした双六小屋
冬期小屋もありますが、今回はトレーニングを兼ねているので、双六池畔にある正規のキャンプ指定地にて幕営することにします。
↑ 凍てつく双六池
きれいな新雪が既に豊富に積もっており、水作りには困りません。
新宿の¥100ショップで、ナルゲンボトル広口1Lの飲み口にピッタリ合う茶漉しを買ってきたのが役立ちました。
双六岳で星を見る
テントの中でうとうとしてしまい、気が付くともうすぐ16時。
ふと外が明るいので覗いてみると青空が広がり、天気が急速に回復に向かっています。
↑ 晴れてきました
こういう時は一気にテンションが上がるもの。折角なので、双六岳まで登ってみることにします。
双六岳の山頂で満天の星を見たらきれいだろうな、と柄にもなく思ってしまいました。
急いで紅茶を作り、グローブなど防寒対策を完全にしたらすぐに出発。
中道分岐までは登山道を辿りますが、そこから先はどこでも歩けるほど積雪があります。
↑ グングン登っていきます
双六稜線までは雪質を見極めながら、最短距離で高度を上げていきます。
ふと振り返ると、ついに槍が姿を見せ始め、鷲羽水晶も迫力ある雄姿を見せつけてくれます。
↑ ようやく槍が見えました
↑ 鷲羽岳(右)と水晶岳(左)
↑ 丸山(左)と三俣蓮華岳(右)
双六稜線に出ると冷たい風が吹き付け、時々雪煙が舞い上がります。
しかしこの広大な稜線を歩きながら見渡す北アルプスの大観はやはり何度見ても素晴らしいもの。
登山の感動の原点はきっとこういうところにあるのだろうと思ってしまいます。
↑ 双六稜線から槍を望む
↑ 笠ヶ岳方面を望む
そろそろ黄昏時。青・白・赤・黒のグラデーションが際立つ瞬間。
荒野のような双六稜線を、ハイマツを傷つけないように歩き、双六岳山頂を目指します。
↑ 双六岳山頂を目指します
もうすぐ日の入りというところで山頂に到着。一番星も輝いています。
↑ 双六岳山頂に到着です
そういえば、雲海を見るのも久しぶりです。
↑ たそがれてみました
↑ 雲海が美しい
日没後、無数の星々が頭上に輝き出します。
大自然のプラネタリウムは息を呑む美しさ。
寒さによるバッテリー切れで写真が撮れなかったのは残念ですが、記憶に残る夜空となりました。
【PHOTO GALLERY ①】
大喰岳から日が昇る
夜通し明るいテントの中。
3日前にスーパームーン状態となっていた月が、西鎌尾根から出現してからはヘッドライトさえ不要となってしまいました。
一晩中輝く月の明るさのせいか、あまり深く眠れず、気が付くと朝の5時。
温度計を持ってないので、気温が分かりませんが、ナルゲンボトルの凍り具合からみるとおそらく-3℃といったところ。思っていたほど寒い夜ではありませんでした。
私は極端に朝に弱いので、早起きがとても苦手なのですが、今回は久しぶりに稜線で日の出を見ようと思い立ち、紅茶を作りテントを撤収したら、すぐに出発。
煌々と月の照る雪道をヘッドライトなしで進んでいきます。
↑ 双六小屋に別れを告げます
↑ 笠へ連なる山並みを見ながら南へ
歩くにつれて段々と明るくなっていき、暁の空のもと、東の空では槍穂高が燃え上がり、西の空の彼方には白山を望むことができます。
↑ 槍ヶ岳を望む
↑ 穂高連峰を望む
日の出は大喰岳の肩の辺りから。春山の時期は西鎌尾根から昇っていたように思います。
↑ 朝日が見えました
この日は快晴で、気温も上がりそう。
新雪期ならではの気持ちの良い稜線歩きを楽しみながら、往路を戻ります。
↑ 快晴に恵まれました
【PHOTO GALLERY ②】
鏡池に立ってみる
朝の冷涼な空気を吸いながら、弓折分岐から鏡平まで一気に下っていきます。
↑ 鏡平へ下ります
鏡平は槍穂高を絶妙に見上げることができるとても素晴らしいロケーション。
鏡池に映る槍穂高はあまりにも有名です。
↑ 鏡平山荘に戻ってきました
↑ 橋がありません
小屋の営業は10月半ばまでですが、11月末までは日帰りで来られる方も少なからずおられるようです。
鏡平に戻って、やってみたかったこと。
鏡池に立てるのはこの時期だけかもしれないので、池の上から違った風景を見てみたいと思いました。
池の氷はまだ完全ではなさそうですが、空身で乗る分には大丈夫そう。
折角なので、池の上で自撮りしようと真ん中までツカツカ進んでゆくと……ミシミシ!ピキピキピキ!突然氷にヒビが入ってしまいました。ヤベッ!
慌ててすっ飛んで引き返したので、ノープロブレムでしたが、自撮りするには一週間は早かったようです。
↑ 一応氷の上から撮影してみました
ちょっと残念でしたが、清々しい快晴の鏡平を堪能できたので大満足。
その後はアイゼンを外し、新穂高までのんびりと下っていきました。
【PHOTO GALLERY ③】
最後までご一読いただき、有難うございました。
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・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。