秋雨の雲ノ平

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投稿者
るんちゃん(おとな女子登山部)
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日程
2020年09月16日 (水)~2020年09月18日 (金)
メンバー
友人1名
天候
1日目/晴 2日目/雨  3日目/雨
コースタイム
【1日目】折立(180分)太郎平(90分)薬師沢小屋(120分)雲ノ平木道末端(60分)雲ノ平山荘(20分)テント場
【2日目】雲ノ平テント場(60分)祖父岳(90分)黒部源流碑(40分)三俣山荘(50分)三俣蓮華岳(70分)黒部五郎小舎(120分)黒部五郎岳(120分)赤木岳(40分)北ノ俣岳(80分)太郎平小屋
【3日目】太郎平小屋(120分)折立
コース状況
・有峰林道開通時間6時~20時まで、通行料1900円。折立は熊出没のため現在テント張れません。駐車場満車の際は第2駐車場解放。自販機あり。
・カベッケヶ原付近で16日に熊の出没情報あり。我々の先行者数人が目撃したとのことです。
・薬師沢へ向かう際、橋を3本渡ります。手すりのない細い鉄桁の上を渡るので、降雨時はスリップしそうな気がしました。
・薬師沢から雲ノ平へはゴーロ帯の急登です。苔むしており降雨時の下りはかなり危険だと思われます。

【山小屋情報】雲ノ平山荘、三俣山荘、黒部五郎小舎、太郎平小屋、いずれも土日祝はテント泊でも予約必須です。(平日はテント予約不要、小屋泊は要予約)雲ノ平キャンプ場は小屋から約20分の距離、トイレ棟、水場あり。1人1500円。山荘の売店で飲み物など買えます。三俣山荘は休憩で喫茶室利用できますが、黒部五郎小舎は中に入ることはできませんでした。外トイレは100円で利用できます。今回はかなり激しい風雨だったので、太郎平小屋に急遽素泊させてもらいました。素泊料金6000円、布団にはシュラフやカバーを敷くよう指示がありました。いずれの小屋でも受付や買い物の際はマスク着用のこと。
難易度
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感想コメント

 『黒部の山賊』を読んでからずっと憧れ続けていた雲ノ平。こんな時期ですが運良くお休みを取れたので、思い切って出かけることにしました。当初はテントでのんびり3泊4日予定でしたが、天気が予想以上に悪くなってしまい、2泊3日のタイトなスケジュールに変更して膝が笑うほど歩いてきました。

【1日目】
 天気が崩れる前にできるだけ雲ノ平まで移動しておきたかったので、有峰林道開通の朝6時前にゲートでスタンバイ。予定通り7時には歩き出しました。
 朝の空気はひんやりしていましたが、久しぶりに泊まり装備を担いだせいか数分で背中はびっしょり、ザックを下ろせば忽ち汗冷え状態。休憩時間は僅かにして登り続けると、予定より早く太郎平に着けました。天気が持てば薬師峠でテントを張る予定でしたが、薬師登頂はまたの機会にして先へ進むことにしました。
 おにぎりを補給して、いよいよ黒部源流エリアに足を踏み入れます。最初の橋まではかなり急降下、その後は薬師沢まで黒部川の流れを聞きながら川と平行して歩きます。危なっかしい橋を渡りホッと一息ついていると、すれ違った男性が緊張した面持ちで一言、「薬師沢小屋の手前で今熊が出たらしいよ!」「何ですと!」言われてみれば何だか獣臭いし、道端につやつやのおっきな糞があるし...。カベッケヶ原で河童を探そうと思っていたのですがそんな余裕はなくなり、熊と遭遇しないよう、笛を吹きながらできるだけ賑やかに速やかに薬師沢まで駆け抜けました。

 薬師沢小屋は吊り橋の手前、清流を望むこぢんまりとした小屋です。高天ヶ原への中継地でもあり、沢の中にあるためお水が美味しいとか。機会があればぜひ立ち寄ってみたいです。
 薬師沢出合からはゴロゴロ岩の急登が待っています。苗場山や平ヶ岳などの高層湿原も、いつだって急登が立ちはだかり簡単には辿り着けません。ましてや今回は雲ノ平、日本最後の秘境と言われるだけあり、体力をこれでもかと削りにかかってきます。ストックはしまい、苔で覆われた滑りやすい大岩をしがみつくように登ること約2時間、傾斜が緩み遂に木道が現れました。

 なだらかな台地に緩やかに描かれた木道、似たような景色は何度か見たことがありますが、その広大さは未だかつて目にしたことのないもの。そしてアルプスの名峰がこんなにも近いとは。水晶、薬師、五郎、少し遠くに笠、間からちらと覗くギザギザの北鎌尾根。ここまで歩いてきた者にしか見ることのできない絶景が、静かに佇んでいました。
 赤い屋根の雲ノ平山荘は、木の香りが漂う粋な作りの山小屋。小屋の方も親切で、次回はのんびり小屋泊まりも良いなと思いました。
 テント場は小屋が見えなくなる窪地にあり、黒部五郎岳の対岸に位置しています。赤木岳あたりから見え隠れしていた日が沈むと、じわじわと寒くなってきたので早々と床に就いて翌日に備えました。

【2日目】
 テントから顔を出すと辺りは真っ白。幸い雨は降っていなかったので、急いで朝食を済ませ、露に濡れたびしょびしょのテントを撤収、この日の最初の目的地・祖父岳を目指しました。
 登りの途中で早速雨に打たれ、景色が全く見えない中、苦行のような山行が始まります。晴れていれば鷲羽経由も考えていたのですが、上へ行けば風が強まるので分岐から源流碑を通り、三俣山荘へ向かうことにしました。沢の轟音だけが寂しく響く中、川のようになった登山道をしばらく下ります。源流碑を境にダケカンバの静かな森を抜け、沢のツメのような景色が広がるといつの間にか三俣山荘へ到着しました。

 雨は小康状態だったので、黒部五郎小舎までさらに進むことにしました。三俣蓮華まで登ると他の登山者は皆双六へ、人の気配のない寂しい道を五郎小舎までとぼとぼと下ります。時折晴れて正面の黒部五郎岳が見えるのですが、行くのを躊躇ってしまいそうな巨大な山体がぐいぐいと圧倒してきます。麓に広がるのは穏やかな湿原、その端っこに建つ赤い屋根の黒部五郎小舎が見えてきました。
 御手洗いを借りてベンチで小休止。さて、ここで泊まるか先へ進むか、小屋の方に訪ねると明日はさらに天候が悪化とのこと。悩んだ末、雨が酷くなる前に難所を切り抜け、下山口により近い太郎平まで戻ることにしました。

 まずは難関・黒部五郎岳。歩けば歩くほど遠ざかるような感覚、天気のせいか疲れのせいか一向に高度が上がりません。下ばかり見て歩いていたので、ふと辺りを見渡すといつの間にか圏谷内にいることに気付きました。夏には競うように咲いたであろう高山植物が、雨に濡れながら今は葉だけを残し一部は黄色く色付き始めていました。植生が乏しくなってくると肩まできついガレ場の登り、傾斜が緩むと山頂まではあと僅か。空身で登った山頂は一層白く、寂しさに拍車がかかっていました。
 
 黒部五郎を後にして、太郎平まではだらだら長い道のりが始まります。晴れていれば絶景のもと、昨日辿った道を俯瞰しながら気持ちよく歩けるはずなのに。
 雨足は進むにごとに強まり、空が徐々に暗くなってきました。できるだけ早く到着しないと。焦る気持ちに反して足が上がりません。荷物の重さにうんざりして、僅かな登りにもしんどさを感じてしまいます。そんな私を励ましてくれたのはアルプスのアイドル、雷鳥。無垢な瞳に見つめられて、ちょっぴり元気をもらえました。

 太郎平小屋に到着した頃にはかなり激しい雨風が吹き荒れ、とてもテントを張れる状態ではありませんでした。やむを得ず小屋の方に相談してみたところ、快く素泊まりを受け入れてくれました。昨今の厳しい状況下の中でも、温かく迎えてくれたことに大変感謝です。
 それにしても久しぶりの小屋泊まり。余裕があれば談話室を覗いたりお土産を眺めたりしたかったのですが、疲労で食べる気も起きずそのまま就寝。小屋を叩く風雨の音が不安でしたが、いつの間にか心地良いBGMに変わり、安心して眠りに就くことができました。

【3日目】
朝方まで暴れていた空は、出発の8時過ぎには落ち着きを取り戻していました。下るなら今、相変わらず展望の効かない白い世界へ踏み出しました。
 こんな日に登ってくる登山者はあまりいないだろうと思っていたら、次から次へとすれ違い、一際大きな見覚えのあるザックがふと目に留まりました。よく見るとなんと店のバイトさん!これから赤木沢に行くとか。山で知り合いに会うのはなかなかの奇跡だと思います。15kgは軽く越えてそうな重荷を背負い、元気良く登っていく彼女にエールを送った後、無事に登山口まで戻ってきました。
 
 コロナ明け初のテント泊はかなりタフな山行でしたが、人生2度目のオコジョや山友との奇跡の出会いか重なり、思い出深いものとなりました。黒部五郎や薬師は天気の良い日にぜひともリベンジしたいと思います。

フォトギャラリー

色付き始めた雲ノ平。

太郎平までもう少し。薬師は今回お預け。

薬師沢へ向かいます。

カベッケヶ原付近。河童はいないけど熊がいたみたい。

薬師沢小屋。川が透き通っています。

薬師沢出合から延々と続く急登。

雲ノ平に出た!水晶が眼前に。

黒部五郎も良く見えます。大きな山です。

雲ノ平山荘に着きました。小屋は良い雰囲気。泊まってみたいです。

テント場は祖父岳に見守られています。

黒部五郎に妖しいレンズ雲が。

テント場がアーベントロートに染まります。オコジョも遊びに来ました。

翌朝。残念な感じ。

祖父岳からは何も見えません。

見ておきたかった黒部源流碑。

五郎小舎がガスの切れ間から現れました。

山頂は肩から往復25分。

五郎から太郎へ向かいます。先はかなり長いです。

北ノ俣岳付近で出会いました。元気出た!

太郎平小屋に素泊まりさせてもらいました。

・実際に行かれる際は、現地の最新情報をご確認ください。
・ご自身の技術や体力に合った無理のない登山計画で山を楽しみましょう。

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